カタログには載っていないEOS R5/R6の差
ここから先は、チョイと条件付きのインプレッションになるので注意してほしい。動体撮影に関しては使用レンズがほぼ「RF800mm F11 IS STM」と「RF600mm F11 IS STM」に限られているからだ。つまり、一種“特殊なレンズ”による撮影時使用感、およびAF雑感になってしまう。基本的には、発表されている注釈以外は「同じように使える」はずの超望遠単焦点レンズなのだけど、ひょっとしたら他の一般的なRFレンズで撮影したときとは細かな挙動が異なることがあるのかもしれない。
で、EOS R5とEOS R6で何が違ったのかというと、動体に対するAFの追従性だ。両者、AF性能に差はないはずなのだけど、実際には違った。EOS R5の方が動体追従とピントの精度に関し確実性が上だったのだ。
ただし、これは、近距離を縦横無尽に飛び回るウミネコを追いかけての印象である。一口に「動体」とはいっても、非常に難度の高い被写体および条件であるといっていい。もちろん、ホバリングに近い動きを撮っての判断ではなく、けっこうなスピードで遠近さまざまな距離を行き来する姿を追いかけ続けるという“悪条件下”における印象なので、かなり厳しい見方になっていると思う。
一方、被写体認識の能力や傾向に差はなさそうだ。EOS R5とEOS R6の被写体認識AFは、人間の「瞳」「顔」「頭部」、動物(犬、猫、鳥)の「瞳」「顔」「全身」を認識するもので、その動作は他社との比較でもかなりイケている。とりわけ、煩雑な背景を背負っている小さな被写体をピタリと認識する能力は随一といってもいいだろう。
「動物優先」設定でも「人」の検出を行ってくれたり、動物優先では「犬、猫、鳥」以外のモノ(昆虫など)でも過不足なく認識を行うことがまぁまぁ見られるなど、被写体認識の動作に係る「認識する、しない」の線引きがイイ具合に緩いのも、実際に使ってみりゃわかるけどかなりイイ。「そうそう、写真ってのは0か1かのデジタルじゃなくアナログであるべきもの。わかってるじゃん!!」って感じなのだ。このあたりのまとめ方は、まさしくキヤノンならではの絶妙なサジ加減を感じさせる部分であり、さらにそんな被写体認識機能を100%活かしながら動体をキッチリ捉えられるカメラに仕立てられているのがEOS R5とEOS R6である。その実力は、ミラーレス機トップレベルだ。
ひとことで評するならば、キヤノンのミラーレス機がついにここまで来た!ということになろうか。そう考えるとジツに感慨深いものがある。これまでのEOS Rとはカンペキにベツモノであるし、しかもEOS R5は一眼レフ「EOS 5D(s)」や「EOS 5D Mark IV」を悪気なく潰す身内の刺客にもなっている(個人的見解です)。よくぞそこに踏み込んだ! でも、どうせなら、これ、3年前に見せてもらいたかったような気がするなぁ。無論、出し惜しみをしていたわけじゃないのだろうけれど……。