撮影性能は着実な進化が見られるものの…
実際に使ってみると、まずはAFの動作に処理能力の向上が感じられる。なかでも変化が明らかなのは、「C-AF+測距点自動選択」時の被写体捕捉能力の向上だ。最初のピントのつかみとその後の追従に、Mark IIを超えるスムースさと正確性が備わった。ううむ、ここも心動かされる進化だ。
一方、Mark IIでは実現されず、E-M1Xでかろうじてカタチになっていた「C-AF連写+測距点自動選択+連写中の画角変更」への対応は、Mark II超えの動作(けっこう頑張っている)を見せつつも、あともう一歩のツメが欲しいところ。測距点を1点固定にしていれば、連写中に画角を変えてもAFはほぼ問題なく追従してくれるので、実用性にはさほどの影響を与えない部分ではあるのだけど、ここが完璧にクリアされればOM-Dの万能性は確実に底上げされると個人的には感じている。
あと、Mark IIで見られることのある「暗所での偽合焦」が減っているようにも感じた。これは、カメラが自信満々でピントを合わせてくれたにもかかわらず、結果は微妙にピンボケ…という現象で、Mark IIと同じ処理系を持つと思われるE-M5 Mark IIIでも同様に見られることを確認。原因が「暗さ」にあるのか「低コントラスト」にあるのかはつかめておらず、ISO1600以上の高感度時に顕著であるようにも感じるのだが、ともあれ暗所での高感度撮影が多いワタシには相当の注意を要するデンジャラスポイントだった。それが減っている(少なくとも今回の試用ではそのように感じられた)のは正直、かなり羨ましい。
手ぶれ補正も、レンズとの協調制御における補正幅がMark IIの6.5段からE-M1Xと同等の7.5段に向上しているワケで…いや、こりゃやっぱりハートにブッ刺さりますわ!
ただ、ぶっちゃけ画質は据え置きですな。強いていえば、高感度画質が少し良くなっているような気がしないでもないけれど、たぶんプラセボに近い印象だと思う。画質全般に関しては、高感度時を含めMark IIのときから十分な実力を備えていた(だからこそ安心して仕事にも使っている)ことを前提としつつ、これ以上の向上を求めるなら新センサーの採用が必要になりそうだ。限られたリソースの中で目一杯やってくれていることはとてもよく分かるので、現状はこれでいいと思っているけれど、「次」の一手をどうするかはなかなか難しい問題になるんじゃないだろうか。