• 『ワイドナショー』の薄いアクリル板 (C)フジテレビ

アクリル板が“小道具”としても機能したのが、こちらも松本が出演する『ワイドナショー』(毎週日曜10:00~)だ。

なるべくナチュラルに収録するため、パネラー席に設置しているアクリル板をソフトな素材にできないかという提案を受け、厚さを5mmにスリム化。最近の放送では、この素材をうまく使い、板をバンバンと叩いて隣のパネラーを“いじる”手段として使われ始めている。

■建て込みスタッフ削減も担務拡大で対応

コロナ禍での収録は、出演者やスタッフの人数を減らし、ソーシャルディスタンスを取っているが、同時にセットを建てるスタッフの人数も減らしている。そうした条件の中で、どんな工夫が行われているのか。

「美術スタッフでセットの建て込みに関わる人間は、大道具、アクリル装飾、生花、植栽、鉄骨、電飾に、動く仕掛けモノまであるので、それぞれの会社をそろえるだけで大変な人数になってしまうんです。そこで、『本来はここまで』という業務の人が別の業務もやって、それをやってもらった人が別の番組では逆転するという形で、同じ場所にいる人数は少ないけど、担務の幅を広げることでどうにか対応しています」

実際に、20日に放送された特番『芸人クイズプレゼンショー BAKAーMON』に関わったのは、大道具とアクリル装飾の2つの会社のみ。「電飾で出す迫力をカラーリングでカバーしたり、本来なら花などを置きたいところをぬいぐるみで代用したりしました」。

  • 『芸人クイズプレゼンショー BAKAーMON』のセットに置かれたぬいぐるみ (C)フジテレビ

まさに会社の垣根を越えた協力体制を構築しており、「みんな『働きたい』『コロナの中で少しでも活躍できることがうれしい』って言ってくれるんです。人数が少なくても絶対にミスをしないように頑張ってくれています」と感謝する鈴木氏。

だからこそ、「1つのメディアとして、過剰と言われるレベルまで対策をしないといけないという考えがあります。自ら進んで一番厳しい中でやっているという姿勢を示さないと、世の中に伝えようとする情報が曲がって伝わってしまうこともありますから。大変なのは確かですが、僕らが気を緩めてはいけないんです」と、プロ意識を見せている。

  • フジテレビの鈴木賢太デザイナー

●鈴木賢太
1974年生まれ、埼玉県出身。武蔵野美術大学卒業後、97年フジテレビジョンに入社。主な担当番組は『ENGEIグランドスラム』『ネタパレ』『人志松本のすべらない話』『IPPONグランプリ』『ジャンクSPORTS』『ワイドナショー』『ダウンタウンなう』『VS嵐』『バイキング』『MUSIC FAIR』『FNS歌謡祭』『全力!脱力タイムズ』ほか。14年には『VS嵐』正月特番のセットで第41回伊藤熹朔賞協会賞を受賞。