サイボウズは4月21日から、社内での事例を挙げてテレワークのノウハウを語るオンラインセミナーシリーズを開始した。Zoomのウェビナー機能を利用したセミナーは、パネラーとモデレーターだけでなく機材担当者や運営スタッフもばらばらの拠点で対応する方法をとっており、運営者側も顔を合わせずに開催できるセミナーとなっている。
第1回目のセミナーは「【営業業務編】受注業務は在宅でできるのか?営業業務部のテレワーク対応」と題して、サイボウズ 営業本部業務部の管野知宗氏が受注処理業務を事例を語り、パネラーをサイボウズ ビジネスマーケティング事業部 kintoneビジネスプロダクトマネージャーの相馬理人氏がつとめた。
新型コロナウィルス対応のためにテレワークが推奨されているが、実際には規則や環境、ツール等の準備が整わないことから在宅では業務が行えない、もしくは実施してみたが問題が発生したという例も多い。しかし中には以前からテレワーク環境の整備に取り組んできたという企業もある。サイボウズもその1つだ。
サイボウズでは2月17日に在宅勤務推奨という通知があり、その後は事態が改善しなかったことから2月28日に原則在宅勤務の通達が行われ、以降はほぼ全ての社員が在宅勤務を行っているという。8人のメンバーを抱える営業業務部の受注処理チームも、その対象だ。
「全員が在宅勤務を行っている状態です。急なことなので不慣れな部分はありましたが現時点では大きな問題もなく業務が行えている状態です」と菅野氏は手応えを語る。我慢をしながら乗り切っているという状態ではなく、何の問題もないと言い切れるのには、すでに2年前から取り組んできた業務効率化がうまくはまったという事情があるという。
大量型番と販売条件で煩雑すぎる受注処理業務
サイボウズといえば、グループウェア製品の「Garoon」や「サイボウズOffice」と、メール共有の「Mailwise」、ビジネスアプリ作成の「kintone」という4つの製品を扱う企業だ。製造業のように少量多品種を扱うものではないため受注業務処理はシンプルなものになりそうに見えるが、実情は非常に複雑な処理を日々行う必要があったという。
「注文書に型番を書いてもらうのですが、その型番は1000種以上存在します。他製品との買い合わせ状況や、すでにお客様が保有している製品の種類、保守期限が過ぎているかどうか、もし過ぎているなら何日以内かといった条件によって受注パターンが細かく変わってくるという特徴があるからです」と菅野氏は説明する。
さらに近年ユーザー数が急増しており、新規契約だけでなくコース変更やユーザー増といった契約内容変更も受注処理を行う必要があるため、現在は月に8000~9000件の処理が必要だという。
また、パートナー経由で販売する関係上、注文形式が統一できないという課題もあった。EDIだけでなくCSVのメール送付やFAXでの発注もあるため、以前はすべての発注を一旦プリントアウトし、紙を見ながら担当者が内容確認や基幹システムへの情報入力を行っていた。また複数箇所にあるデータを突き合わせた購入可否の判断も、担当者が各システムを検索して情報を引き出し、処理する必要があった。
「ボトルネックになっていたのは、チェック作業と登録作業、場所の制限です。チェック作業では1000種以上ある型番と既存の顧客情報、購入条件の達成状況という3種の情報が必要になりますが、3つの情報をばらばらの場所から取得し、頭の中で付き合わせをして判断していました。登録作業は入力を淡々と行うことになりますが、人間が行う以上はどんなベテランでもミスが発生したり入力ルールをうっかり忘れてしまうということは起こります。そして紙を扱うため出社の必要があり、紙がまわってくるまでは準備等もできないなど制約がありました」と菅野氏は語る。
受注増に合わせて人員増も検討されたが、大量に存在する型番の理解や、販売可否を判断するための業務が複雑であるため、教育負荷が大きい。急成長する中、人を順次増やすだけでは対応しきれないという課題感があった。また紙が存在する以上、有事にも出勤できなければ業務が止まってしまうというBCP対応の問題もあったため、改善に向けての取り組みが2018年から開始されていたという。