――名護のキャラクターを作り上げたのは、メインライターの井上敏樹さんだと思います。井上さんとお話をされたことはありますか?
井上さんとは初めのころに一度ご挨拶したきりで、それから1年間、撮影中はまったくお会いすることがなかったんです。『キバ』の打ち上げパーティーでひさびさにお目にかかって「(名護のキャラは)おいしかっただろ?」と言われたのを覚えています(笑)。
――共演者の方々の印象はいかがでしたか。
キバに変身する瀬戸とは、ほとんど年齢が違わないのですが、僕のほうが年上だと思われることが多かったですね。当時20歳だったけれど、25歳くらいに見られていました。瀬戸のほうは年齢より若く見え、かわいいイメージがありました。渡と名護とで、いいバランスができていたように思います。麻生恵役の(柳沢)ななちゃんは、頑張って役を演じているような感じではなく、本当に役のままのイメージでした。ファンガイアには歯が立たないのに、それでも懸命に戦おうとする恵を、自然体で演じていましたね。
――ファンの方からの反響など、名護人気の高まりを実感する出来事はありましたか?
当時はお手紙をよくいただきました。「名護のはっちゃけぶりが楽しかったです」なんて、自分の演技についてのリアクションをもらうことができたのは、とてもうれしかったですね。あとは、名護というキャラクターをスタッフのみなさんが愛してくれて、次はどんなことをするのか、楽しみにしてくれたというのも大きかったかもしれません。
第38話で健吾のコーチをすると決めた名護が「753(なごさん)」Tシャツを着てきたり、「キックしなさい」と書かれたボードを出したりするじゃないですか。ああいった小道具をスタッフさんが用意してくれるんです。そんなところに名護への愛を感じました(笑)。終盤に向かって、過去編も現代編も息詰まる展開が多くなってくる中、みなさんが「名護が出てくるシーンは気持ち的に楽だよね」なんて、"癒し"的な感覚を持ってくれたのがよかったんです。
――名護のキャラクターは井上さんの脚本、加藤さんの演技に加えて、スタッフさんやファンのみなさんからの思いがあってこそ、膨らんでいったと見ていいですね。
そうですね。みなさんと一緒に楽しんで作り上げた役柄だと思います。
――最後に、『仮面ライダーキバ』および名護啓介を今もなお愛しているファンの方々へ、加藤さんからメッセージをお願いします。
12年前、一生懸命取り組んだ仕事が今でも形として残っていて、さらには新しい商品「CSMイクサベルト&イクサライザー」として発売されるとは、とてもありがたいことだと思っています。イクサもそうですが、「仮面ライダー」というコンテンツはいつの時代にも子どもたちの"憧れ"であり、大人に成長してもなお熱中できるものだと実感しました。『キバ』を子どもの頃に観ていた方が成長して人の親となり、お子さんと一緒に再び『キバ』を観返してくれたら、また違った感動があるんじゃないでしょうか。
『キバ』のテーマは過去から現代、未来へと、人の思いが"受け継がれていくこと"ですから、ファンのみなさんがいつまでも『キバ』への思いを持ち続け、新しい世代へと受け継いでほしいと願っています。そうやって『キバ』への思いを残していただければ、いつの日にかまた新しい商品が出てきたり、「名護のその後」みたいな物語が生まれてくるかもしれないですしね(笑)。
僕は今、俳優を辞めて別のジャンルの仕事をしています。そういえば、少し前に仕事先でこんなことがあったんです。打ち合わせで、相手はちょっと厳しそうな方だったのですが、お話をしていくうちに「君、どこかで見たことあるなあ」とおっしゃって。そうしたら、隣の方が「もしかして"名護さん"ですか!?」と気づいてくれたんです。それをきっかけに厳しかった表情がゆるみ、「仮面ライダーか! 昔、息子と一緒によく観ていたよ」なんて、いきなりフランクにお話をしてくださるようになりました(笑)。
仮面ライダーの影響力は本当にすごいですね。仮面ライダーイクサ/名護啓介を演じていた経験は、その後もいろいろな場所で自分の"強み"になっています(笑)。これからも、仮面ライダーに関連することなら快く協力させていただきますので、みなさん『仮面ライダーキバ』および、仮面ライダーイクサ/名護啓介をよろしくお願いします!