PCがコモディティ化し、一般的な作業で性能差を感じる機会は少なくなった。だが5年も経過すればどうだろうか? Intel Core i9-10900Kを搭載したマウスコンピューターのクリエイターPC「DAIV Z7-QR4」と、Core i7-6700Kを搭載したPCのそれぞれで写真を現像し、処理速度を比べてみたいと思う。
5年も買い替えていない我が家のPC
正直に言おう。IT関連のライターをしている筆者だが、実は自宅にあるデスクトップPCのCPUはいまだにインテルの「Core i7-6700K」。このSkylake-S世代のCPUが発売された2015年は、コア数も増えず、動作クロックも伸びずで性能の向上が停滞してた頃だったと記憶している。
それでもSSDさえ搭載してしまえばそれなりに速いし、まだまだ十分に使えるし、子供が生まれてろくにゲームもできないし……でずるずると使い続けて、はや5年。最近は愛用のRAW現像ソフト「SILKYPIX」も遅く感じることが多くなり、さすがにそろそろ買い替えかな~と考え始めたりもしていた。
そんな矢先、編集部から「そういえば、出たばかりのComet Lake-Sを載せた高性能PCの入荷予定がありますよ?」と言われて借りたのが、マウスコンピューターの「DAIV Z7-QR4」。しかも「Core i9-10900K」「水冷CPUクーラー」「32GB メモリ」にBTOカスタマイズされているという逸品だ。これは「そろそろPCを買い替えたまへ」というお告げか! ……というわけで個人的な興味も踏まえて検証してみたい。
プロフェッショナル御用達の「DAIV Z7-QR4」
先に"ブツ"の概要を紹介しておくと、マウスコンピューターの「DAIV」は、クリエイター向けのPCを取り扱うブランド。デスクトップPCは大きく「スタンダード」「ミドルレンジ」「ハイエンド」「プロフェッショナル」の4シリーズに分かれており、今回借りた「DAIV Z7-QR4」はQuadroグラフィックスを搭載した「プロフェッショナル」にあたる。
お値段は269,800円(税別)からとなっているが、BTOカスタマイズが行われているため、7月現在、試用機の価格は315,500円(税別)。正直、RAW現像を目的として買うにはもったいないほどのハイスペックだ。
DAIV Z7-QR4(カスタマイズモデル)の主要スペック | |
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OS | Windows 10 Home 64ビット |
CPU | Intel Core i9-10900K |
グラフィックス | NVIDIA Quadro RTX 4000 |
メモリ | 32GB PC4-21300/DDR4-2666(16GB×2/デュアルチャネル) |
M.2 SSD | 512GB NVMe対応 |
電源 | 700W 【80PLUS BRONZE】 |
定番ベンチマークでもわかる圧倒的な処理速度
まずは、定番ベンチマークソフトで「DAIV Z7-QR4」の実力をチェックしておきたい。「PCMark 10 Extended」は以下の通り文句のつけようがない結果で、今回期待している“Photo Editing Score”においても高いスコアを出している。スコアの高さはパフォーマンスデータからも裏付けられており、CPUが安定した高クロックを実現していることがわかる。
「3DMARK」もグラフィックスの性能が反映され、高いスコアを記録している。Fire Strike UltraやTime Spy Extremeといった高解像度のテストでもコマ送りのようにならないところはさすがの一言。プロフェッショナル向けという位置づけもうなづける。
Fire Strike | 19596 |
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Fire Strike Extreme | 9846 |
Fire Strike Ultra | 5014 |
Time Spy | 8453 |
Time Spy Extreme | 3956 |
Port Royal | 4613 |
3Dレンダリングの定番ベンチマーク「Cinebench R20」では、Intel Core i9-10900Kの処理性能がストレートに出た。10コア20スレッドは伊達ではなく、シングルコアと比べて11.86倍のスコアを達成している。「CrystalDiskMark」で512GB NVMe対応のベンチマークも行ったが、こちらも良好。大容量のメディアファイルを編集したり、大量のRAWデータを現像してもボトルネックとなることはなさそうだ。
実測! SILKYPIXでRAWデータ100枚現像
というわけでここからが本番。「SILKYPIX Developer Studio 10」をインストールして、「Sony α9」で撮影したRAWデータ100枚を現像していきたいと思う。出力はJPEGだ。ここでは、比較として現在の愛機でも計測を行った。長年使用しているPCだけに初期の性能は出ないかもしれないが、これもリアルな比較ということで勘弁していただきたい。
Core i7-6700K搭載機の主要スペック | |
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OS | Windows 10 Home 64ビット |
CPU | Intel Core i7-6700K |
グラフィックス | NVIDIA GeForce GTX 1080 |
メモリ | 8GB PC4-25600/DDR4-3200(4GB×2/デュアルチャネル) |
SSD | 512GB SATA3 |
電源 | 1000W 【80PLUS Platinum】 |
まずCore i7-6700KとGeForce GTX 1080を搭載する、当時としては悪くないスペックの愛機でRAWデータをパッチ登録し、現像を開始する。いつも通り一枚一枚確実に現像していく様子に「ガンバレ~!」と応援したくなるが、5分を過ぎたあたりで終わりそうにないので小休止。最終的に「13分37秒」ですべての現像を終えることができた。
続いて「Z7-QR4」だ。正直、計測する前から起動画面の速さ、編集画面の滑らかさの時点で目に見えて違っており、結果もかなり期待できそうだ。さっそくRAWデータをパッチ登録して現像を開始すると、一枚一枚の処理速度がまるで違う。あれよあれよという間に現像は進み、最終的に「6分45秒」で100枚の現像を終えた。
なんということだろう、ダブルスコアだ……。最新マシンに買い替えれば、1/2以下の時間で現像が完了するということがわかってしまった。