『ウルトラマンマックス』で初めてプロデューサーを兼任することになった演出家・八木毅氏の談話によると、本作ではひとつひとつのエピソードを"バラエティ"に富んだものにするべく「1話完結のオムニバス形式」を徹底する考えがあったそうだ。全体的なテーマこそ作り込まれてはいるが、それは緩やかな"縛り"でしかなく、脚本家と演出家の"やりたいこと"を優先する作品作り、つまり"作家主義"の方針が貫かれていた。
このような考えのもと、『マックス』ではそうそうたる脚本家・演出家が集められ、各クリエイターの持ち味・方向性をぞんぶんに活かしたエピソードが創造された。
演出家では、平成『ガメラ』シリーズで特撮怪獣映画の"流れ"を激変させた功労者・金子修介監督、『ウルトラマンティガ』など平成ウルトラマンシリーズで手腕をふるった村石宏實監督、『ゴジラ2000ミレニアム』(1999年)の鈴木健二特技監督、『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)の菊地雄一特技監督といった特撮ファンからの信頼厚い面々に加え、『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(1999年)『殺し屋1』(2001年)といったバイオレンス色の強い映画作品で有名な三池崇史監督など、これまで「特撮ヒーロー」作品に関わったことのない実力派までもが参入し、話題を集めた。あらゆる攻撃を吸収して無限に強くなる完全生命体イフが登場する第15話「第三番惑星の奇跡」、そして宇宙化猫タマ、ミケ、クロが人々の記憶を奪う第16話「わたしはだあれ?」という2本の三池監督作品は『マックス』屈指の傑作として、後々までファンの間で語り継がれている。
脚本家も同じく、「特撮ヒーロー」作品の経験がある梶研吾氏、小中千昭氏、小林雄次氏、川上英幸氏、林壮太郎氏、太田愛氏らに加え、ミステリ作家としていくつものヒットシリーズを持つ大倉崇裕氏、アニメ作品を多く手がけている黒田洋介氏、後に「平成仮面ライダーシリーズ」にも関わる福田卓郎氏、中島かずき氏らもウルトラマンシリーズに初参加し、空想の幅を拡げたバラエティ豊かな作品を作り出した。
そして、2004年に深夜枠で放送(テレビ東京系)された『ウルトラQ dark fantasy』に引き続き、かつてウルトラマンシリーズで活躍した"レジェンド"たちがぞくぞく参加し、意欲的なエピソードを創造しているのも重要である。
『ウルトラQ dark fantasy』でも「踊るガラゴン」「小町」「ウニトローダの恩返し」などの傑作脚本を手がけた上原正三氏は、第13話「ゼットンの娘」第14話「恋するキングジョー」で人気怪獣ゼットン、キングジョーを大暴れさせているほか、ウルトラマンマックスの仲間・ウルトラマンゼノンと新武器・マックスギャラクシーの登場をも描いた。そして第22話「胡蝶の夢」第24話「狙われない街」では鬼才・実相寺昭雄監督が登板し、独自の映像感覚で迫る"実相寺ワールド"を貫き通した。脚本家・小説家として多くのヒット作を送り出した藤川桂介氏も、第35話「M32星雲のアダムとイブ」のシナリオを手がけている。
飯島敏宏監督は脚本(千束北男)も兼任し、もっとも愛着のあるキャラクター・バルタン星人を迎えた前後編の第33話「ようこそ!地球へ前編 バルタン星の科学」第34話「ようこそ!地球へ後編 さらば!バルタン星人」を作り上げた。ウルトラマンマックスとの対決シーンでは、ダークバルタンがいきなり空を覆い尽くすほど無数に"分身"して襲いかかるといった斬新なイメージを具現化。数えきれないほど増殖したバルタンを見てもまったく動じず、マックスも自分の身体を同じ数だけ分身させ、たちまちバルタン軍団VSマックス軍団の戦いへと持ち込むあたり、「科特隊宇宙へ」でのウルトラマンとバルタン星人(二代目)とのバトルを思い出させてくれる。あのときのウルトラマンも、スペシウム光線をはね返すバルタン星人に対してまったくあわてることなく、素早く新技「ウルトラスラッシュ」を放ってバルタンを真っ二つに切り裂いてしまった。映像表現やキャラクター描写にどんどん新しいものを投入したとしても、ヒーロー・ウルトラマンの持つ基本的な性格やスタイルは崩さないという、飯島監督のゆるぎない信念がこうしたところからもうかがえる。
怪獣・怪事件をドラマの中心に据えた正統"ウルトラ"エピソードや、怪獣や宇宙人の行動を通じて「人間の愚かさ・醜さ」を描いたメッセージ性の強いエピソード、少年の健やかな成長を育む明朗なエピソード、徹底的にコミカルな方向に振り切ったエピソード、怪獣出現の根源的な謎に切りこんだエピソード(第29話)など、バラエティ豊かな単発エピソードがそれぞれの「輝き」を放っている『ウルトラマンマックス』。放送から15年という節目を迎えた今、レジェンドから若手まで、実に多くの"才能"が結集して作り出された珠玉の作品の数々を、あらためて1話ずつ楽しんでみたい。
(C)円谷プロ