古い「ジムニー」をEV(電気自動車)化した上で、「ゼロ・エミッション走行による南極点到達」を夢みる男たちがいる。そもそも、なぜ彼らはクロカン四駆をEV化して、南極を目指すのだろうか? ZEVEX代表の鈴木一史氏と、彼らが作った急速充電対応のクロカン四駆EV「SJ2001号」を直撃した。

  • ジムニーとZEVEX代表の鈴木氏

    急速充電対応仕様にバージョンアップしたスズキ「ジムニー」のEV「SJ2001号」とZEVEX代表の鈴木氏

見た目は古くても中身は最新のEV

日産自動車「リーフ」や三菱自動車工業「i-MiEV」の登場により、今や珍しい存在ではなくなったEV。旧車のエンジンを電動モーターに載せ替えるコンバートEVは、依然マニアックな世界ではあるものの、専門店の登場や高性能パーツの低価格化により、以前に比べてだいぶハードルが下がってきた。

しかし、そんな挑戦を今から20年以上も前に、本格四駆のジムニーを素材として始めたチームがある。しかも、目標は「自作EVでのゼロエミッション走行による南極点への到達」というからスケールが大きい。その団体が、鈴木一史氏が総責任者・代表を務めるNGO「ZEVEX」(ゼベックス)だ。

  • 鈴木氏

    「四駆の存在意義は、道なき場所へと冒険に出かけられること」と鈴木氏は語る

EVコンバート用の部品も資料も日本にはまだない時代に、海外から書籍などを取り寄せて「電動化のノウハウ」を猛勉強。チーム発足から3年後の2000年には、チームメンバーが所有していた「ジムニーSJ30」をベースとし、国内初のクロカン四駆EV「SJ2001」を作り上げた

  • ジムニーのEV

    1980年代に生産された2代目「ジムニー」の「SJ30」をベースとしながら、EV化以外にもさまざまなオフロードカスタムを施したSJ2001号。前だけでなく後にもウインチを搭載し、単独での極悪路走行に対応している

「もともと載っていた2ストエンジンを降ろし、電動モーターに換装する作業、荷台に駆動用バッテリーを積載し、それらを制御する装置の設定。そして、構造変更や車検の通過といった合法化の手続きなど、何から何まで手探りでの作業でした。活動にかかるほとんどの費用は当初からメンバーの持ち出しで、お金関係の状況は今も変わっていませんね」

そう語る鈴木氏だが、地道に活動を続けるうち、手作りEVはいつの間にか5台に増台。シンプルな構造の直流モーター搭載車だけでなく、回生ブレーキが使えて、さらに人力での充電も可能なマシンも製作した。最初に作ったSJ2001号の改良も着々と進み、つい先日、街の急速充電器(CHAdeMO規格)で充電できる仕様へとアップデートが完了。CHAdeMOとはEV用急速充電方法における規格のことで、リチウムイオン電池に負担がかからないように設計された直流急速充電方式を採用したものだ。100Vまたは200Vで行われる普通充電に比べ、充電に要する時間が圧倒的に短くて済む。

  • EVジムニーを充電

    EVジムニーに新設した急速充電器用のソケットに充電ガンを差し込む。普通充電用のソケットは車体反対側にある