キーデバイスは第4世代に、レンズは描写性能が向上

キーデバイスを見てみましょう。イメージセンサーは、APS-Cサイズの有効2610万画素X-Trans CMOS 4センサーで、これは「X-Pro3」や「X-T3」と同じもの。画像処理エンジンは「X-Processor 4」で、こちらも同じく第4世代デバイスと呼ばれる最新のものを搭載しています。もちろん、フィルムライクな絵づくりが楽しめるフィルムシミュレーションや粒状感の得られるグレイン・エフェクトなども、X-Pro3などと同様に搭載しています。

  • おなじみのフィルムシミュレーション。今回新しいシミュレーションの公開はなかったが、それでも選ぶのが楽しくなる

  • 青色の再現性をより強調するカラークロームブルーを新たに搭載。空をより青く写したいときなどに重宝する。そのほか、赤、黄、緑など階調の出にくい色に深みを加えるカラークロームエフェクトも搭載している

  • 写真に粒状感を与えるグレイン・エフェクトも搭載。フィルムシミュレーションのACROSやクラシッククロームなどと組み合わせて使うと、雰囲気のある仕上がりになる

  • 瞳AFも搭載。ピントを合わせる目を右目と左目から選べる。人物撮影では大いに活用したい機能だ

X100シリーズは、初代のX100からX100Fまで、4世代にわたってレンズは変化がありませんでした。X100Vも、23mm(35mm判換算で35mm相当)の焦点距離やF2の開放値は変わっていません。ただし、2枚の非球面レンズを使用するなど、レンズ構成は大きく変わりました。おもに、開放絞りでの解像感やコントラストのさらなる向上、画面周辺部の描写の改善などが図られ、より現代的な味付けのレンズとなりました。

  • 搭載するレンズは、焦点距離と開放絞り値こそ従来と同じながら、光学系は新たに設計された。特に、開放絞りでの解像感とコントラストは向上しており、さらに画面周辺部の写りも大きく改善されている

なお、ワイド&テレのコンバージョンレンズやアダプターリングなど、これまでのアクセサリーは使えるので、従来からのX100シリーズのユーザーにはありがたく思えるでしょう。

光学系の変更に合わせて、内蔵NDフィルターも従来の3段分から4段分に効果がアップしています。明るい屋外で絞りを開いて撮影したいときなどに、積極的に活用できます。電子シャッターも搭載していますので、NDフィルターでカバーできない場合はそちらを使うのもありかと思います。ちなみに、シャッター音はフォーカルプレーンと異なり、小さく囁くような音となります。

  • 内蔵NDフィルターの比較作例。内蔵NDフィルターを使用しない場合、作例の条件でもっとも絞りが開けられる値はF 2.8。そのときのシャッター速度は1/1250秒で、この絞り値で出せる最高速度となる

  • NDフィルターを使用すると、絞りを開放のF2としてもシャッター速度は1/160秒に抑えられ、余裕で絞りを開いた撮影が楽しめる

ファインダーの見え具合や使い勝手も改善

特徴的なハイブリッドビューファインダーも進化しています。EVFは0.5型369万ドットに解像度がアップし、コントラストが高くすっきりとした見え具合だと感じます。さらに、これまではEVFに設定すると、アイピースへの接眼状況でファインダー内部の遮光板がその都度出たり入ったりしていたのですが、本モデルでは遮光板は固定され、そのような鬱陶しさがなくなったのも進化した部分といえるでしょう。

  • 従来のモデルでは、EVFに設定するとアイピースへの接眼状況により、その都度遮光板が出たり入ったりして鬱陶しかったが、X100VではEVFに設定すると接眼の有無にかかわらず遮光板が現れ、常時その状態を保つようになった

OVFも光学系の見直しなどが図られ、収差の少ない表示になりました。ファインダー右下に出るスモールウィンドウには、これまでと同じくエレクトニック・レンジファインダーの表示のほか、X100Vでは新たにポストビューの表示が可能になり、より快適な撮影が可能になりました。ライブビューで手軽に撮るのも悪くはありませんが、ファインダーのアイピースに接眼し、EVFもしくはOVFをのぞいて撮るほうが格段に楽しいカメラに仕上がっています。

  • アイピースの光学系も性能が向上しており、収差が少なく、すっきりとした見え具合を誇る。「のぞいて撮る」撮影スタイルを追求したX100Vならではのこだわりといってよいだろう

4K30pの動画撮影も可能になりました。搭載するレンズは単焦点ですので、ズームレンズのような画面の変化は期待できませんが、「ETERNA」などフィルムシミュレーションとの組み合わせで、シネフィルムで撮影したかのような表現が楽しめます。

  • 動画の最高画質は4K30p。フルHDでは60pでの撮影も可能。フィルムシミュレーションを活用すれば、シネマライクな動画撮影が楽しめる

  • 動画撮影ではF-logでの撮影も可能。カラーグレーディングを使用した本格的な映像表現も可能

バッテリーは従来から変更はありませんでしたが、持ちについては向上しており、フル充電からの撮影可能枚数はEVF使用時で350カット、OVFで420カットに高まりました。終日スナップを楽しむような状況だと、やはり予備のバッテリーは必要かと思いますが、それでも余裕のある撮影が楽しめそうです。

  • バッテリーはXシリーズのミラーレスでも使われているNP-W126Sを使用。フル充電からの持ちは、EVF使用時で350カット、OVFで420カットの撮影を可能としている

  • USB-C端子を採用。この端子からの充電も可能になりました

グッと完成度の増したX100V。隙のないつくりとは、まさにこのことだといえます。ライバルとしては、リコーの「GR III」が思い浮かびますが、ファインダーの搭載やフォーカスレバーによるAFエリアの選択など、本機のアドバンテージは大きいように思えます。ミラーレスなど、レンズ交換のできるカメラでさまざまな表現を楽しむのも当然ありですが、固定された画角で作品を作り込んでいくのも面白いかも、と強く思わせてくれるカメラです。

続く本レビュー記事の後編では実写作例をまじえながら、X100Vの絵づくりを語っていきます