新世代のデバイスで画質も機能も向上
続いて、画質を左右するキーデバイスを見てみましょう。イメージセンサーはEOS Kiss X9i同じ有効2410万画素のCMOSセンサーですが、画像処理エンジンは新たにDIGIC 8を採用しています。最高コマ速が先代の6コマ/秒から7コマ/秒にアップし、スポーツなど動体のシーケンス撮影では密度の高い撮影が可能になったほか、3コマの撮影を行うAEB撮影でも速やかに撮影が完了するようになりました。同時に、これまで以上にシャッターのキレもよくなり、軽快に撮影が楽しめるように思えます。
画質向上を図るデジタルレンズオプティマイザに対応したことも、DIGIC 8の搭載が寄与しています。同機能は、色のにじみなどを抑える色収差補正と、絞り込んだときに発生する解像感の低下を抑える回折補正を撮影した画像に施すもの。以前は、RAW画像を「Digital Photo Professional」で現像したときのみこの機能を反映できましたが、EOS Kiss X10iでは撮影時に、しかもJPEGフォーマットにも施せ、どの絞り値でもシャープで色のにじみのない画像が得られます。コマ速などの低下もなく、積極的に利用できます。
画質に関する部分では、「C-RAW」の選択が可能になったのも注目できます。通常のRAWと同じ画素数ながら、データサイズが従来の2/3ほどに抑えられるのがポイント。画質が低下すると言われていますが、私が試した限りでは通常のRAWと明確な違いは見つけられませんでした。RAWで撮影する機会の多い人は、注目のフォーマットといえます。
一眼レフの魅力といえば、鮮明な表示の光学ファインダーを搭載していることでしょう。本モデルも、簡略型のペンタダハミラーながら、一眼レフらしい明るい光学ファインダーを搭載しています。表示面積は小さめでピントの山もつかみづらいのですが、多くのユーザーがAFで撮影を行うであろうことを考えると、さほど問題にならないでしょう。
光学ファインダー使用時のAF測距点は45点で、全点が精度の高いクロスセンサーとしています。さらに驚くべきは、光学ファインダー使用時でも顔認識AFが可能なこと。測距点は画面中央に集中していますが、人がいれば顔を認識してピントを合わせてくれます。ファミリーユースで使われることの多いカメラですので、光学ファインダー撮影時の顔認識AF搭載は魅力です。加えて、光学ファインダー使用時の測光センサーも改良され、より被写体に適した露出が得られるのも特筆できます。
背面の液晶モニターは3インチ104万ドット。これまでと同様にバリアングル式なので、ローアングル撮影やハイアングル撮影も容易です。もちろん、ライブビュー撮影も可能で、キヤノンご自慢のデュアルピクセルCMOS AFでスムーズにピント合わせをしてくれます。AFエリアは画面のほとんどをカバーしていますが、瞳AFの搭載は残念ながら見送られました。顔認識を搭載しているのでそれで我慢してね、ということかもしれませんが、瞳AFがあれば人物撮影でより精度の高いピント合わせができますので、今後に期待したいところです。
動画は、デジタル一眼レフのEOS Kissでは初めて4K画質の撮影が可能になりました。ただ、フレームレートは最大24pに抑えられ、運動会のような動く被写体を撮ると滑らかさに欠けることがあります。動きのある被写体の撮影には、60pのフルHDのほうが向きそうです。従来同様、電子式の手ブレ補正機能も継続して搭載されています。
これまでのEOS Kissデジタルと同様、スキのない作りに仕上がっているEOS Kiss X10i、一眼レフのエントリーモデルとして、性能的にも機能的にもまったく不足を感じるところがありません。ミラーレスの進化により、デジタル一眼レフの存在意義が問われていますが、改めて見直してみると一眼レフならではのよさを強く感じるカメラです。レンズ交換式カメラはやっぱり一眼レフ!というユーザーは、ぜひ一度手にするとよいでしょう。次回は画像編として作例を紹介いたします。