フルサイズミラーレスブームのなか、APS-Cミラーレスと中判ミラーレスの2本柱で固定ファンを獲得している富士フイルムのX/GFXシリーズ。現在の売れ筋は、一眼レフスタイルのボディを採用する主力モデル「X-T4」です。X-Tシリーズ初のボディ内手ブレ補正機構やバリアングル液晶の搭載など、ファン待望の改良を施したのが特徴ですが、Xシリーズをプライベートでも仕事でも愛用し続けてきた大浦カメラマンにとっては残念に感じる部分が少なからずあったようです。
バリアングル液晶への改良に納得できない写真ファンもいる
富士フイルムのXシステムは、APS-Cサイズのイメージセンサーを搭載するミラーレスと、APS-Cセンサー搭載のコンパクトカメラで構成されています。いずれのカメラも、フィルムライクで高描写な絵づくりに加え、アナログ感覚の操作を多用しているのが特徴です。なかでも、“X-Tヒトケタ機”は、このシステムを代表するカメラであるとともに、各社のミラーレスのなかでも人気の高いシリーズとなっています。今回ピックアップする「X-T4」はその4世代目で、センサーシフト方式の手ブレ補正機構をX-Tヒトケタ機としては初めて備えたのが一番の注目点といえます。
まずは、いつものとおり外観を見ていきましょう。これまでとちょっと異なるのがボディシェイプです。初号機「X-T1」から先代「X-T3」まではほぼ同じシェイプでしたが、X-T4は一般にペンタ部と呼ばれるトップカバー凸部とその周辺の形状が異なります。横幅が拡大するとともに、見た目に低く感じるシェイプのため、重厚な印象を受けます。個人的な主観では、X-T3以前のほうがタイトに締まったボディシェイプでカメラ全体のバランスもよいように思えます。
グリップの張り出しもこれまでより大きくなり、カメラがホールドしやすくなったように感じます。ちなみに、ボディサイズはX-T3のW132.5×H92.8×D58.5mm(最薄部35.4mm)に対し、X-T4はW134.6×H92.8×D63.8mm(最薄部37.9mm)とわずかに大柄になったことが数字的に見て取れます。質量は、X-T3が539g(バッテリー、SDカード含む)なのに対し、68g重い607g(同)となり、Xシリーズのハイエンドモデル「X-H1」の質量673g(同)に対するアドバンテージは薄れてしまいました。手ブレ補正機構の搭載と、以下で触れるバリアングルタイプとなった液晶モニターが大きく影響しているものと思われます。
バリアングル液晶モニターですが、これは映像(動画撮影)関係での使われ方を考慮した改良といえます。静止画撮影に限っていえば、自撮りする機会のある人には便利ですが、通常のハイアングル撮影やローアングル撮影など液晶モニターを上下方向に動かして撮影する場合は、液晶モニターが光軸からずれた位置となるため、正直使い勝手がよいとはいいがたいと感じます。従来のチルトタイプは、液晶モニターを上下方向に向けたときでも光軸とほぼ同じ位置となるほか、右方向にも振ることが可能で、縦位置撮影の場合も便利だっただけに、写真撮影を楽しむ者から見ればこのバリアングルタイプ化は重量増となることも含めて意見の分かれるところでしょう。なお、パネルはタッチパネル付きの3インチ162万ドットと、X-T3から変更はありません。
コマンドダイヤルは伝統のプッシュ機能をなくしてほしい
操作部材に関しての注目点は、静止画/動画の切り替えダイヤルとリアコマンドダイヤルです。
前者はシャッタースピードダイヤルと同軸にあり、先代モデルまでは測光モードを選択する測光ダイヤルでした。X-T4では、その名のとおり静止画(STILL)と動画(MOVIE)の切り替えを行うダイヤルとなり、追い出されることとなった測光モードの選択は撮影メニューの中に入ってしまい、瞬時に選択できなくなりました。こちらもバリアングルタイプの液晶モニターと同様、動画撮影に重きを置いた結果といえます。なお、MOVIEにセットするとメニュー画面とクイック(Q)メニューが動画専用の内容に切り変わるようになり、動画撮影では便利に思えました。
リアコマンドダイヤルは、これまでよりもダイヤル部分がボディから出ており、右手親指で回しやすくなりました。ただし、このダイヤルは従来と同様のプッシュ式で、フニャッとした節度のない操作感もこれまで通り。メーカーの開発担当者は、ライブビュー画像の拡大縮小について、一度リアコマンドダイヤルをプッシュさせて操作させるのがベストと話しますが、むしろプッシュ機能を廃止してリアコマンドダイヤルをダイレクトに動かすだけで拡大縮小させるほうが直感的ですし、何よりあのフニャッとした感じがなくなってほしいと思います。同様のことは、同じプッシュ式のフロントコマンドダイヤルにも当てはまるので、メーカーには一考をお願いしたいところです。
撮影の要となるイメージセンサーは、有効2610万画素の裏面照射型「X-Trans CMOS 4センサー」、同じく画像処理エンジンは「X-Processor 4」なります。いずれも、先般レビュー記事で紹介したレンズ一体型モデル「X100V」をはじめ、「X-Pro3」やX-T3などと同じ仕様で、第4世代デバイスと同社が謳うものです。変更がなかったのは、性能的に現時点で行き着くとこまで行き着いたものと考えてよいでしょう。
実際、APS-Cサイズながら階調再現性や高感度特性に不足を感じることはなく、さらに独自のカラーフィルター配列によりローパスフィルターレスでもモアレや偽色の発生を徹底的に抑えるなど、写りは評価できます。もちろん、富士フイルム独自のフィルムライクな絵づくりが楽しめるフィルムシミュレーションや、粒状感が得られるグレイン・エフェクトなども搭載されており、写りにスキはありません。
AFは基本的に機能自体に変更ありませんが、アルゴリズムは一新されています。なかでも、コンティニュアスAFの合焦率や被写体追従性は向上しているとのことです。先代X-T3でもコンティニュアスAFの被写体捕捉性能が飛躍的にアップして注目を集めましたが、それをさらに押し進めたものといえます。実際に撮影した限りにおいてもAFに関するストレスは皆無で、合焦率も極めて高く感じられました。スポーツイベントや鉄道など、動体撮影でもミラーレスだからとためらう必要はまったくないでしょう。なお、フォーカスエリアの選択は、これまでと同じカメラ背面のフォーカスレバーで直感的に素早く行うことができます。
EVFもX-T3から変更はありません。といっても、369万ドットと高精細なものですので、不足を感じることはないでしょう。彩度をはじめ、明るさや色合いの調整ができるのもこれまで通りで、より仕上がりに近い色調や好みの色調にファインダーの表示が追い込めるのはうれしい部分です。さらに、カメラを横位置に構えたときと縦位置に構えたとき、表示がそれぞれに対応して変化するのも便利に思えます。Xシリーズは伝統的に、電子水準器機能は画面の中央部分を横切る線で表示するものですが、本モデルも例外ではありません。瞬間的にカメラの水平を確認できて分かりやすいため、風景やスナップなどの撮影では重宝すること請け合いです。