2019年3月から2020年3月まで、テレビ朝日系にて全48話を放送したスーパー戦隊シリーズ第43作『騎士竜戦隊リュウソウジャー』は、古来より人々を守る使命を帯びた「リュウソウ族」の末裔たちと凶悪な戦闘民族ドルイドンとの激闘を描いた物語である。"強さ"の象徴「恐竜」に"正しさ"の象徴「騎士」を組み合わせたヒーローキャラクターが志向されたリュウソウジャーは、武装した恐竜=「騎士竜」たちと力を合わせ、苦難続きの戦いを乗り越えて「勝利」をつかみとることに成功した。

長田成哉(おさだ・せいや)。1989年生まれ、兵庫県出身。2009年のテレビドラマ『ハンサム★スーツ』で俳優デビュー。NHK連続テレビ小説『てっぱん』(2010年)の滝沢薫役や、『科捜研の女』第11~16シーズン(2011~2016年)のレギュラー・相馬涼など、多数の映画・テレビドラマに出演し、強い印象を残している。『動物戦隊ジュウオウジャー』(2016年)第14話にもゲスト出演した

リュウソウジャーはコウ、メルト、アスナ、トワ、バンバの初期メンバーに、第14話「黄金の騎士」より海のリュウソウ族・カナロが加わって6人となった。さらに第26話「七人目の騎士」からは、かつてコウと同じくマスターレッドのもとで修行をしていたナダが登場する。リュウソウジャーではないものの優れた戦闘能力を備え、コウのよき兄貴分として仲間の輪に加わるナダだったが、自分の"精神の弱さ"を邪悪な鎧「ガイソーグ」につけこまれ、最凶の敵としてリュウソウジャーを襲ったこともあった。

関西弁で陽気にふるまう一方、心の奥底に"暗さ"を秘めているナダの、少々屈折したキャラクターは実に魅力的で、その特徴的な行動は多くのファンに強いインパクトを与えた。コウの捨て身の救出作戦でガイソーグの怨念からナダがついに解放される第32話「憎悪の雨が止む時」と、かけがえのない仲間たちを救うため、ナダがリュウソウジャー7人目の仲間として命を懸けた戦いを行う第33話「新たなる刺客」は、観る者の心に重くのしかかる見ごたえ十分なドラマが描かれ、『リュウソウジャー』全体の中でも特に忘れられないエピソードとなっている。

従来のスーパー戦隊シリーズでは、テレビが最終回を迎えた直後に「ファイナルライブツアー」と称して全国各地をめぐるアクションショーが開催されることになっていたが、今年(2020年)は新型コロナウイルス感染拡大防止のため全公演中止となってしまった。ファイナルライブツアーでは、スペシャルゲストとしてナダを演じる長田成哉の出演がアナウンスされていただけに、公演中止の報せは多くのファンを悲しませた。

しかし「ファイナルライブツアー」の開催を待っていた全国の『リュウソウジャー』ファンの愛と期待に応えるべく、このたび、ドラマCD『「騎士竜戦隊リュウソウジャー ファイナルライブツアー」おはなしCDスペシャルセット』(5,000円/税込)として発売されることが決定した。ここでは「おはなしCD」発売を記念し、リュウソウジャーと共に"ソウルをひとつに"して熱く戦ったガイソーグ/ナダを演じた長田成哉に、『リュウソウジャー』出演で自身が得たものとは何か、そして、ナダという役柄を愛してくれた共演者や大勢のファンたちへの"思いの強さ"を語ってもらった。

――まずは、ファイナルライブツアーの「おはなしCD」が発売され、ツアーを楽しみにしていた方たちに、「音声」という形でファイナルの物語が届けられることについて、率直なご感想をお願いします。

今回のFLTの台本に関しては、TV本編を最後までご覧頂いた皆さんにとって、それぞれの「その後」に対する考察にしっかり寄り添える一つの「答え」ではないかと思っています。幻にならず、素晴らしいストーリーだけでも皆さんにお届け出来て本当に良かったと、素直に思っています。僕たちのセリフを聴いて、楽しみにしてもらっていた分、頭の中で好きなだけ、何公演でも上演してもらえればうれしいなと思っています。

――第26話で『リュウソウジャー』に初めて登場されたときのことを覚えていますか?

剣を背負ってデカいバックルが胸にあり、長い丈の上着を翻しながらリュウソウジャーたちが戦っている所に剣を抜いて加勢しようとする。こんなかっこいい状況、ある?って思ってました(笑)。柏木宏紀監督とは以前からご一緒させてもらっていたので安心感もあり、衣装合わせの時に「なんてカッコいい衣装なんだ」って思いながら試着していたのを憶えてます。僕はエンジニアブーツとか、そういうのに付いている「バックル」が好きで。ナダの衣装の全てが僕の好きな物のツボに入ってました。ただ当時、ガイソーグの正体を知っていたのは現場ではプロデューサーと監督、僕だけだったので、今後どうなっていくのか、どうリアクションされるんだろうと楽しみにしながら撮影に参加したのを思い出します。

――ナダは関西弁でなんでも思ったことを言うタイプのキャラでしたが、長田さん自身と重なる部分はありますか?

ナダに関しては今までやらせてもらってきた役の中で最も「役作りが不要」だったキャラクターだったと思います。僕もわりと初対面の人に自分から話しかけていくタイプだったり、似ている所が沢山ありました。最も似ていた所は「抱え込んでしまう所」ですかね。ナダと同じであまり人に相談しない所かなと。自分の事は自分で解決したいし、出来なきゃいけないと思っている所が自分にもわりとありまして(笑)。以前京都で何気なく手相を見てもらった時に「あなたの中には、誰にも理解されない、理解してもらうつもりもない"狂気"のようなものがあったりしませんか?」と言われた時に、ドキッとしたことがあり、まさに「ナダ」のための感情だったのかも知れない。と今なら思えます。

――ガイソーグに心を操られ、コウを襲ったりする「豹変」の芝居で難しかったところは?

これに関しては、全く難しくなかったです(笑)。受け取って、感じた事をそのままやったというか。「選ばれし者」「キラキラしている」この二つがあれば、充分長田のダークサイドにガンガン刺さりました。普段抑え込んでいるものを、思い切り出してやろう。そんな気分で現場に臨んだし、撮影日は猛暑で良い感じに汗が出て、より呪いに精神を揺さぶられてる雰囲気も出て良かったなと。