新型コロナウイルス感染症予防のために、屋内ではこまめな換気が必要とされています。その一方で、この夏は熱中症予防も同時に行わなければなりません。
熱中症予防のために、適切なエアコンの稼働が大切とされていますが、頻繁な換気は室内の温度上昇を招き、両立させるにはちょっとしたコツを押さえておく必要があります。
そんな中、空調機専業メーカーのダイキン工業が同社の会員制サイト「CLUB DAIKIN」において、「コロナ禍における"熱中症対策"と"上手な換気の方法"」と題したオンラインセミナーを開催したので紹介します。
熱中症には2つのタイプがある
セミナーでは、帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター長の三宅康史氏による、「コロナ禍における熱中症対策について」という講演が開催。
三宅氏は、『現場で使う!! 熱中症ポケットマニュアル』(中外医学社)の著者としても知られ、「今年の夏は、いつもとは違ってコロナにも熱中症にもかからないようにすること、どちらもしっかりと予防することが大切」と語ります。
熱中症には2つのタイプがあり、このうち"非労作性熱中症"と呼ばれるタイプが特に注意が必要な症状。「家の中で特に何もしていないのに熱中症になる」のが特徴で、60代以上の高齢者が多いと言います。
全年齢層での男女差はないものの、高齢になるにつれて女性が増える傾向と、基礎疾患のある人が多く、複合的な要因で重症化しやすいので注意が必要です。
「昨今は熱波で昼夜問わず暑さが続き、徐々に徐々に室内に熱がこもり、いつまで経っても室温が下がらないという状況。年齢が高くなるにつれ、熱に対する耐性が弱くなっていくため、段々と悪化して重症化しやすい」とのこと。
三宅氏が示した、環境省の統計によると、6~7月の熱中症による国内の死亡者は2010年に1,700人を超えました。2018年にも1,500人程度が熱中症で命を落としており、「短期間で千何百人もが亡くなっている。これはもう災害とも言えます」と三宅氏。
熱中症による死亡者では、65歳以上が80.4%を占めています。他方、若年層の死亡者は減少傾向にあります。
熱中症になった時の応急処置
その理由は、若年層の場合には"労作性熱中症"と呼ばれるもう1つのタイプが多いため。この場合には、主に炎天下での激しい運動や労働が主な原因で、10代はスポーツ、40代以降は肉体労働に起因するケースが多いことから、「もともと元気な人が、頑張り過ぎて熱中症になるので、すぐに回復します」と述べました。
熱中症の重症度の判定には、まずは意識の確認をした後、自力で水分補給ができるか否かが基準とのこと。そのまま20~30分様子を見た後、回復すれば軽症ですが、よくならない場合には重症と判断されるので医療機関を受診したほうがよいとのことです。
そして、応急処置を行う際のキーワードは"FIRE"。F=Fluid(適切な水分補給)、I=Icing(身体を冷やす)、R=Rest(安静)、E=Emergency(救急搬送/119番)という4つの措置を行います。
コロナ禍の中では、新しい生活様式として"マスクの着用"が定着しました。三宅先生も「飛沫の拡散をかなり抑えられるため、マスクは非常に大事」と推奨します。
しかし、夏場のマスクの着用は熱中症予防との両立が欠かせません。「呼吸というのは、通常は冷たい空気を吸うことで身体を冷やす効果がありますが、マスクをすることで、マスクで暖まった外気を吸って、それを吐くときにさらにマスクを温めてしまうことになるので、体内に熱がどんどん溜まってしまいます」と、マスクが熱中症のリスクを高めるメカニズムを説明しました。
さらに、マスクという"ついたて"を通して呼吸を行うことも熱中症のリスクを高めるもう1つの要因。「呼吸筋を余計に働かせてしまうことになりので、スポーツをしているのと同じ状況になり、身体を温めてしまう」と、危険性を指摘しました。
とはいえ、通気性を優先してしまうと、"飛沫の拡散を抑制する"という本来の目的を果たすことができなくなるので、新型コロナウイルス予防で推奨されるマスクとして、FDA(アメリカ食品医薬品局)の自主基準を満たしていることを示す「マスク工業協会」のマークが付いたもので、帯電している不織布のマスクを挙げました。