女優の清原果耶が主演を務める、映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』が現在公開されている。作家・野中ともその同名小説を実写化作した同作は、平穏に暮らしながらも時々息苦しくなる14歳のつばめ(清原)が、ある夜キックボードに乗った謎めいた老女“星ばあ”(桃井かおり)と出会ったことで交流を重ね、人生に変化が起きていく物語だ。
監督を務めたのは、2019年に映画『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞最優秀作品賞を含む、6部門を受賞、各映画賞も多数受賞した藤井道人。これまでに発表した、ひりひりとした作品とはまた一味違った今作は、藤井監督にとっても挑戦だったという。今回は藤井監督にインタビューし、作品についての思いやこれからの展望について話を聞いた。
■3~4年脚本を書いていた
――藤井監督というと『新聞記者』の印象が大きかったので、『宇宙でいちばんあかるい屋根』がファンタジーな色合いのある作品で少し意外だったんですが、どのような経緯があったんでしょうか。
この映画の話は2016年に前田浩子プロデューサーからいただきました。『青の帰り道』『デイアンドナイト』という2作を作り終えて、僕が20代で、3.11以降に感じた負の感情を出し切ったなという感覚があって、新しい作品に挑戦したいと思っていたときに声をかけてもらったんです。前田プロデューサーからいくつかの候補の本をもらって、その中で1番難易度が高そうだなと思ったのがこの作品でした。
――どういうところが難易度が高いと思われたんでしょうか。
僕が14歳の少女だったことがないので、自分がこの作品を撮ったらどんなものになるだろうという、知的探求心から「やります」と言って、それから3~4年、ずっと脚本を書いていました。
――順番的には『新聞記者』よりも前にあった企画だったんですね。
『新聞記者』は2018年に、イレギュラーにオファーをもらった仕事で、『宇宙でいちばんあかるい屋根』は2018年に撮る予定だったんですけど、撮影が諸事情で延期になったことで『新聞記者』を先に撮ることになりました。
――そんなめぐり合わせがあったんですね。その順番と作風のギャップもあって、意外に思ったのかもしれません。
意外性という意味では、この作品の次が『ヤクザと家族 The Family』(2021年公開)なので、またぜんぜん違うんですけど(笑)。でも自分の中では、職業として監督をやる以上、ひとつひとつが、時代に合うものであればいいなと。
――『宇宙でいちばんあかるい屋根』において、「時代に合う」ところはどういうところでしょうか。
誰もが、いろんな人に支えられて今があると思うんです。時代の空気が悪くなると負の感情が生まれやすい。でも、そんな中でも、心がちょっとでも綺麗になれる瞬間があるんじゃないかと信じていて。性善説じゃないんですけど、朝のニュースを見て凹んでしまう時代に、処方箋のような映画になればと思っています。