Wi-Fi 6 Plusの優位性は確認が難しいが、実効速度は満足できる
では、実際にどの程度の速度が発揮されるのかチェックしていこう。速度チェックにはiPerf3を利用した。
Wi-Fi 6対応ノートPCであるASUSの「ExpertBook B9 B9450FA」をサーバとして、iPerf3をサーバモードで起動。そしてクライアントとして用意したスマートフォンは、Wi-Fi 6 Plus対応の「HUAWEI P40 Pro 5G」と、Wi-Fi 6対応のSamsung製「Galaxy S20 5G」の2台。この2台からサーバに設定したiPerf3にアクセスして速度を検証した。
無線LANの接続帯域は、もちろん5GHz帯域を利用。サーバPCはAX3と有線LAN(ギガビットイーサネット)で接続。さらに、比較としてバッファロー製のWi-Fi 6対応無線LANルータ「WXR-5950AX12」でも同様のテストを行った。無線LANルータ、サーバ用PC、クライアント用スマホは、すべて同一室内に設置している。
実効速度を計測する前に、各クライアントのリンク速度をチェック。サーバ用PCに搭載される無線LANモジュールはIntel製の「Wi-Fi 6 AX201」で、5GHz帯域は2ストリーム、160MHz幅での接続に対応。実際に、AX3との間で2.4Gbpsでのリンクを確認した。
続いてスマホだが、P40 Pro 5Gも5GHz帯域は2ストリーム、160MHz幅での接続に対応しており、こちらも2,401Mbpsでのリンクを確認。一方のS20 5Gは5GHz帯域で2ストリーム、80MHz幅での接続までの対応となり、リンク速度は1.2Gbpsだった。
では実効速度をチェック。今回のテストでは、サーバ用PCをギガビットイーサネットの有線LAN接続しているため、無線LANのリンク速度よりも遅く、ここがボトルネックとなる可能性が高い。
テスト結果も当然ながら1Gbpsを超えることはなかったが、いずれもギガビットイーサネットのほぼ上限の速度が引き出せている。結果を細かく見ると、リンク速度が速いP40 Pro 5GのほうがS20 5Gよりもやや高速だった。
P40 Pro 5Gの結果にのみ注目すると、WXR-5950AX12に接続した場合よりも、AX3に接続した場合のほうがいずれの結果もわずかに速い。数値的には誤差の範囲内ともいえるため、少々判断が難しい。ただ、複数回計測する中でもAX3のほうがわずかに高速というのは傾向として変わらなかったため、Wi-Fi 6 Plusが効果を発揮しているとしてもよさそうだ。
- P40 Pro 5G・下り(Mbps)
- WiFi AX3:919
- WXR-5950AX12:903
- P40 Pro 5G・上り(Mbps)
- WiFi AX3:939
- WXR-5950AX12:883
- S20 5G・下り(Mbps)
- WiFi AX3:826
- WXR-5950AX12:891
- S20 5G・上り(Mbps)
- WiFi AX3:748
- WXR-5950AX12:825
S20 5Gでは逆に、WXR-5950AX12接続のほうがAX3接続時よりも速かった。WXR-5950AX12はバッファローのハイエンドルータで、内部の仕様がAX3に比べて圧倒的にリッチなため、こういった差が出たと考えられる。ただ、WXR-5950AX12はAX3に比べて実売価格が3倍以上高価という点を考えると、AX3のコストパフォーマンスの高さが際立ってくる。
ただ、やはり無線LAN側で最大2,402Mbpsでの接続が可能なら、AX3の有線LAN側も2.5GbEに対応したり、LANポートを2つ束ねて高速化するリンクアグリゲーションに対応するなどの配慮が欲しいように思う。AX3の価格を考えると難しい部分もあるが、無線LAN側だけ高速だと十分に性能を引き出せないため、上位モデルとして高速な有線LANポートを備える製品も望みたい。
Wi-Fi 6・160MHz対応で税別1万円切りは破格
現在市販されているWi-Fi 6対応ルータの中には、1万円未満のエントリー製品もいくつか登場してきている。ただ、エントリー製品のほとんどは5GHz帯域で2ストリーム(80MHz幅)となり、速度(規格値)も最大1,201Mbpsだ。
そういった中でAX3は、税別で1万円切りという値段ながら、5GHz帯域で2ストリーム(160MHz幅)対応で最大2,402Mbps対応と、圧倒的に高速な接続が可能という点が大きな特徴となる。有線LANはギガビットイーサネットどまりなのでボトルネックとはなるが、無線LAN接続のクライアント間での通信速度は間違いなく有利なので、この点は競合製品に対する大きなアドバンテージとなるはずだ。
Wi-Fi 6 Plusについては、対応クライアントがほとんどないため、あまり優位点とはならない可能性が高い。もちろんWi-Fi 6との互換性は問題なく、おまけ程度に考えればいいだろう。機能面はシンプルだが、必要な機能はほぼ網羅しているし、セキュリティ機能も充実している。IPv6 IPoE非対応なのは残念だが、それを考慮してもコストパフォーマンスは高い。安価でも高速な無線LAN通信が行えるルータを探している人におすすめだ。