レガシーなインターフェイスにフル対応
iPad Proには、キーボード付きカバーである「Smart Keyboard Folio」が用意されていた。今回、2020年モデルのiPad Proでも使えるようにすべく、デザインが少し変更された。
まず大きな変化が、背面カメラの開口部が四角く大きくなったこと。さらに、キーボードを開いて使う際に、背面のAppleロゴが正体になるよう配置された。
これで「なんだか分からない灰色の板」から、「iPad Proのケース」であることが分かるようになった。なお、新しいSmart Keyboard Folioは2018年モデルのiPad Proでも利用できる。つまり、iPad Proの背面マグネットの設計は、2018年モデルと2020年モデルで変化していない、ということだ。
そしてもう一つ、注目のアクセサリがMagic Keyboardだ。
2019年モデルのMacBook Pro 16インチで、従来のバタフライキーボードからシザー方式のMagic Keyboardに置き換えられ、今回iPad Proとともに登場したMacBook AirにもMagic Keyboardが採用された。
そしてiPad Proにも、Magic Keyboardを採用するケースが用意された。バックライト付きでまったく同じメカニズムを持つシザー方式のキーボードと、MacBook Airに比べると幾分小ぶりなトラックパッドが用意され、2つのヒンジでiPad Proを宙に浮かせて固定する仕組みだ。こちらも2018年モデルのiPad Proで利用できる。
さらに、これまでアクセシビリティ機能として対応してきたマウスやトラックパッドを、iPadOS 13.4で正式にサポートした。2本指、3本指のジェスチャーはiPadのタッチスクリーンと同様に利用でき、アイコンやボタン、テキスト、表計算のセルなどに合わせてマウスカーソルが変化する「賢いカーソル」が実装された。
タッチ操作との共存はしないが、Macのマウスカーソルよりも操作したい対象に吸い付くような感覚が非常に心地良い。地味ではあるが、1984年にMacintoshにマウスが実装されて以来使われ続けてきたマウスカーソルが、ここに来て再発明された印象を受ける。
まだMagic Keyboardが世に出ていないため、筆者はMagic MouseやMagic Trackpad 2をiPad ProとBluetooth接続したが、純正品以外でもBluetooth接続やUSB接続のマウスの多くをサポートするという。
未来のコンピュータ像
iPadは、2016年に「PCの代替」というマーケティングゴールを掲げたが、アプリのラインアップ、Lightningポートしかなく拡張性に乏しいこと、外部ストレージが使えないこと、キーボードやマウスがない、といった問題点を指摘され続けてきた。
同時に、タブレットデバイス自体が縮小し、ChromebookやSurfaceシリーズに代表されるタッチ操作可能なWindowsのモバイルPCの台頭を許してきた。
iPadは、ソフトウェアの面で外部ストレージを利用できるようにし、今回マウスカーソルを発展させてマウスやトラックパッドをサポートした。ハードウェアの面では、別売のApple PencilやMagic Keyboardに対応でき、インターフェイス面での死角はなくなった。
そのうえで、iPad ProにはLiDARスキャナによる空間把握能力の向上、広角に加え超広角カメラが追加され、ともに4Kビデオが撮影できるカメラ、顔認証や顔へのAR装飾に利用可能なTureDepthカメラを備え、5.9mmの薄いボディに詰め込んだ。
確かにこれはMacではないが、ARMベースの未来のコンピュータとして完成された姿に近づいたのではないだろうか。今後アプリの対応により、2020年モデルのiPad Proはより高いパフォーマンスを発揮し、拡がる可能性を見せてくれるはずだ。今後、一層の期待を抱かせるアップデートになった。