1週目にドラマ化されたくっきー!は、元芸人の樅野氏にとって吉本の1年先輩だが、「25年くらい知ってますが、あんな顔するんだって思いました(笑)」と初めて見せる表情が続出。「素を見せない人じゃないですか。でも“親の恋”っていうのは、隠せない顔を出すんですよね。やっぱりこの人も人間なんだって思いました(笑)」
藪木氏は「親御さんがお亡くなりになっているということを番組から触れていき、その思い出話を本人がど真ん中で語るというのも、バラエティでは珍しいと思います」と語るが、収録では今回も、当事者の子供が涙を見せる場面が何度もあった。
樅野氏は「ドラマを見たタレントさんが『私は両親みたいな夫婦になるのが夢なんです』って言ってくれて、これはもう堪らなかったですね」としみじみ。藪木氏は「子供の頃の嫌だった思い出が、良い思い出になったと言ってくれた人もいたんですよ。ちょっとしたトゲが抜けたみたいで、そういうのもうれしいですね」と話す。
また、藪木氏は「富田望生さんはお母さんにインタビューでもらった言葉を紡いでタイトルにしたんです。その言葉は、お父さんの言葉でもあって、それを母と娘で共有してるのがいいなと思いました」と明かし、樅野氏も「ドラマのタイトルが出た瞬間に、もう富田さんはすごく感情が出ていた気がしました。僕らには分からない家族の思いがあるんだなと思って、それもグッときましたね」と振り返った。
■完成したドラマはDVDにしてプレゼント
それだけに、他の番組と比べて制作側の責任感も大きい。
「すごくデリケートなお話なので、いつも会議で藪木さんが取材に行く人たちに『絶対失礼のないように。“出てくださってありがとうございます”なんだから』というのをしつこく言ってくださって、僕も『本当にそこだけは頼むぞ!』という気持ちです」(樅野氏)
ドラマ化するにあたって、「多少の脚色もしますが、それもご本人たちに悪く捉えられたくないんです。やっぱり悪い気をさせたくないし、何だったらこれからの記憶に良い思い出としてすり替わるくらいのものにするのを目指しています。だから、脚本の打ち合わせでは、『これは言っていいのか、ダメなのか』というのを常に議論していて、普通のドラマとは違うセオリーで作ってるんです」(藪木氏)という。
また、本人たちの証言を元にすると、ドラマではあり得ないストーリー展開もあるそうで、それがむしろリアル感を強めることに。「ドキュメントだから面白いんですよね」(樅野氏)
完成したドラマは、子供のタレントと親にDVDにしてプレゼントしている。
「これだけ協力して腹を割ってエピソードを話してもらって、自分の良い思い出に昇華されているものを踏みにじっちゃいけないと思うんです。焼畑農業のように『良い作物が穫れたらもうここの土地は捨てます』なんてことをやってたら次につながらないので、でき上がったドラマはパッケージにして、お借りしていた手紙などと一緒にお渡ししています」(藪木氏)といい、両親の反響も「本当に喜んでくれていると聞いています」(同氏)と、制作側の願いどおり満足してもらっているそうだ。
●樅野太紀
1974年生まれ、岡山県出身。95年からお笑いコンビ・チャイルドマシーンとして活躍するも04年に解散し、放送作家に転向。現在は『しくじり先生 俺みたいになるな!!』『あいつ今何してる?』『ミュージックステーション』『関ジャム 完全燃SHOW』『かまいガチ』(テレビ朝日)、『有田Pおもてなす』『わらたまドッカ~ン』(NHK)、『有吉の壁』(日本テレビ)、『プレバト!!』(MBS)、『アウト×デラックス』『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ)などを担当。『しくじり先生』で第41回放送文化基金賞・構成作家賞、『両親ラブストーリー~オヤコイ』で第45回放送文化基金賞・企画賞を受賞。
●藪木健太郎
1971年生まれ、三重県出身。早稲田大学卒業後、95年にフジテレビジョン入社。照明部から02年にバラエティ制作に異動して『アヤパン』『力の限りゴーゴゴー!!』『笑う犬』『新堂本兄弟』『爆笑ヒットパレード』『エニシバナシ』『おじさんスケッチ』などを担当。『爆笑レッドカーペット』『爆笑レッドシアター』『THE MANZAI(第2期)』『うつけもん』『オサレもん』『ツギクルもん』『ENGEIグランドスラム』『笑わせたもん勝ちトーナメント KYO-ICHI』などのネタ・演芸番組を立ち上げ、18年から共同テレビジョンに出向。『両親ラブストーリー~オヤコイ』(読売テレビ)のほか、『ザ・ベストワン』(TBS)、『NHKだめ自慢~みんながでるテレビ~』(NHK)、『ネタX(エクス)チェンジ』(読売テレビ)などを手がける。