カタログには載っていないEOS R5/R6の差

ここから先は、チョイと条件付きのインプレッションになるので注意してほしい。動体撮影に関しては使用レンズがほぼ「RF800mm F11 IS STM」と「RF600mm F11 IS STM」に限られているからだ。つまり、一種“特殊なレンズ”による撮影時使用感、およびAF雑感になってしまう。基本的には、発表されている注釈以外は「同じように使える」はずの超望遠単焦点レンズなのだけど、ひょっとしたら他の一般的なRFレンズで撮影したときとは細かな挙動が異なることがあるのかもしれない。

  • EOS R5/R6と同時に発表された超望遠レンズ2本。左が「RF600mm F11 IS STM」(実売価格は税込み96,800円前後+ポイント10%)、右が「RF800mm F11 IS STM」(実売価格は税込み124,300円前後+ポイント10%)

  • 105mmで撮影(RF24-105mm F4 L IS USM)

  • 600mmで撮影(RF600mm F11 IS STM)

  • 800mmで撮影(RF800mm F11 IS STM)

  • 105mmとの違いはあえて言うまでもないけれど、600mmと800mmの画角差が大きなものであるかどうかは、何をどんな距離でどんな風に撮るのかによって判断が割れそうだ。個人的には、使っていて楽しかったのは圧倒的に800mm。買うならドーンと800mm!!ってことになりそうだ

で、EOS R5とEOS R6で何が違ったのかというと、動体に対するAFの追従性だ。両者、AF性能に差はないはずなのだけど、実際には違った。EOS R5の方が動体追従とピントの精度に関し確実性が上だったのだ。

ただし、これは、近距離を縦横無尽に飛び回るウミネコを追いかけての印象である。一口に「動体」とはいっても、非常に難度の高い被写体および条件であるといっていい。もちろん、ホバリングに近い動きを撮っての判断ではなく、けっこうなスピードで遠近さまざまな距離を行き来する姿を追いかけ続けるという“悪条件下”における印象なので、かなり厳しい見方になっていると思う。

一方、被写体認識の能力や傾向に差はなさそうだ。EOS R5とEOS R6の被写体認識AFは、人間の「瞳」「顔」「頭部」、動物(犬、猫、鳥)の「瞳」「顔」「全身」を認識するもので、その動作は他社との比較でもかなりイケている。とりわけ、煩雑な背景を背負っている小さな被写体をピタリと認識する能力は随一といってもいいだろう。

  • キラキラとした反射がある海面を背景にしているこんな場面で、画角内に小さく存在する被写体に測距点自動選択まかせでピントを合わせられるカメラって実は少ない。でも、EOS R5はウミネコの顔を認識。一発でピントを合わせた。お見事。撮影時に選択されていた測距点をキヤノンのRAW画像現像、閲覧、編集用ソフトウェア「Digital Photo Professional」(DPP)で確認すると、EOS R5とEOS R6の被写体認識の賢さが一目瞭然だ(EOS R5+RF800mm F11 IS STM使用、ISO2500、1/4000秒、F11.0、+0.7補正)

  • よろしくやってるアメンボを何であると認識したのかは不明も、ご覧の通りの認識枠が出現、ピタッと難なく合焦してくれた。犬、猫、鳥以外にもファジーに対応する被写体認識の動作は邪魔になるものではないというのが現時点における率直な印象だ(EOS R5+RF800mm F11 IS STM使用、ISO12800、1/2000秒、F11.0、+1補正)

  • 顔が見えないこんな場面では全身(フォルム)を認識。動体に対しても、この臨機応変な測距範囲の変更(認識対象部位の乗り移り)はスムーズ、かつ素速く行われる(EOS R6+RF24-105mm F4 L IS USM使用、ISO640、1/125秒、F4.0、+1.3補正)

  • この程度の距離感なら余裕で顔を認識する。いや、この場合は、撮影時の記憶をたどると「顔」というよりも「瞳」認識をしていたように思う。いずれにしても見事な動作だ(EOS R6+RF24-105mm F4 L IS USM使用、ISO1000、1/125秒、F4.5、+1.3補正)

「動物優先」設定でも「人」の検出を行ってくれたり、動物優先では「犬、猫、鳥」以外のモノ(昆虫など)でも過不足なく認識を行うことがまぁまぁ見られるなど、被写体認識の動作に係る「認識する、しない」の線引きがイイ具合に緩いのも、実際に使ってみりゃわかるけどかなりイイ。「そうそう、写真ってのは0か1かのデジタルじゃなくアナログであるべきもの。わかってるじゃん!!」って感じなのだ。このあたりのまとめ方は、まさしくキヤノンならではの絶妙なサジ加減を感じさせる部分であり、さらにそんな被写体認識機能を100%活かしながら動体をキッチリ捉えられるカメラに仕立てられているのがEOS R5とEOS R6である。その実力は、ミラーレス機トップレベルだ。

  • 800mmの最短撮影距離は6m。ムリに寄ってもテレマクロ的な写りは得にくいので、近接撮影はハナから諦めた方が無難かも。光線状態が均一な背景ならば、ボケはご覧の通りまぁまぁ素直。レンズ自体の解像性能も、このレンズでこれだけ写れば御の字だといえるだろう。600mmの最短撮影距離は4.5m(EOS R6+RF800mm F11 IS STM使用、ISO12800、1/1000秒、F11.0、-0.3補正)

  • 800mm。ランダムな動きをする動体も思いのほかちゃんと撮れた。このレンズがここまで普通に使えるとは思わなかったので感動レベルはMAXだ。ピントは、測距点自動選択+サーボAFの完全カメラまかせ。一眼レフに見劣りしないAFが実現されている。ただし、薄暗いところで大ボケになったときのAF駆動は目も当てられないぐらい遅くなるので注意(EOS R5+RF800mm F11 IS STM使用、ISO6400、1/4000秒、F11.0、+1補正)

  • メカシャッター時に横移動している被写体をファインダーの一定位置に収め続けるのが難しかった。これは、メカシャッターによる連写時のファインダー表示がアフタービューや表示用画像のパラパラ表示になる(リアルタイム表示ではない)ことで、EVFの表示遅延が連写コマ数が増えるごとに蓄積されるような感覚に陥ってしまうため。あと、よく効く手ぶれ補正がパン時に引っかかりを感じさせることもある。結果、動体を撮る場合は、いかなるときも電子シャッターで撮った方が「撮りやすさ」には勝るとの印象を抱くことになった。詳細は後編にて(EOS R5+RF800mm F11 IS STM使用、ISO2500、1/4000秒、F11.0)

  • 私は、EOS R6を使い始めて間もなくのこのカットで、EOS R6の生み出す素性の良い画質を初めて確認することになった。EOS R5はいらない(R6でいい)との判断に一度は傾いたのはそのため。高感度画質にもR6は有利であるし…。ちなみに、このアオサギは何を気にしているのか、等倍で見れば注意すべきその答えは一目瞭然。苦手な人は見ない方がいいかも(EOS R6+RF800mm F11 IS STM使用、ISO4000、1/800秒、F11.0、-1補正)

  • EOS R6にRF24-105mm F4L IS USMを組み合わせて撮影。ナチュラルで精細な画作りに好印象だ。撮影時、手のひらに伝わるボディ存在感は中級一眼レフを持っているぐらいの感覚なのだけど、メカシャッター時にも音や手応えは小さいので最初は違和感バリバリ。すぐに慣れちゃったけどね(EOS R6+RF24-105mm F4 L IS USM使用、ISO125、1/60秒、F5.6、-1補正)

ひとことで評するならば、キヤノンのミラーレス機がついにここまで来た!ということになろうか。そう考えるとジツに感慨深いものがある。これまでのEOS Rとはカンペキにベツモノであるし、しかもEOS R5は一眼レフ「EOS 5D(s)」や「EOS 5D Mark IV」を悪気なく潰す身内の刺客にもなっている(個人的見解です)。よくぞそこに踏み込んだ! でも、どうせなら、これ、3年前に見せてもらいたかったような気がするなぁ。無論、出し惜しみをしていたわけじゃないのだろうけれど……。

  • 屋台骨である一眼レフEOSに対して一切の遠慮のないEOS R5の仕上がりに目を丸くする落合カメラマン。長らく「本気」を感じ取れなかったキヤノンのミラーレスカメラの印象がガラリと変わったと高く評価するとともに、懐具合が早くも気になり始めた様子……