トーンモバイルは6月7日、休校期間中のスマホ利用データを元に、本格的な学校再開に向けて子どもたちのスマホ利用を考える「親子で学べる無料オンラインセミナー」を開催した。
MVNOであるトーンモバイルは、誰もが安心して使えるスマホを目指し、AIを活用した見守り・利用状況レポートなど独自の「安心安全」のための機能を提供している。同社では、その見守り機能「TONEファミリー」の、見守り対象となっているスマホの利用データ(利用者の同意を得て提供されたもの)を元に2月から5月までの利用状況を調査。今回のセミナーは、その調査結果から今後に向けた対応を考えることがテーマになっている。
ファシリテーターは、同社スマホあんしんラボ 所長 工藤陽介さん、パネリストは兵庫県立大学 環境人間学部 准教授 竹内和雄さん、同大3年生でソーシャルメディア研究会所属の松田朋恵さん。ソーシャルメディア研究会は、子どもとネットの関わりについて考え、県内外の学校への出前授業や「ユニセフ・スマホサミット」への協力などの活動を行っており、その経験を活かした意見交換が行われた。
ネット利用の現状とは? 問題意識を共有
休校・外出自粛の状況が続く間、インターネットは生活手段としての存在感を強める一方、長時間利用などのデメリットも大きくなっている。竹内さんはネット利用には「光と影」がある、として3つのポイントを挙げた。
ひとつは、インターネット利用の低年齢化だ。親がスマホユーザーであることなどから、未就学児のインターネット利用率は6歳66%、5歳68%、4歳56%と半数を大きく上回っている(平成30年)。低年齢化が以前から進行していたが、外出自粛が続いた今年は一層の加速が推測される。
竹内さんは、子育てにスマホが良いか悪いかを議論するのではなく、すでにこれだけ使われている現状を認識してほしいと訴えた。
次に、文部科学省による「学校への携帯電話持ち込み禁止見直し」議論や、WHOが「ゲーム障害」を国際疾病として認定したことなどを挙げ、ネットの問題が一部の人ではなく「社会全体の問題」になっていることを指摘。
小学生から当たり前にスマホを使う子どもが多い現在、ネットのルールは交通ルールのように幼少期から子どもに教える必要があり、予防接種のように大事に至ることを防ぐための対策が求められると述べた。
最後に、ネット上の誹謗中傷に対して発信者特定手続きの簡素化・厳罰化といった制度づくりを検討する政府の動きや、すでに実施されている諸外国の法規制を紹介。また逆に、規制を違憲としたり、警察が顔認証技術を使うことを禁止した例を挙げ、「法規制と表現の自由のバランス」を考えていくことの必要性を提示した。
これらの観点を踏まえ、トーンモバイルユーザーの利用状況を元に3つのテーマでディスカッションが行われた。
テーマ1:ジャンル別アプリの長時間利用とその理由
最初は、スマホの長時間利用に関するデータ。休校・外出自粛期間中の、マンガ・ゲーム・動画(代表的アプリ)の利用時間を調べたものだ。
データによると、マンガ(LINEマンガ)がほぼ横ばいなのに対し、動画(YouTube・TikTok)は大きく伸びている。これについて松田さんは、マンガはサービス設計上(無料で)1日に読める話数が限られているのに対し、動画はそうした制限がないため長時間見続けてしまうのではないかと指摘。竹内さんの調査でも、マンガ・ゲームの上限(ライフ)を使い切り、再び利用できるまではYouTubeを見る、といったローテーションで1日を過ごしている例が確認されている。
一方、あまり変化がなかったゲーム(パズドラ・モンスト)については、現在はボイスチャットを使って仲間と共闘する「荒野行動」「フォートナイト」や、ゲーム機でのオンライン対応ゲームなども人気があり、単純にこのデータだけで「伸びていない」と結論づけることはできないとした。
SNSについては、LINEとTwitterで伸び率に差が見られた。この理由について松田さんは「Twitterは検索や情報収集。友達とのコミュニケーションはLINE」という使い分けが理由ではないかと推測。LINEのグループトークで飲み会をする、恋人と一日中LINE電話をつなぎっぱなしにする、友達とビデオ通話をつないだままお互い黙々と勉強をする、といった事例が挙げられ、オンラインのコミュニケーションが「連絡を取る」ではなく「存在を感じる」ことを目的としている様子がうかがえた。