浅野温子

“衝撃的な刑事ドラマ”で思い出すのが、浅野温子主演『沙粧妙子-最後の事件-』(95年、フジテレビ)だ。

かつてプロファイルチームに在籍していた主人公の刑事・沙粧妙子が、次々起こる連続猟奇殺人事件を追っていくというサイコサスペンス。グロテスクな殺人描写や、殺人犯と同化してしまう精神世界、大量の薬を服用することで安定する主人公など、今振り返って見るとなぜこんなショッキングなドラマがゴールデンタイム(水曜21時枠)で放送できたのかと驚かされる。

浅野の魅力が爆発しており、美しくも病的で圧倒的な存在感を放つ女性刑事を見事に演じているほか、佐野史郎や蟹江敬三、升毅など、脇を固める渋い男性陣の好演も光る。また大ブレイクする以前の香取慎吾が猟奇殺人犯として登場し、ミステリアスな演技の才能を見せていたり、『ビーチボーイズ』(97年)前の反町隆史や広末涼子など、若かりし頃のスターが短いシーンながら出演している点にも注目だ。

今では定番ともいえる事件の“プロファイル”だが、25年前の作品とは思えないほど考察が深く、全く見劣りしない。SFチックで哲学的な要素も含んだ難しい物語でもあるが、続きが気になるエンタメ性とのバランスが絶妙で、夢中になって一気に見ることができる。

河毛俊作監督が施したハードボイルドな演出や、岩代太郎氏が手がけたスタイリッシュな劇伴、ロッド・スチュワートの主題歌など、ともすればチープになってしまう物語を大人が見てもカッコいい世界観に構築できているのも魅力だ。

配信はされておらず、放送から15年経った2010年にDVD化されているが、劇中音楽など権利問題で変更されている部分もある。当時のチャレンジ精神の灯を消さないためという意味も込めて、ぜひ地上波でオリジナル版を再放送してほしい作品だ。

■ツッコミ要素も満載…『打撃天使ルリ』

菊川怜

正確には刑事ドラマではないのだが、警察との“正義の攻防”を繰り広げる、菊川怜主演『打撃天使ルリ』(08年、テレビ朝日)も隠れた名作としておすすめしたい。山本康人原作の同名漫画を実写化した本作は、一撃必殺の拳を繰り出せる“打撃人類”の主人公・ルリが、凶悪犯を成敗していくアクションドラマだ。

決めゼリフが「さわるな、外道(げどう)!」「悪い奴が、多すぎる!」で、「ダーシャー!」と叫びながら一撃パンチで凶悪犯をぶっ飛ばし、その吹き飛ばされる様を人形で再現するなど、かなりツッコミ要素満載な描写。それに加え、凶悪犯が「コンクリート殺人」に「警官殺し」とハード過ぎる内容や、決して器用ではないが迫力満点の菊川のアクション、池畑慎之介のオールバックで髭面のビジュアルなど、珍妙な要素がいくつも混ざり合ったことで味わい深い作品になっている。

これから放送予定の木村拓哉主演『BG~身辺警護人~』のチーフ監督である常廣丈太氏のセンスも冴え渡ったことで、今まで見たことのない新感覚の超意欲作に仕上がっている。

導入部分は勧善懲悪の痛快アクションドラマだが、凶悪犯を一撃パンチで退治したことが警察では「連続殴打事件」として捜査が進み、一体何が正義なのか…主人公の過去や刑事とのロマンスも並行して描きながらディープな世界観を帯びていく流れが見逃せない。

描写がショッキングなので再放送は難しいのかもしれないが、配信もされておらず、どこかで改めて楽しませてほしい作品だ。