映画『HiGH&LOW』シリーズ4作品が、2020年4月1日から4月12日までの期間限定でYouTubeチャンネルにて無料配信された。

『HiGH&LOW』とは

『HiGH&LOW』とは、EXILEや三代目J SOUL BROTHERSらを擁するLDHのHIROがプロデュースを手掛ける、総合エンタテインメントプロジェクトだ。2015年に放送されたドラマ『HiGH&LOW〜THE STORY OF S.W.O.R.D.〜』を皮切りに、映画、ライブ、コミックス、アプリゲームなど、さまざまな企画が展開されている。

  • 『HiGH&LOW』シリーズ

    『HiGH&LOW』シリーズ

足掛け6年にわたるこの壮大なプロジェクトが爆発的な人気を獲得したのは、2016年夏に公開された映画『HiGH&LOW THE MOVIE』がきっかけだった。ド派手な映像と豊富すぎるキャラクターの魅力に打たれ、さまざまなジャンルのオタクたちがこの作品をきっかけにLDHに注目するようになった。

他作品や他ジャンルでもよく見られる光景だが、何かにハマっているオタクは“布教”に熱心になる。『HiGH&LOW』も例外ではなく、2016年以降「ハイローを観ろ」と周囲にささやかれた人は多いだろう。ただ先述の通り『HiGH&LOW』プロジェクトはなにしろ展開が豊富で、全部を追おうとするとなかなかに大変だ。ドラマの総集編的作品を除く、純粋な劇場版だけでもすでに計6本が公開されている。マーベル・シネマティック・ユニバースほどではないにせよ、ちょっと触れてみたいと思ったところで「何から観たらいいのかわからない」と困惑する人がいることも想像に難くない。

そこにきて、今回の期間限定無料配信だ。配信された4作品は、当の『THE MOVIE』とスピンオフ『HiGH&LOW THE RED RAIN』(2016年10月公開)、本編の続編である『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』(2017年8月公開)『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』(2017年11月公開)。『RED RAIN』はスピンオフの位置付けではあるが、作中の時系列的に『THE MOVIE』と『END OF SKY』の間の出来事を描いており、実質的には本編のひとつと考えていいだろう。

やや乱暴に言い切ってしまうと、この4作品を観れば「ハイロー第1章」を追える。つまり、「周りのオタクがハイローハイロー言うけどなんとなく手を出さないまま来た」という人にとっては、これ以上ない入門編になるものなのだ。

新型コロナウイルスの影響により多くの人が外出自粛を余儀なくされている今、この4作品を無料配信するLDHは「乗り遅れ組も見捨てねぇ」手厚さにあふれている。以下では、ハイロー ファンの視点から、ネタバレを回避しながら各作品の見どころを紹介していこう。合わせて、ネット上で見かける機会の多い『HiGH&LOW』生まれの名台詞や名場面が、どの作品で登場するものなのか、あくまでごく一部だが紹介。「これが元ネタだったのか!」と確認しながら観るのも楽しいかもしれない。

『HiGH&LOW THE MOVIE』

【通称】「ザム」
【名台詞】「どうしちまったんだよ、琥珀さん!」「MUGENは仲間を見捨てねぇ」「無名街はよく燃えますね」「SWORDの祭りは達磨通せや」

SWORD地区と呼ばれる場所をめぐり、ある思惑を持ってそこを手に入れんとする人たちと、それぞれの地元を仕切るチームがぶつかり合う。SWORDの一角である山王連合会を率いるコブラ(岩田剛典)の名台詞「どうしちまったんだよ、琥珀さん!」が放たれるのはこの作品だ。ちなみに、ときどきTwitterで流れている「走るアメ車のボンネットにふんぞり返った法被の男(林遣都)」が観られるのも本作である。

前日譚となる深夜ドラマが2シーズン放送されており、そちらを観てから観賞したほうがもちろん物語の解像度は格段に上がる。しかし、何も知らない、いわゆる“ミリしら”状態で観るとそれはそれで「細かいことはわからないが人がいっぱいいて映像の景気が良い」という高揚を終始味わえる。クライマックスでは100人対500人の大バトルが繰り広げられるが、「撮影現場には600人どころか1,000人いた」という逸話が残されており、そうした過剰さがもたらす圧倒的な映像は一見の価値ありだ。

当然、登場キャラクター数も半端ではなく、パンフレットに掲載されている人物だけで68人にのぼる。だが出番時間の長短はあれど、キャラ付けの濃厚さや演技力、あるいは純粋な存在感などさまざまな要素でもってそれぞれが印象を残し、本プロジェクトのキャッチコピーである「全員主役」に恥じない内容に仕上がっている。

『HiGH&LOW THE RED RAIN』

【通称】「レッレ」
【名台詞】「壁だと思え」「強く、生きろ」

SWORD地区と浅からぬ因縁を持つ雨宮兄弟を主人公に据えたスピンオフ作品。明るい兄・雅貴(TAKAHIRO)とクールな弟・広斗(登坂広臣)という“最強の兄弟”が、消えた長兄・尊龍(斎藤工)を探す。

先述の通り、スピンオフではあるが『ザム』と『ザム2』の間の雨宮兄弟の出来事を描き、これを観ないと以降の本編がつながっていかない。なので、後回しにしないことをおすすめする。というか『ザム』で雨宮兄弟の存在に触れた人は、この作品をスルーできなくなってしまう。何しろとにかく顔がいい。それが複雑な背景を持ち特別な絆で結ばれた兄弟で、「ゼロレンジコンバット」という特殊な格闘術を用いて戦うとくれば、初見であっても登場シーンでは「雨宮兄弟キターーー!」とテンション爆上がりにならざるを得ないのだ。

本作は本編と監督・アクション監督が異なり、ロケ地もフィリピンがメインと、他作品と映像のトーンが一味違うのも魅力。アイスキャンディを用意して観よう。