「仮面ライダー」シリーズに登場する変身アイテムを大人ファンに向けて高いクオリティで再現する「COMPLETE SELECTION MODIFICATION(CSM)」最新作として、『仮面ライダーキバ』(2008年)に登場した仮面ライダーイクサの変身ベルト「イクサベルト」が商品化され、大きな話題を呼んでいる。
『仮面ライダーキバ』は、2008年1月27日から2009年1月18日まで、全48話が放映された連続テレビドラマである。人間のライフエナジー(生命エネルギー)を捕食する怪物ファンガイアの脅威に立ち向かう戦士たちの姿を描いた本作の大きな特徴は、過去(1986年)と現代(2008年)という2つの時系列をひとつのエピソードの中で並行して描き、親から子へと受け継がれていく戦士の"宿命"や、人間とファンガイアの間をかけめぐる激しい"愛"と"憎しみ"といった、熱きドラマが生み出されていった。
1986年に対ファンガイア民間組織「素晴らしき青空の会」が開発した「イクサシステム」とは、装着するとファンガイアと互角以上に戦えるという戦闘用強化服システムのこと。2008年までに10回ものバージョンアップが繰り返され、最新のイクサシステムは1986年の初期型に比べると性能が格段にアップしている。この最新型イクサシステムを主に装着し、ファンガイアと戦ったのが「素晴らしき青空の会」メンバーの名護啓介である。異常なまでに正義感が強く、悪を徹底的に憎むバウンティハンター(賞金稼ぎ)の名護はイクサの装着者としては申し分がないものの、自分が常に正しいと思い込むあまり、時おりクールさを忘れて"暴走"することがあった。
自信家で高圧的な性格だが、少しコミカルで憎めない"隙"をいくつも持ち合わせる名護は、主人公である仮面ライダーキバ/紅渡(演:瀬戸康史)に匹敵する人気を誇り、作品全体のクオリティを高める役割を担った。ここでは「CSMイクサベルト&イクサライザー」発売を記念して、『仮面ライダーキバ』の「現代編」で活躍した名護啓介役・加藤慶祐にインタビューを敢行。撮影時の思い出や「仮面ライダー」に込めた思いを語ってもらった。
――加藤さんが『仮面ライダーキバ』のキャストオーディションを受けたとき、「平成仮面ライダー」シリーズのことはご存知でしたか?
もちろん知っていました。俳優として活動を始めた当時、すでに「平成仮面ライダー」が若手俳優にとってひとつの"目標"になっていたんです。僕が子どものころは、リアルタイムで仮面ライダーシリーズが放送されていない時期だったので、"若手俳優の登竜門としての仮面ライダー"という印象の方が強かったかもしれません。特に、『仮面ライダーカブト』(2006年)で主役の天道総司を演じた水嶋ヒロさんがカッコよかったですからね。
最初に『仮面ライダー電王』(2007年)のオーディションを受けて、そのときは最終審査まで行きながら残念なことにご縁がありませんでした。仮面ライダーには若い頃しかチャレンジできないと思い、次の『キバ』のオーディションも受けたんです。名護"啓介"という役名は、僕が演じる前にすでに決まっていたそうで、名前が同じであることに運命的なものを感じました(笑)。
――過去編(1986年)、現代編(2008年)と2つの時代を同時に描くストーリー展開が特徴でしたが、現代編キャストチームの加藤さんとしては、過去編のみなさんの動きを意識されましたか?
放送当時から、「現代チーム」「過去チーム」と言われて、比べられることが多かったんです。キャストの立場からすれば同じ作品ですから、ライバル心というようなものはなく、「向こう(過去編)はどんな展開なんだろう」って、楽しみにしていました。キャストとしては、現代も過去もそれぞれドラマが面白く盛り上がってくれればと。それに尽きますよね。
――過去と現代をつなぐキャラクターとして、「素晴らしき青空の会」の会長・嶋護(演:金山一彦)、そして22年間ずっと外見の変わらない喫茶店「カフェ・マル・ダムール」のマスター・木戸明(演:木下ほうか)が登場していました。
いま考えると、すごい俳優さんたちがそろって、強烈な存在感を発揮していますよね。レギュラーキャストでは金山さん、木下さん、そしてゲストにもたくさんのベテラン俳優さんたちが来てくださって、芝居を引き締めてくれたんです。
――印象に残っているスタッフさんのことを教えてください。
名護が初登場した第3話をはじめ、名護が目立つ回を撮られた石田(秀範)監督ですね。現場ではどんな演技をしようか考える前に、とにかく石田監督から怒られないように……と心がけていました(笑)。カメラマンのいのくま(まさお)さんも思い出深い方でした。普段は温和で、とても優しいんですけれど、撮影時間が押してくると、だんだんイライラしてくるのがこちらにも伝わってくるんです。とても仕事に厳しい人でしたね。石田監督、長石(多可男)監督、舞原(賢三)監督と、2話ごとに監督がローテーションで交代し、そのたびに作品の色合いも変化してきます。それが「仮面ライダー」シリーズの特徴なんだと思いました。
――登場したばかりの名護は、悪人を捕まえるバウンティハンターとしての"クールさ""完璧さ"が際立ち、他人に対しても厳しく当たる"近寄りがたい人物"という印象が強かったのですが、悪人を捕まえた証であったはずの"ボタン集め"がエスカレートしていき、悪人捕獲よりもボタン奪取に強くこだわるなど、キャラクターの"濃さ"がどんどん膨らんでいきましたね。自信に満ちた「~~しなさい!」という口調も印象的で、時には生真面目さが暴走して、"笑い"を誘う言動も多くありました。名護を演じていた加藤さんとしては、どんな思いがありましたか。
毎回台本が来るまで名護がどんな状態になるのかが全く読めないので、演じる側としては楽しかったですよ。途中、イクサシステムを健吾(演:熊井幸平)に取られて嫉妬に燃えたり、考え直して健吾のコーチ役になると勝手に決めたり、最後のほうでは目が見えなくなったり……。中盤からの名護はコミカルな立ち位置になっていきますが、『キバ』全体のストーリーがどんどんシリアスになる中で、とても"おいしい"役だと思いました。