革新的なかなり変わった作風の医療ドラマでおすすめしたいのが、相葉雅紀主演『ラストホープ』(13年、フジテレビ)だ。高度先端医療センターを舞台に、他の病院では難しいとさじを投げられてしまった患者に、最後の希望=“ラストホープ”となる治療を施すチームの活躍を描いた作品だ。
「高度先端医療センター」とあって、見たことのない最先端マシンを駆使して治療をするダイナミックな映像や、それぞれのキャラクターの過去映像を断片的に随所に挿入。それらが徐々につながり、壮大で衝撃的な結末を迎えるサスペンスフルな展開など、他の医療ドラマにはない要素がたくさん詰め込められている。
だが、この作品が特に新しかったのは、個性豊かなキャラクターたちが、難しい病気を抱えた患者たちに有効な治療法を模索していく「カンファレンス」のシーンにある。聞いたことのない症例や医療用語を用いて視聴者に分かりやすく解説しながら、それぞれのキャラクターの違いを巧みに見せていく“会話劇”としての面白さを実現しているのだ。
その会話劇を“魅せる”メンバーには、多部未華子、田辺誠一、小池栄子、小日向文世、北村有起哉といった個性派ばかりが並ぶ。現在再放送中の『鍵のかかった部屋』の劇伴も手掛けたKen Arai氏のテクノミュージックに乗せてスピーディに進行していくので、映像や衝撃的な展開も相まってどこかSF的な趣きも感じる、今見てもかなり新しい作風。
複雑な物語展開で、連続性も高いので一気に見たい作品だ。配信もされていないので、ぜひ再放送を希望したい作品の1つとなっている。
■他の追随を許さない縦軸の美しさ…『きらきらひかる』
命を救うのではなく、死体を解剖する“監察医”を描いた作品でおすすめしたいのが、深津絵里主演『きらきらひかる』(98年、フジテレビ)。新人監察医の主人公が、先輩医師や案件に関わる刑事らとともに、原因不明の死体から死因=生きた証(“きらきらひかる”)を導きだすという法医学ドラマだ。
通常の事件解決モノとは演出がやや異なり、毎回主人公を含めた4人の女性キャラクターたちがオシャレなレストランで会話する場面から始まったり、70年代のヒット洋楽「ロックンロール・ララバイ」や、エゴラッピンが歌うサウンドトラックが流れたりなど、カッコいい大人たちが仕事に真摯(しんし)に向き合う姿を描く“お仕事ドラマ”としての一面も強い。
民放では連ドラ単独執筆初だった井上由美子氏(『白い巨塔』や『GOOD LUCK!!』など)が脚本を務め、原作では1人のスーパーウーマンだった主人公を4人の女性キャラに振り分けたり、意外性のあるトリックを深い人情ドラマの中で展開させたりと、この頃から見事な手腕を発揮している。
1話完結のストーリーの中に、物語全体の縦軸が進行するという今では定番のフォーマットで構成されているのだが、その縦軸の美しく壮大な物語は他の追随を許さない。
第1話に提示される“小さな歯の欠片”が、「阪神・淡路大震災」から始まり、最終回では「東ヨーロッパの動乱」や「チェルノブイリの原発事故」へとさかのぼる壮大なもので、それが美しい親子愛の物語に着地するのだ。
今振り返ってみると「震災」や「放射性物質」など、現在の日本とリンクする部分が多く、縦軸の設定が今では成立しないという点は深く考えさせられてしまう作品。『アンナチュラル』(18年、TBS)や、今年続編も控えている『監察医 朝顔』(19・20年、フジ)など、最近でも注目度の高い“法医学ドラマ”だが、その先駆け的存在といってもいいこの作品を今こそ再放送してほしい。
連続ドラマとスペシャル2本が制作されているが、いずれも配信はされておらず、あらためてその作品の面白さを再確認したい。