木村氏が自宅でナレーション収録をできるようにしたのは、スタジオで録音を終えた後に、録り直しが発生するケースが増えたためだという。当初は、現在のような機器がなく、100万円かけて自宅に防音室を建て、録音していたが、「今はiPhone1台とマイク1本あれば、車の中でも完璧にできるようになりました。テクノロジーの進化に感謝ですね」。
レギュラーの『がっちりマンデー!!』のほか、『芸能人格付けチェック』のような長尺の特番でも、番宣や修正の録音は、すでにリモートで実施しているという木村氏。
「レギュラーで一緒にやっているスタッフには、これで大丈夫だと理解していただけますが、まだまだ多くの方には認知されていません」とした上で、「ナレーターが編集室に来て顔を見て読んでもらわないと不安だというのは、理解できます。だから、『本当にそんなことができるの?』と思う人は、何でもいいから短いVTRを送ってください。すぐにナレーションを付けてお返ししますから」と、クオリティの確認にも積極的に応じる姿勢を見せている。
■手法公開で早速番組からオファー
この“リモート録音”の手法を、木村氏がFacebookや自身のYouTubeで公開すると早速反響が集まり、番組のオファーも。その1つが、西日本放送(香川県)の『every.フライデー』(毎週金曜15:50~)内で24日から放送される新コーナー「マドモアゼル 高いところから失礼します」だ。タレントによるロケができないため、ドローンを使った空撮で観光地を巡っていくという企画で、このナレーションを任された。
「自粛の状況を逆手に取った面白い企画で、私にナレーションを頼んでくるだけあって、普通のVTRじゃなくて、かなりトンガっている感じです(笑)。企画書には『ダンディでアラン・ドロンみたいな声』って書いてあったんですが、やっていくうちにどんどんオネエ言葉になっていき、今かなり変なコーナーになっています(笑)」
木村氏のような大御所が、率先してテレワークを導入することの意義は大きい。コロナ禍が収まって平時に戻ったときも、移動時間がなくなって効率的に仕事を行うことが可能となるなど、ナレーター業界の“働き方改革”につながる。また、西日本放送の事例のように、地方局の仕事を移動・宿泊なしで受けられることから、仕事の幅も広がることになりそうだ。
●木村匡也
1965年生まれ、福岡県出身。西南学院大学在学中にFM東京のDJコンテストで優勝し、福岡のラジオ番組でDJデビュー。その後、『進め!電波少年』(日本テレビ)でテレビのナレーターの仕事を始め、『ジャングルTV タモリの法則』(MBS)、『どっちの料理ショー』(読売テレビ)、『めちゃ×2イケてるッ!』『クイズ$ミリオネア』『VVV6』(フジテレビ)などを担当。現在は『がっちりマンデー!!』『さんま・玉緒のお年玉 あんたの夢をかなえたろかスペシャル』(TBS)、『芸能人格付けチェック』(ABCテレビ)などを担当する。