ナレッジマネジメントのメリット
では、ナレッジマネジメントを行うことで得られるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。導入企業からよく利かれる、得られた効果の中から4つご紹介します。
短い時間で人材育成できる
パフォーマンスの高い社員のコツ・ノウハウが共有されるため、短時間で高い成果を出せる社員を育成できます。
また、従来であれば入社時やOJTで終わっていた社員研修が、ナレッジマネジメントツールを導入することで、独り立ち後も自ら学び、知識やノウハウを習得できるでしょう。
素早く情報収集できる
ナレッジマネジメントを導入し、使える知識・ノウハウが蓄積されると、社員が必要な情報にすばやくアクセスできるようになり、生産性が向上します。
また、ナレッジマネジメントツールには、質問・回答を社員同士で行えるFAQ機能などもあるので、まだマニュアル化されていないノウハウも共有できるでしょう。
成功パターンを再現できる
終身雇用前提の会社では、営業職や技術職などの仕事は、先輩の仕事を見よう見まねで覚えていく企業風土がありました。
しかし、現在では、時間をかけて社員を育成するより、知識やコツを共有することで成功パターンを共有し、社員スキルの底上げを行う方が効果が高いと考えられています。
組織の連帯を強める
企業の規模が大きいほど、縦型組織となり、部門間でのリアルタイムの情報共有がされなくなります。ナレッジマネジメントを行うことで、顧客の声をともとに、営業部門や開発部門が連携し、新サービスを開発したり、サービス改善をしたりするのにもつながります。
企業間の連携により、企業競争力が強まる可能性も期待できるでしょう。
ナレッジマネジメントで失敗しないためには
ナレッジマネジメントの目的は、ナレッジを全社で共有することなので、エクセルや既存の社内システムで運用することもできます。しかし近年は、アクセシビリティーやメンテナンスなどの面から、ナレッジマネジメントツールを導入するのが一般的です。とはいえ最適な導入方法は各社で異なるので、導入する場合は、目的や課題を整理しながら自社にあった方法を探しましょう。
また、ナレッジマネジメントはやみくもに導入しても上手くいきません。せっかく導入しても上手く運用できなければ、せっかくかけたコストも無駄になってしまいます。そこでここからは、ナレッジマネジメントで失敗しないために知っておきたい導入時の注意点をご紹介します。
マニュアルに頼りすぎない
ナレッジマネジメントでは、社内のノウハウをマニュアルなどにまとめて展開しますが、過度のマニュアル化は社員が考えて行動しなくなる可能性があります。仕事の仕方を工夫して改善する習慣が身につかず、自主性や仕事に対するやる気を喪失されるリスクもあるでしょう。
マニュアルを使うことで、社員スキルの底上げをするとともに、自分で考える力のある社員教育を平行することをおすすめします。
ツールは操作性を確認する
システム導入に関わるのは、IT部門などのITリテラシーの高い社員のため、社員のITレベルを把握せずに導入を進めてしまうと、操作性が悪く使ってもらえないということが発生します。
コストをかけて新たにナレッジマネジメントツールを導入しても、実際に使用する社員にとって使いづらいものだと社内に浸透しにくいでしょう。全社展開まえに、数名の社員で導入テストをして、操作性に問題がないか確認することをおすすめします。
効果測定を行う
ナレッジマネジメントツールを導入した企業の多くが直面するのが、売り上げ・利益につながったかどうかの効果が見えないことです。効果が見えないと、そのシステムに今度どの程度コストを投じるかの判断がしづらいでしょう。
定期的にアンケートを実施し、社内知識を定点観測するなど、全社レベルと部門間の格差を把握することで、重点を絞った業務改革に取り組み、利益向上に結びつけようとしています。
簡単に共有できるようにする
ナレッジマネジメントでは、特にパフォーマンスの高い社員の仕事のコツ・ノウハウを集めて共有する必要があります。しかし、優秀な社員ほど忙しく、共有することにメリットを感じないため、積極的に共有しない傾向にあります。
移動時間でも入力できるよう、タブレットを活用するなど、簡単にノウハウを共有できる仕組み作りも必要でしょう。
利用を促す仕組みを作る
会社組織に過剰な成果主義が広がっている場合、どんなに共有しやすいシステムを作ったとしても、知識やノウハウを共有したがらない社員もいるでしょう。
人事評価制度の仕組みに、ナレッジ共有を評価する項目を追加するなど、ナレッジを促すソフト面での仕組み作りも検討しましょう。
ナレッジマネジメントを導入してみよう
ナレッジマネジメントは、人材の流動性・多様性が高くなった日本の企業にとって、重要性がより高まると考えられます。
ナレッジマネジメント導入に際しては、自社のどのような問題を解決したいのか経営課題を明確にし、現場を巻き込みながら推進することがポイントです。また、導入にあたっては、ツールの導入だけでなく、人事評価システムの見直しや業務プロセスの見直しも含め、全社的に取り組むことも検討してみてはいかがでしょうか。
ナレッジマネジメントを活用したSECIモデルとは
こうしたナレッジマネジメントの考え方をより体系化したモデルに、日本の経営学者が提唱した「SECI(セキ)モデル」があります。
SECIモデルとは、暗黙知を形式知に変換するためのフローを具体的に落とし込んだもの。詳細は以下の記事をご覧ください。