●“プロの親"に見守られていた、夢を追いかけていた時期

――本編後、アンコールはドッキリ続きでしたね。まず「終わらない夢」を歌いだそうとした瞬間「HAPPY BIRTHDAY」が演奏されて、崩れ落ちていました。

しかもそれに合わせてピニャータ(※アメリカや中南米で使われるくす玉。中にお菓子などプレゼントを詰め、祝われる人が割って中身を受け取る)が出てきて!

――アルバムのインタビューでは、やりたいこととして話題には出ていましたが。

でもまさかサプライズでみんなとやるとは思ってなかったし、会場に遊びに来てくれていたほとんどの人には馴染みがなかったと思うんですよ。だから私は、これを機にピニャータを広めたいなと思って頑張って叩いたけど……全然割れなかった(笑)。だから来年リベンジしたくて……でも、言っちゃえばホント変わったライブですよね。笑いもあって、泣くし、でも歌も楽しいし。私、そういう唯一無二のライブを心がけているんですよ。

――唯一無二の。

はい。かっこいいMCって誰でもできるじゃないですか? でも私、そのライブのためだけに、自分が思っていないようなことを言うのは違うなと思っていて。唯一無二さって、自分のパーソナルな部分を出してこそ生まれるものだと思うんですよ。

だから、ちょっと面白い映像を入れて、MCで「そういうこと言って大丈夫?」みたいなとっ散らかったことを言うようなところも含めて、亜咲花なんじゃないかなと思うんです。あとは、絶対アニソンカバーをやるとか。この先もそういうスタンスは変えずにずっとライブをやっていきたいなって、この日1日やっていて思いましたね。

――パーソナルといえば、お父様からのバースデーコメントVTRもありました。あのとき初めて明かされたであろう心情も伝えられていて。

はい。私はずっと父が全身全霊で夢を応援してくれているもんだと思っていたんですけど、映像では「夢を応援したいけど、それを止めるのも親の役目なんじゃないか」とも思っていたと言っていて。そういう葛藤に苛まれながらだったことは全然知らなかったので、ぐっとくるものがありましたね。

でも、こっちが「不安にさせちゃうなら諦めようかな」と思わないように、そういう不満や不安を1ミリも感じさせなかったってすごいなと思って……言うなれば"プロの親"ですよね。全力で応援されていると思っていたからこそ、それも自信につながって私は夢だけを追うことができたので。

●「終わらない夢」で紡いだ想いが、さらに膨らみあふれた瞬間

あと、もう1個じーんときたところがあって。

――どこですか?

初めて父とアニサマを一緒に観に行った年、父に言った「このステージが私の夢だよ」という言葉をです。私はそのとき、応援していたひとりのアーティストさんしか知らずに行ったのに、出ていた方全員を好きになった。私も父もそんなアニサマというライブが好きになって帰っていったんです。で、最初に言ったのが「アニソン歌手になる」より前にそのひと言だったんですよ。

――最初の目標は、そこだった。

はい。そのあとにMay’nさんを見たことがきっかけで、アニソン歌手になりたいと思ったので。もし、私があのときそういう感情になっていなくて、父にその想いを話していなかったらきっと父も違う考え方をしていただろうし。あのとき自分の気持ちを素直に伝えられたというのは、すごく大きかったんだなと思います。

――その映像を経ての「終わらない夢」の歌唱中には、感情があふれた場面もありました。

この曲の歌詞には、自分がワンマンだけではなく他のイベントなどでも感じた「奇跡と奇跡が重なって、ひとつの未来が生まれるんだな」という気持ちを言葉にしているんですけど、父の手紙を通じて、本当に一つひとつの奇跡が重なって自分が今このステージに立てているんだなというのを感じたうえで歌い始めたからかもしれません。しかも次に歌う曲が「Open your eyes」だったので、デビューの頃も思い出しちゃって。

――どんなことを思い出されましたか?

アニソン歌手になってすぐの頃は業界の友達もいなかったし、親も芸能界の事情がわかるわけじゃないから大きな相談事もできなかったし、今のマネージャーさんもいなかったから頼れる人が本当にいなかったんです。でも今はもし泣いても、その涙を拭ってくれる人がいるんですよ。それは親はもちろん、マネージャーもファンもいるし、業界内の友達もすごく増えたからひとりで悩みや不安を抱えることがなくなった。

だから、「頬を伝うこの涙を 君が拭ってくれたんだ」とか「やっと気づけた もう1人じゃない」っていうフレーズですごいじーんときちゃって。涙を拭ってもらったことで初めて「ひとりじゃないんだ」って気づけた瞬間のことを考えたら、もう涙が止まらなくなっちゃいました(笑)。

――その「Open your eyes」でこの日までの集大成と成長を最後に見せて、今後への期待も持たせて終える姿、非常にかっこよかったです。

でも、まさかこんなに盛り上がる曲になるとは思ってなかったです。それこそこの曲も、サビのカウントダウンを「一緒に数えてー!」みたいに言わなくても、みんな自然と一緒に数えてくれるようになったんですよ。ミステリアスなEDMなんですけど、デビュー曲なのでみんなと盛り上がりたくて、この4年でたくさん歌わせていただく間に、自分でサビのコールポイントを作って、育ててきて、それがようやく花を咲かせたのを感じましたね。