『24時間テレビ』の40年を超える歴史の中で、ターニングポイントとなったのは、ダウンタウンを番組パーソナリティーに抜てきした1992年だ。この年、チャリティーマラソンが始まり、テーマソング「サライ」が制作されるなど、現在の『24時間テレビ』の原型と言えるものができたが、今年はそれ以来の大きな変革になるという。
「これだけ長い歴史と蓄積がある番組というのは、基本は前年を踏襲しながら、そこに新しいエッセンスを足していくような作業になっていくと思うんです。でも、今年はこれまでのフォーマットで作ろうとしても絶対できないし、安全が担保できないので、1つ1つの企画を見直していく作業をしていきました」
そこで打ち出されたのが、“原点回帰”という意識だ。
「43年前に『24時間テレビ』が始まったときは、募金を呼びかけてお風呂カーを必要としてる人たちに届けようという、今よりもハッキリしたテーマを掲げて、『募金をお待ちしております』という映像が頻繁に出てくる画期的な番組でした。ただ、歴史が長くなってくるとどうしても1つの定形やベースができ上がって、『そもそもなぜこれを始めたのか』という部分を問い直すことなく踏襲していることもあったと思うんです。今回改めて番組を全面的に見直す中で、原点を大事にするということを意識しています」
その一例が、恒例のチャリティーマラソンに代わって行われる「24時間高橋尚子&チームQの募金ラン」。コロナの影響でマラソン大会の中止が相次ぐ中、シドニー五輪マラソン金メダリストの高橋尚子が、自身で募金できる取り組みを考え、“1周5キロのコースを走るごとに10万円募金する”という企画を持ち込んでくれたと言う。
「“走る”ことによって人が応援したくなる思いが募金という形になるという根本をあまり考えずに『去年はあの人だったから、今年はこの人にランナーをお願いしよう』となってしまった部分が、ここ数年は多少あったと思うんです。今年は風物詩のマラソンができないとなったときに、“走ることでメッセージを届けてきたことの意味”を改めて考え直し、今回の企画になりました」
■番組制作チームと募金チームが連携を密に
原点回帰の姿勢はもちろん、番組の根幹であるチャリティーにも。「例年は、番組を作る我々制作チームと、募金を担当する『24時間テレビチャリティー委員会』という公益社団法人が、互いの領域を分けていた部分もありました。しかし、今年はより連携を密にして、頂いた募金を医療従事者の皆さんなど、どこに展開していくのかというところまで我々も考えています」
今年は、メイン会場の両国国技館での対面募金を中止することに伴い、キャッシュレス募金を強化しているが、こうした技術の進化に助けられている面は、かなり大きいようだ。
「メイン会場に募金箱を持ってくるという慣例が長く続いてきた中で、新しくキャッシュレスで募金しようとは、なかなか踏み込めなかったと思うんです。でも、募金というものを第一義に考えた番組において、コロナ禍においてはキャッシュレスで決済できないと募金全体が成立し得ないとなると、変化のスピードが大きく上がっていく。コロナがなかったら変化に5年かかるものが、たった2カ月でできてしまうようなスピード感がありました」と前向きに捉えている。
さらに、キャッシュレス決済によって募金のハードルが低くなることで、例年より募金額が増えることも「あるのではないかと思います」と期待を寄せた。
■「面白いからやってるんです」ではダメ
コロナ禍において『24時間テレビ』を放送することに批判的な声もあるが、「僕らが今年も放送するときに、『こういう精神でやる意義があると思っているんです』と胸を張って言えないといけない。『なんか面白いからやってるんです』ではダメなんです」と強調。
「根底にあるのは、たくさんの人が8月の終わりの土日にテレビをつけて、楽しみながら感動しながら、いろんな喜怒哀楽を感じる中で社会の問題を知ってもらい、募金するモチベーションを高めるスイッチを押す役割。そうした意義をより強く意識して、今年は臨んでいきます」と決意を語っている。