「国内外、場所を問わず働く」を4年続けて得た4つのいいこと
SAWSが誕生した当時から「国内外、場所を問わず働く」という軸に変わりはない。ただ、制度が始まってもうすぐ4年。その過程でいくつものうれしい変化が生じていた。
1つ目は、社内外のコミュニケーションが、以前より活発かつ濃密になったことだ。いわゆる「暗黙の了解」は激減。対面で話せない分、主語・述語を明確にした会話が徹底され、すべての会議前にはドキュメントを用意する。「あの件は?」といった表現は消えた。社内外でのテレワークが活発化するにつれ、必要になるスキルであるため、とてもいい傾向だという。
2つ目は、場所にとらわれない採用活動ができるようになったことだ。シックス・アパートでは数年前、長野県在住のエンジニアを採用した。東京から北関東エリアに引っ越した人もいる。自分たちの仲間になってほしい人が遠方にいても、仲間が遠方で暮らすようになったとしても、共に働くことができる。
3つ目は、もともとフラットだった組織がさらにフラット化したことだ。各プロジェクトを率いるのはプロジェクトマネージャーで、その中に上下関係は存在しない。全社員が何らかのプロジェクトに入ると一メンバーという扱いになり、全員の役割が業務を透明化するツールで可視化される。組織全体がバーチャルでもフラット化しているのだ。
4つ目は、コストカットができたことだ。オフィス引っ越し直後の半期に限ると、前半期(4~9月)より4000万円のコスト削減(10~3月)を実現。オフィスの規模が小さくなったことで賃料も下がり、光熱費も20~30万/月→2~3万/月と1桁下がった。通勤がないので定期券代も発生しない(※月数回の出社時や外出時の交通費は別途精算)。
テレワークできそうな仕事を家で試すことから始めて
最後に、テレワーク未導入の企業が必要なとき、できる限り迅速にテレワークへと切り替えられるよう、事前に備えておきたいことを尋ねた。
「テレワークに適したツールはたくさんあり、それらを活用すれば、テレワークを始めることはできます。しかし、社員のモチベーションを維持しながら継続するのは、決して簡単なことではありません。自分たちが仕事しやすいスタイルを考えて、より良い手段があれば取り入れていくことが大事です」(古賀氏)
評価が高いツールを導入しさえすれば、テレワークが上手くいくとは限らない。自社の文化にそのツールが合っているか、吟味する必要がある。社員の増減やチームの変化によって、時にアップデートすることも求められるだろう。
「まずはテレワークに向くと考えられる業務を整理することです。そして、これまで会社でやってきた仕事を家で一つひとつやってみて、これは家でできるか、できないか、できる方法はないか探ってみてください。例えば、ハンコをなくす動きが起きたように、“出社しなくても対応可能”な方法がないか、考えてみるのです」
こう語るのは壽氏。まだテレワークを始めていない企業でも、これなら実験的にスタートできるだろう。
「2つ目は会社が社員を信頼し、任せることです。会社から信用されていると実感すると、ひとりのプロフェッショナルとして、自分のやるべきことをやって、会社に貢献しようと自律的に動けるもの。社員がサボるのではないかと疑う前提で、監視アプリなどを用いると逆効果だと思います。社員も“仕事をしているフリをしておけばいいでしょ”と、投げやりな気持ちになってしまいます」
将来的に、仕事も評価も“本質”に近づくと、壽氏は予想しているという。会社に出社さえしていれば仕事をしていると見なされることはなくなり、物理的に離れていても測定可能な、プロセスや活動を含めた仕事内容のアウトプットをもとに評価するしかない。私たち一人ひとりに「自らをマネジメントするスキル」が、これまで以上に求められるようになるのだろう。