PowerEgg Xは「AIカメラ」と称していますが、それはカメラが被写体を検出して自動追尾する機能があるからです。基本的には人物を検出して追尾するだけですが、ジンバルによってカメラが動くため、カメラを固定していても動きのある映像が撮影できます。
搭載されているのは「AI自動トラッキング機能」で、人物や車などの対応する被写体をモニター内に写して画面を長押しして被写体を囲むか、被写体をダブルタッチすると、被写体が緑色の枠で囲まれます。その後は、カメラが自動で追尾してくれます。ジンバル範囲外にでなければ、ジンバルが自動的に被写体を追尾します。
いったん、被写体がジンバルエリアから抜けても、すぐに戻ってくればまた追尾が復活します。少なくとも人物の追尾はかなり良好で、動き回っても比較的正確に追尾してくれます。
離れて撮影するときに便利なのがジェスチャー機能です。手のひらをカメラに向けると、AI自動トラッキング機能が動作し、手のひらを示した人が対象となります。2本指を立てるピースサインだと写真の撮影、円を作るOKマークだと多人数撮影、親指を立てるサムズアップだと録画の開始・終了となります。
遠隔操作はスマートフォンでもできますが、ジェスチャーを使えば簡単に素早く操作ができる点がメリットです。
画質は上々、バッテリー駆動時間も長め
実際に撮影してみると、丸みを帯びたボディは持ちやすく、重さはそれなりですが、522gという重量は4Kビデオカメラとしては重い方ではありません。とはいえ、大きさや重さの割にズームがない点はビデオカメラと比較するとデメリットといえます。35mm判換算27mmという焦点距離は、スマートフォンカメラに比べると狭いのですが、ビデオカメラとしては一般的。ドローンとしてはやや狭いといったところでしょうか。
ズームがないので、どんなシーンにも適しているわけではありませんが、手持ちで歩きながらの撮影でブレが少ない撮影ができます。三脚に設置したPowerEgg Xでも、被写体を追尾したり自分でパンをしたりして撮影できるという点は面白いところです。また、バッテリーが大型のため、AIカメラモードだとバッテリー駆動時間が4時間と長いのもよい点です。
カメラを固定して1人で動画を撮影するような場合、動き回っても追跡してくれるのが嬉しいところ。ジンバルの可動範囲のみですが、「部屋の中を左右に歩き回る」ぐらいはカバーしてくれます。YouTubeで動画を配信するようなシーンにも役立ちそうです。
スマートフォンがマイクになるのも見逃せません。カメラを少し離れて設置しても、手元のスマートフォンがマイクになるため、音声を別撮りする必要もなく、外部マイクも不要です。一般的なYouTubeなどのライブストリーミングができないのは残念なところです。
以上のことから、自宅などで個人で録画をしたい場合に向いたカメラだと感じました。特に、ある程度動きのある動画を撮影する場合、カメラを固定していると画角から外れてしまう失敗を犯しがちですが、このカメラであれば自分を常に追尾してくれるので、画角が外れることなくきちんと撮影してくれます。音声も手元のスマートフォンで録音できるため、安定して音声を記録できます。屋外でも音が小さくなることもないので便利です。
手持ちで気軽に自分撮りをするにはちょっと難しいですが、優秀な手ブレ補正と追尾機能は、今までとは異なる撮影の仕方を実現してくれるカメラです。
ドローンとしての機能は標準的
短時間の試用でしたが、ドローンについても紹介しておきます。クリップベルトや三脚アダプターを装着する部分にプロペラを装着することでドローンとして利用できます。というより、本来はこちらがメインの機能なのですが、ドローンは一般ユーザーだと使えるシーンが限れているため、よほどの人でないと普段使いはできません。
PowerEgg Xは飛行時の重量が862gとなるため、航空法の無人航空機という位置づけになり、専用の飛行エリア以外はおおむね申請が必要です。とはいえ、このクラスを購入する人であれば、こうした点はある程度の把握はしているでしょう。
前方と下方にビジョンシステムと超音波センサーの2種類のセンサーを装備し、屋内外で安定した飛行が可能だとしています。自動復帰や障害物認識機能なども搭載しています。
操縦は、付属のリモートコントローラーにスマートフォンを接続して行います。スマートフォンとの接続ケーブルは、Lightning、USB Type-C、microUSBの3種類が付属。コントローラーではジョイスティックによるドローンの操作に加え、上部にある撮影ボタン短押しで写真撮影、録画ボタンの短押しで動画撮影・停止、ジンバル制御ダイヤルを回すことでジンバルのピッチ角度変更が可能です。モード1とモード2の切り替えが可能で、コントローラーの操作は奇をてらわないものです。
フライトモード切り替えスイッチがあり、高速飛行のP(Professional)モード、安定飛行するN(Normal)モード、ゆっくり飛ぶE(Easy)モードという3種類から選択できます。
ほかには、2秒間長押しするとリターンポイントに自動帰還する「スマートリターン」ボタン、任意の機能を割り当てられるカスタムボタンも配置されています。
カメラのスペックは、当然のようにAIカメラモードと変わりません。ドローンだけのスマート機能では「スマートフォロミー」、サークル旋回、ショートビデオの各機能を搭載します。
スマートフォロミーは、スマートフォンアプリで「AI」アイコンをタッチしてフォロミーを選び、ノーマル/パラレル/スポットライトの3種類から方式を選べます。ノーマルは目標を追従し、パラレルは並行し、スポットライトはカメラを被写体に向けるだけ、というモードです。
ショートビデオは、ドローンが指定の動きをしながら自動撮影するモードで、後方・上空に離れていくドロニー、垂直に上昇するロケット、周辺を回るサークルなどの動作が可能です。
今回は試せていませんが、専用の防水アクセサリーも用意されています。防水保護ケースを装着しての防水モードでは、スマートフライト機能やビジョンシステムが使えなくなり、飛行速度も制限されますが、雨の中での飛行が可能。これにさらにフロートを取り付ければ、水上への離着陸が可能になり、新たな撮影が可能になります。
自撮りが便利でVlogなど普段使いに向く
PowerEgg Xは、普段使いもできるドローンとして、新しい世界観のある製品です。ドローンとして飛ばさないときも、ビデオカメラとして撮影できる点は面白く、ジンバルの性能も高いため、手持ちでもブレのない安定した撮影ができます。
「AIカメラ」としての機能はそう多くはありませんが、人物の追跡が可能なので、固定しても動く被写体を抑えられますし、手持ちでも動き回る子どもを追いかける、といったシーンでも、カメラが自動追尾してくれるのでフレームアウトせずに追うこともできそうです。もちろん、あまりに動きが速すぎたり不規則すぎたりすると難しいものですが、撮影の補助としては便利に使えそうです。
個人的には、ドローンは普段から手軽に使えるカメラではないため、こうしたビデオカメラとしても使える仕組みは便利だと感じました。とはいえ、常にスマートフォンとの接続が必要である点や、ズームがない点は物足りないのも確かです。
メインカメラとしては力不足ですが、固定して動き回るようなシーンでも広い視野で追尾してくれる点は強力です。「自撮りでドローン」という使い方はよく見られますが、実際のところはかなり難しいので、それなら「自撮りにビデオカメラ」という使い方の方が扱いやすく便利です。上空から接近した映像に、固定または手持ちで撮影した映像を加える、そうした、どちらの使い方もできる点が魅力です。Vlog用としても向く製品といえるでしょう。