これに歩調を合わせる形で、民放テレビ各局も社内指標を「世帯」から「個人」に変更する。これまで対外的には、高視聴率番組などを「世帯」で発表していたが、今後の対応は局によって分かれる模様だ。

個人視聴率は世帯視聴率に比べると、額面上どうしても数字が落ちてしまうため、混乱を招かないよう、テレビ朝日、TBS、フジテレビは、個人・世帯両方の数字を発表する方針。テレビ東京は、引き続き世帯での発表を基本とする。

一方で、他局に先んじて19年1月から社内指標を個人に移行している日本テレビは、個人を中心に発表。NHKは30日時点で「検討中ですが、個人視聴率は重要な指標であると認識しております。様子を見ながら総合的に判断していきたいと思います」とした。

ビデオリサーチは「個人ベースでどれくらい番組が見られていたかというのが正確に分かると、多面的にデータが分析できるので、番組の編成や制作の面で活用いただける幅が広がるのではないか」と見ているが、早速この4月改編で動きが出ているようだ。

『名医のTHE太鼓判!』(TBS)、『名医とつながる!たけしの家庭の医学』(テレビ朝日、ABCテレビ制作)と、年配層の支持が高い健康系番組が2つ同時に終了し、広告主が重視する若年層、ファミリー層を意識した『有吉の壁』(日本テレビ)、『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)といった番組がスタートするなど、個人視聴率の本格導入に伴う改編と見られている。

視聴率調査は1962年に開始して以来、新たな測定装置の導入やエリアの拡大、タイムシフト視聴状況の計測など、進化を遂げてきたが、その中でも「今回のリニューアルは、97年の関東地区における機械式個人視聴率調査の導入以上のインパクト」だという。

今後は、TVerやGYAO!など動画配信における放送局由来のコンテンツへの対応も検討しており、「テレビの視聴をできるだけ正確に示していくため、視聴環境が変わるのであれば調査設計も必要に応じて変え、テレビメディアの価値を正しく伝えていく」としている。

■ラジオ調査もかつてないリニューアル

実は、このテレビ視聴率のリニューアルと同じタイミングで、ラジオ個人聴取率調査においても大きな変革が起こる。

紙の調査票に記入するという従来の調査方法を、首都圏・関西圏・中京圏で4月から順次、すべてWeb上で入力する手法に変更。これにより、訪問して調査票を回収したり回答内容を入力する手間が省け、効率がよくなる。

また、調査対象エリアを拡大し、目標有効サンプル数も3地区それぞれ3,000だったのが、首都圏・中京圏が5,000に、関西圏が4,000に増加し、データの精度も向上する。

これに加え、上記の聴取率調査データと、インターネットでラジオが聴ける「radiko」のデータを使い、日々のラジオ聴取状況を推計した「ラジオ365データ」の提供を4月1日からスタート。従来の聴取率は、首都圏で1週間×年6回の調査だが、ラジオ関係者はそれ以外の期間も、聴取状況を毎日確認することが可能となる。

「テレビもインターネットも毎日のデータがあるのに、ラジオは年6週間分のデータでした。ラジオ365データは、その欠落していた期間を埋めることになる」という、今回の大きな変化により、今後は、各局で実施している聴取率調査週間の“スペシャルウィーク”のあり方も、変わっていくのかもしれない。

1979年に始まったラジオの聴取率調査は、「当初はノートサイズだった調査票が、外出先でもすぐ記入できるように携帯できる手帳サイズに小型化されるという変化はありましたが、今後はWeb調査になり、対象者の獲得方法も変わる。ここまで調査手法が変わるのは、初めてのことです」と、こちらも業界にとって大きなインパクトとなっている。