富士フイルムのレンズ一体型デジタルカメラ「FUJIFILM X100V」(以下、「X100V」)の販売が始まって1カ月ほどが経ちました。口コミサイトなどでは満点に近い高評価を獲得しており、購入した人の満足度はかなり高いようです。歴代のXシリーズを使ってきた大浦カメラマンに、X100Vの実力をレビューしてもらいました。まずは機能編です。

  • 伝統のレンジファインダーカメラ風のスタイルを継承するレンズ一体型モデル「FUJIFILM X100V」

    伝統のスタイルを継承するレンズ一体型モデル「FUJIFILM X100V」。レンズが新設計になったり、ミラーレス「X-Pro3」と同等の高品位なファインダーを搭載するなど、さまざまな改良が加えられた。実売価格は税込み18万円前後で、写真のシルバーのほかブラックも選べる

コンセプトを継承するシリーズの第5世代モデル

フィルムライクな絵づくりに高品質なレンズ、そしてコンパクトなボディで人気のカメラが、富士フイルムの「FUJIFILM X」シリーズです。ミラーレスのラインアップが充実しているXシリーズですが、Xシリーズの最初のモデルは2011年3月発売のレンズ一体型モデル「X100」でした。

X100は、光学ファインダー(OVF)と電子ビューファインダー(EVF)を一体化したハイブリッドビューファインダーと、35mm判換算で35mm相当の画角を持つ単焦点レンズをつくりのよいボディに納め、その後の後継モデルも含め根強い人気を誇っています。今回紹介する「X100V」は、シリーズの5世代目となるモデルです。

ちなみに、2世代目以降のモデルからは型番の末尾にアルファベットの文字が付けられています。2世代目モデル「X100S」のSはSecondから、3世代目モデル「X100T」のTはThirdから、4世代目モデル「X100F」のFはFourthの頭文字から来ています。第5世代のX100Vは、そのままいくとFifthとなって4世代目と同じ“X100F”となってしまうため、ローマ数字の「V」を使って5世代目であることを表しています。

デザインを磨き上げ、操作性は大きく変わった

それでは、X100Vの外観を見ていきましょう。私がまず注目したのは、トップカバーのエッジがシャープになったこと。指が切れる…とまではいいませんが、そのぐらい角の造形が鋭くなっています。また、ホットシューのレールがカメラ上面と面一(ツライチ)になったほか、トップカバー前面の金属部分の面積が従来よりも広く、さらにストロボの発光部がより細いものになるなど、全体にソリッド感のある仕上げになりました。

  • エッジ部がシャープになったトップカバー。ボトムカバーも含め、マテリアルにはアルミニウムを使用。表面にはブラスト処理を施すとともに、アルマイト処理による着色が施され、これまで以上に洗練された雰囲気を醸し出している

  • アクセサリーシューのレールもトップカバーと面一(つらいち)としており、さらにホットシューカバーもX100V専用とする。このカメラに対する物欲が目を醒ます部分のひとつだ

  • ストロボ発光部も薄くなり、よりすっきりとした感じとしている。画面左に見えるOVF/EVF切り替えレバーの形状は、もう少しスマートなものにならなかったのだろうか

X100シリーズは、世代を重ねるごとにボディシェイプの洗練度合いが少しずつ高まってきましたが、本機は一気に磨きがかかったように感じます。なお、アダプターリングを介してのプロテクトフィルターの装着が条件となりますが、ボディがX100シリーズ初の防塵防滴構造となったのはうれしく思える部分です。

カメラの背面に目を向けると、いわゆる十字ボタンがなくなってすっきりとしました。Xシリーズのミラーレス「X-E3」や中判ミラーレス「GFX 50R」などと同じく、メニューの設定などもジョイスティックタイプのフォーカスレバーで操作する仕組みです。操作に戸惑ったり混乱するのではないかと思う方もいらっしゃると思いますが、今回X100Vを使った限りはすぐに慣れましたので、心配されなくてよいでしょう。

  • 十字ボタンが廃止になり、カメラ背面部もすっきりとした感じに。メニューの設定などはフォーカスレバーで行うが、操作に迷うようなことは少ないだろう。再生ボタンの表示が三角形のものから、「PLAY」の表記に変わっている

  • シャッタースピードダイヤル内にISOダイヤルを内蔵。ISO感度の設定時には、写真のようにシャッタースピードダイヤルの外周部を引き上げた状態に固定でき、設定操作を容易としている

従来モデルとの外観上の大きな違いのもうひとつは、背面の液晶モニターがチルト式になったこと。上方向と下方向に可動し、残念ながら「X-T3」などのように縦位置用として左方向に開くことはできませんが、ハイ&ローアングル撮影で重宝することは間違いありません。ちなみに、液晶モニターはタッチパネル式で、3インチ162万ドットと不足のないスペックです。

  • チルト式となった液晶モニター。ハイアングルやローアングルでの撮影を容易としている。チルト式としながらも、これまでと同じボディの厚さを実現したことと、ボトムカバーの液晶モニターと接する部分が欠けていないのは開発者の自慢とのこと