2013年に放送されたTBS系日曜劇場『半沢直樹』は最終回で視聴率42.2%を記録するなど、歴史に残る大ヒットを記録。ドラマの原作である池井戸潤の「半沢直樹」シリーズが、その後も続いていることから、続編への期待は大きかった。そしてついに今年、待望の新シリーズが実現。初回から視聴率20%を超えるなど、前シリーズ同様、大きな注目を集めているが、池井戸氏からは「続編はないと思っていた」と意外な言葉が飛び出した。その真意とは――。
6年ぶりに「半沢直樹」シリーズ最新作として、『オレたちバブル入行組』の前日譚を描いた、シリーズの原点といえる『アルルカンと道化師』を9月17日に刊行する池井戸氏。小説もドラマも新作が誕生し、ファンにはたまらない2020年となっているが、2013年に日曜劇場でドラマ『半沢直樹』が放送された際には、平均視聴率28.7%、最高視聴率42.2%という数字を記録、堺雅人演じる半沢直樹の名ゼリフ「倍返し」は、その年のユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれるなど“半沢直樹”は社会現象となった。
多くの人は続編への期待に胸を膨らませていたが、結果的に新シリーズが映像化されるまで、7年の歳月が流れた。池井戸氏は「最初に映像化の話をいただいたとき、監督の福澤(克雄)さんから、3作目の『ロスジェネの逆襲』がすごく面白いから、1作目の『オレたちバブル入行組』からドラマ化させてほしいとオファーがあったんです」と当時を振り返る。
演出を担当する福澤氏が、『ロスジェネの逆襲』を起点としてドラマ化したいという話を持ちかけてきたということは、『半沢直樹』のセカンドシーズンは、ある意味で既定路線だったと思われるが、池井戸氏は、前シリーズが終わったあと「もうやらないんだろうなと思っていたので、忘れていました」と意外な言葉を発する。
その理由を問うと「最終回で40%以上の視聴率を叩き出し、金字塔を打ち立てたわけですよね。映像界の常識というか通例として、続編をやれば数字というのは下がるものだという印象がある。前作で視聴率的には大きな結果を出したわけで、次をわざわざ作って、その栄光を汚すこともないのかなと思っていたんです。僕自身も、ないならないでいいんじゃないかという気持ちでした」と胸の内を明かす。
そんな池井戸氏の思いとは裏腹に、長い空白の時間を経て、新シリーズのドラマ化が動きだした。
演出家である福澤氏への絶大なる信頼。確かに池井戸氏原作の映画『七つの会議』もメガホンをとったのは福澤氏だ。「やっぱり、信頼感があるというのが一番ですね。これまで日曜劇場で僕の作品はいくつも映像化されていますが、監督・スタッフを含めて、安心してお任せしています」。