新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言で、SNS上では、自宅でいかに楽しく過ごすかの「#おうち時間」や、新ドラマの放送延期を受けて様々な過去作が再放送されることで「#再放送希望」というハッシュタグが流行中だ。
そこで、テレビドラマの脚本家や監督などの制作スタッフに精通する「テレビ視聴しつ」室長の大石庸平氏が、外出することを忘れるほど熱中してしまうおすすめのテレビドラマや、再放送してほしい思い出深い作品を紹介する。
今回は、1月期に放送された上白石萌音主演『恋はつづくよどこまでも』(TBS)のヒットで再び注目が集まっている“恋愛ドラマ”。90年代~2000年代までは恋愛ドラマこそが主流の時代で、様々な作品がつくられていた。“恋つづ”は女性視聴者を“キュンキュンさせる”ことに特化した王道作品だったが、一風変わった要素を加えた意欲作や、気分に合わせてセレクトできるような、王道だけではない恋愛ドラマを紹介したい。
■タイムスリップを融合『プロポーズ大作戦』
『テセウスの船』や、先日の一挙再放送も好評だった『JIN-仁-』(いずれもTBS)など、“タイムスリップもの”も最近注目の人気ジャンルだが、そこに恋愛ドラマを融合させた言わばハイブリッド的作品なのが山下智久&長澤まさみW主演『プロポーズ大作戦』(07年、フジテレビ)。
思いを寄せながらも告白できないまま、幼なじみの結婚式に出席することになってしまった青年が、披露宴で紹介される思い出の“スライド写真”が映る過去へとタイムスリップし、彼女を取り戻すため奮闘するファンタジックなラブストーリー。タイムスリップものの醍醐味である時代の大きな変化を味わうダイナミズムはないが、“ちょっと昔に戻って少しだけ過去を変える”という誰にでも経験のある空想の世界観で、高校・大学・社会人と主人公の甘酸っぱい青春時代を追体験できるような作品に仕上がっている。
特に、80年代前半生まれは主人公と同世代で、01年に大ヒットした「小さな恋のうた」(MONGOL800)が随所に流れる演出など、時代が重なる部分も多く、共感度はかなり高くなっているはず。
脚本は、昨年の生田斗真主演『俺の話は長い』(日本テレビ)で向田邦子賞を受賞した金子茂樹氏が担当しており、違う男性と結婚にまで至ってしまった女性の心を、どう自分に振り向かせるのか。タイムスリップという荒唐無稽な手段を用いてはいるが、その過程を丁寧にリアリティをもって描いていくので、恋愛ドラマとしてはもちろん、1人の男性の成長物語としても十分に楽しめる。
また、最終回は視聴者の想像に任せる“曖昧ラスト”だったのだが、それに対してしっかり答えを提示してくれるスペシャルドラマも珠玉の出来となっている。現在配信はなく、連ドラ版は18年に再放送されてはいるが、スペシャルは未放送。どちらもセットで再放送してもらいたい作品だ。
■抱腹絶倒必至の『マンハッタンラブストーリー』
恋愛ドラマはちょっと苦手という方におすすめしたいのが、松岡昌宏主演『マンハッタンラブストーリー』(03年、TBS)。人気脚本家・宮藤官九郎の作品だが、放送時の裏番組が唐沢寿明主演の『白い巨塔』(フジ)だったため、見逃している方も多いのではないだろうか。
このドラマは、純喫茶「マンハッタン」を舞台にそこに集まる人々の恋愛模様を描いたラブコメディで、最大の特徴は登場人物たちのイニシャル、A(赤羽)→B(別所)→C(千倉)と、恋愛の矢印が法則に則って片想いの連鎖をはじめていく部分にある。その“イニシャルの法則”に様々な仕掛けと笑いのエッセンスがたっぷり詰め込まれているので、恋愛ドラマが苦手な人でも笑い転げながら、最後まで楽しめるに作品になっている。
特に中盤に訪れる“どんでん返し”が見どころで、そこからさらにドラマの勢いが加速していく展開が見事。一見、法則だけに則ったギャグ優先の恋愛ドラマのようだが、恋愛のすれ違いや大人同士の悲哀も丁寧に描き込まれているので、恋愛ドラマとしても堪能できる。この作品は現在DVD・VHS版のみなので、ぜひ配信でも楽しみたい。