ドローンでありながらビデオカメラ――そんなユニーク製品「PowerEgg X」をPowerVisionが発売しています。ジャンルとしては「自律式パーソナルAIカメラ」として位置づけられており、独特の製品となっています。
今回、ドローンとしてではなく、AIカメラとしての性能をチェックしました。ドローンとしての機能も十分ですが、それに加えて手持ちで使えるというのがPowerEgg Xのメリット。ドローンの機能を生かしたビデオカメラとして、想像よりも利便性の高い製品となっていました。
ビデオカメラにもドローンにも変身する
PowerEgg Xは、その名の通り独特な卵形のボディを採用したドローンです。卵よりも少し細長いですが、フラットでつるつるのボディはとてもカメラには見えません。下半分のカバーを取り外すとカメラとボディ底面が現れます。ボディ底面にはセンサー類が配備されており、ドローンモードで使用されます。
カメラにもレンズ固定用のカバーがあって、これを取り外すことでカメラの動きがフリーになります。ドローンモード、AIカメラモードのいずれでも取り外して使用します。
上側のカバーは3分の2ほどの位置から取り外せます。半分以上をバッテリーが占めており、取り外すとmicroSDカードスロットが現れます。バッテリー上のボタンを押すとバッテリー残量が表示され、すぐにもう一度長押しすると電源がオンになります。バッテリー残量確認や電源オンは、上カバーを装着した状態でも利用可能です。
PowerEgg Xは卵形のボディですが、AIカメラやドローンとして利用するためには「合体」をしなければなりません。AIカメラモードでは、付属の「クリップベルト」を装着することでハンディカメラとして機能します。ドローンモードでは、同じく付属のプロペラアームを装着します。この付け替えをすることで、卵形のシンプルなボディがビデオカメラやドローンに変身するわけです。
一手間増えるのは確かですが、もともとドローンはプロペラを開くなど多少の準備が必要ですし、普段はAIカメラとして使い、必要に応じてドローンとして使うことが可能というのが特徴的です。ドローンは、飛行可能エリアが限られているなど、常に撮影には使えません。逆に、飛行させないと普段の撮影には使いづらく、AIカメラとして普段使いができるというのはいい工夫です。
以前は、GoProがカメラ部分を取り外してGoProのアクションカメラとしても使えるドローン「KARMA」を販売していました。それに比べると、PowerEgg Xのカメラ部は大型化していますが、普段使いのカメラとして使えるという点がメリットです。
難点は、単独では使いづらい点です。モニターを搭載しないため、撮影にはスマートフォンがどうしても必要となるからです。本体の電源をオンにするとカメラが駆動し、無線機能がオンになります。そこでスマートフォンと無線LANを接続すると、モニターによる撮影や操作が可能になります。
スマートフォンアプリの「Vision+ 2」アプリは、PowerEgg Xのコントロールを行うアプリです。インストールして起動し、Power Egg Xと無線LANで接続することで、カメラの映像を表示してコントロールできるようになります。
ドローンを通常のカメラとして使うメリットは、強力な手ブレ補正を搭載する点。多くのドローンは、上位機種を中心に強力なジンバルを搭載しており、3軸以上の手ブレ補正が可能な製品が多くなっています。PowerEgg Xも3軸対応の手ブレ補正をサポートしており、安定した動画撮影が可能です。スマートフォンやアクションカメラなどの電子式手ブレ補正とは異なり、ジンバルによる物理的な補正なので、画角が狭くなるといったことがないのがメリットです。
ビデオカメラ的なベルトや三脚アダプターも付属
AIカメラモードは、アプリでAIカメラモードにすることで動作します。クリップベルトを装着すれば安定して構えることができるようになりますが、装着自体は必須ではありません。クリップベルトの逆側に三脚用アダプターを装着することで、三脚を利用することも可能で、よく考えられています。
カメラを起動すると、画面上のUIはドローンのUIによく似ています。カメラのライブビューにシャッターボタンが配置されているのは当然ですが、カメラのジンバルを操作するジンバルコントローラーが表示されているのが大きな特徴です。さらにジンバルモードの設定ボタンもあり、遠隔からカメラのパンやチルトが操作できる点が特徴です。
撮影の際は、ジンバルモードを設定することがポイント。追尾、ロック、FPVの3モードがあり、タッチするごとに切り替わります。通常のカメラと同様に動作するのがFPVモードです。本体の動きに合わせてカメラの向きに合わせて撮影ができます。通常のカメラと同じ動きになると考えれば間違いありません。
追尾モードでは、カメラを回転させる方向(ロール)に傾けても水平をキープしようとします。傾きを問わずに水平をキープできるので、普通の撮影では一番使い勝手がいいでしょう。ジンバルの可動範囲を超えると補正はできませんが、撮影時の安定感は高いモードです。
3つ目のロックモードは、ピッチと軸の2種類のロック方式があります。ピッチロックは本体の後部を中心に、カメラ部が上下方向に動いても回転してもカメラ位置をキープする方式です。横にパンするときに、カメラが多少上下にぶれても傾いてもそれを補正して水平パンが可能になります。上下を撮影しようとしてカメラを上に向けても希望の方向を撮影できないので、普段の使い方ではなく、水平パンをしたいときに利用するといいでしょう。
もう一つの3軸ロックは、本体後部を中心にカメラの向きを上下左右に振っても、回転させてもカメラが一方向を向くようにしたものです。個人的にはあまり用途は想像できませんでしたが、カメラを動かしても一定方向を向いてくれるのは面白い効果です。
ジンバルの可動範囲はピッチが-90度~+20度、水平が-55度~+55度となっており、可動範囲を超えての補正はできませんが、通常の撮影であればシーンや撮影意図に応じて切り替えて便利に使えそうです。
ジンバルコントローラーも重要なポイントです。三脚に設置した状態でも、コントローラーによって上下左右方向にカメラを動かすことができるのです。これは普通のカメラにはない機能で、監視カメラのようなイメージだと考えれば分かりやすいでしょう。
撮影モードは、写真、ビデオ、スローモーション、低速度撮影の4種類。ビデオは最大4K60fpsでの撮影が可能。ISO感度、シャッター速度、露出、測光モードを手動で設定するマニュアルモードも搭載します。
写真は、通常撮影に加えてHDR、連写、AEB連写(露出ブラケット)、タイマーのモードがあり、4:3で4,000×3,000ドット(1,200万画素)の撮影が可能。同じくISO感度などの手動設定もできます。
スローモーションはフルHDで120fps、HDで120fpsの2つのモードで撮影が可能。低速度撮影はいわゆるタイムラプス動画で、一定間隔で撮影した写真を合成して動画にするものです。1秒から60秒までの間隔を選び、30秒から1時間までの撮影時間を選択できます。生成される動画は15秒までですが、間隔または撮影時間を選ぶと、撮影できる秒数は自動的に選択されるので、あまり悩まずに撮影できます。
もう一つの特徴は録音機能です。一般的にドローンにはマイクを内蔵せず、音声を録音できません。これに対して、PowerEgg Xは音声の録音機能を搭載しました。本体に録音機能を装備するのではなく、撮影時に使用するスマートフォンのマイクを利用して録音し、それをあとで合成する、という仕組みです。
最近のスマートフォンのマイクは優秀であることに加え、ワイヤレスマイクのように手元にあるスマートフォンに録音できるため、離れた場所からでもキレイな音で録音できるというのが強みです。撮影ボタンに合わせて音声の録音も開始するため、特に音ズレもせずに同期されます。録音は、ビデオモード時に画面上にあるマイクボタンを押すことで動作します。
もともとスマートフォンを使わないと撮影できない仕組みのため、手元のスマートフォンをそのままマイクに使えるというのは面白い工夫です。本来は記録できないドローン撮影中の音声を録音できる点もメリットです。ただし、あくまで手元のスマートフォンなので、上空や離れた場所の音を録音できるわけではありません。ドローンは羽音がうるさいのでマイクは向いていませんが、PowerEgg XはAIカメラモードでもそれなりの動作音がするため、スマートフォンでマイクを離して録音できるのは便利です。