フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、元受刑者を採用する建設会社に密着した『余命3年の社長と刑務所を出た男』の前編が5日に放送され、SNSでは「社長にはほんと頑張ってほしい」「自分も改めなきゃなあと思わされる」など、多くの反響が集まった。あす12日には、この後編「~塀の外の挫折と旅立ち~」が放送される。

取材したのは、普段は主にバラエティ番組を担当する古山洋輔ディレクター(極東電視台)。「ひたすらカメラを回すことを意識していました」と夢中で撮影した密着を通して、何を感じたのか。話を聞いてみた――。

  • 『ザ・ノンフィクション 余命3年の社長と刑務所を出た男』より (C)フジテレビ

    『ザ・ノンフィクション 余命3年の社長と刑務所を出た男』より (C)フジテレビ

■犯罪に走るのは“ちょっとしたきっかけ”

今回撮影したのは、刑期を終えた元受刑者を日本で最も受け入れている「北洋建設」(北海道・札幌市)。同社の小澤輝真社長(45)は、進行性の難病「脊髄小脳変性症」で医師から「余命3年」と告げられており、人の手を借りなければ歩くこともままならず、言葉も不明瞭だ。それでも、全国の刑務所・少年院に自ら出向き、採用活動を続けている。

そんな小澤社長に「自分の私財を投げ売ってまでやっているので、単純にすごいなと思います」と感心する古山氏。「余命宣告されている状態だからこそ、自分が何か残せることをしたいというのがモチベーションになっていると思います。こうしてテレビで取り上げられたり、賞を獲ったりすることが、自分の生きている証になってると思いますね」と、その使命感の背景を推測する。

  • 北洋建設の小澤輝真社長 (C)フジテレビ

だが、今回の密着が決まり、最初は「やっぱり題材がハードだなと思いました。“元受刑者”って普通に考えると怖いと思いますよね」と吐露。

それでも、放送の中で、窃盗で少年院から出所した翔太さんが「前科者っぽいと感じる人がいない」と言うように、古山氏も「実際に接してみると、みんな普通で、いい人たちなんですよ。(窃盗で服役していた)大山さんなんて、缶コーヒーをおごってくれるんです。出所したばかりでお金もないはずなので僕は遠慮したんですけど、『ちょっとトイレ行ってくる』って言って帰ってきたら買ってきてくれて(笑)」と、大きく印象が変わった。

「家庭の問題とか、いろんな環境があって、犯罪に走ってしまうのは本当にちょっとしたきっかけなんだと思います。もちろん、よくない環境で育ってもちゃんと頑張っている人はいますから一概には言えないですが。でも、少なくとも僕が取材した人たちに関しては、本当に普通の人たちでした」

■最も大事なことは「おいしいご飯」

彼らが北洋建設に来て“普通の人”に戻ることができる背景には、何があるのか。古山氏は「仕事があって、社員寮という住む場所があるのはもちろんですけど、やっぱりおいしいご飯が食べられること。これがめちゃくちゃ大事なことだと思いました」と実感を語る。

「ご飯が食べられなかったら、まず生きていくことができないじゃないですか。子どもにだって“子ども食堂”というものがあるくらいですし、やっぱり食べるというのは大事なことなんだと思います。あの寮のご飯はものすごくおいしくて、おかわりも自由なんですよ。僕がずっと撮影していると、おなかが空いてると思われて、そっとお皿を渡してくれるので、いつも食べさせてもらっていました(笑)」