「急ごしらえで対応したわけではありません。2年前あたりから受注処理という仕組み自体を大きく変更するための取り組みを行っていました。大きな問題意識があった中、新たな仕組みを作り上げてきた中で1つの要素としてBCP対策として用意した環境が活かされています」と現在全員がテレワーク状態で業務が進められていることについて、菅野氏は語る。

今はBCP対策が注目されるが、それ以外にも社員だけでなく社外のメンバーや、人間だけでなくロボットという存在までがチームとして同じkintoneというツール上で動けていることもポイントだ。

「誰でも同じ情報基盤の上で働けるのはおもしろいと感じました。それぞれが別の情報で働くのであればうまく動かなかったのではないでしょうか。また、改善は継続し続けることが重要です。私たちも日々改善していますし、ロボットが未対応な部分や購入方法が残っています。業務全体を変えるという大きな変化には覚悟が必要ですが、一旦うまくいったとしても継続して小さな改善を詰みあげて行くことにも別の覚悟が必要になるのではないかと強く感じています」と菅野氏は運用フェーズに入ったシステムとの付き合い方についても語った。

  • 改善して感じたこと

この事例は1年かけて構築したシステムであり、さらに1年の習熟期間を経た事例だ。サイボウズ自身が全社員に対してテレワークを許可する仕組みと制度を整えていたという土壌もある。参考にはなるが、マネできるものではないと感じる人も多いだろう。しかし菅野氏は、一歩を踏み出すためのきっかけにしてほしいと言う。

「すぐに全てを他社で再現するのは簡単ではないことはわかっていますが、1つ1つの改善ポイントはすごく小さな自問自答、改善でもあるんだと思っています。本当に紙でないとダメなのか、データにすると何に困るんだっけ、小さな作業ではあるけれど本当に続けるべきなのか、この部署は本当に在宅にしづらいのか、といったところに疑問を感じて取り組む。一歩一歩の歩幅の大きさに問題はありません。その一歩に至るためのきっかけになれば嬉しいですね」と菅野氏は語った。