全体のバランスがよいAPS-Cミラーレスの佳作

一方、アイセンサーと連繋してEVFが立ち上がる(動作し始める)ときのレスポンスの悪さも気になるポイントではある。モニターとEVFを自動で切り換えるデフォルトの設定がダメなのかと思いEVFだけの動作にしても、アイセンサーは頑固に仕事を辞めず、接眼部から顔が離れるとEVFは消灯という動作をキマジメに継続。おかげで、次にファインダーをのぞいたときは、EVFと背面モニターを自動で切り替えているときと同じだけのタイムラグをムリヤリ味わされるという……。動きモノを撮っているときは、この鈍さ、けっこうウザいです。

でも、動きモノに対するAFの追従性は上位機種にも劣らぬ手応えだし(オートエリアAFだと測距点がとっちらかる傾向も一緒だけど……)、AE・AF追従で最速11コマ/秒の連写が可能だし(ただしRAWは12ビット記録となり連写中のファインダー表示はアフタービューのパラパラ漫画になるけど……)、何より2本のキットレンズがやたらによく写るので、それだけでシステムを完結させること(ボディ2台込みで総重量2kg以下のシステム構築)も不可能ではないのがイイんだなぁ。

すんなり納得できる扱いやすさと、使っている時の気分の良さと、上位機種にも見劣りしない仕上がり画質のすべてがバランス良くハイレベルなところで成立しているのがZ 50なんだと感じている。前述の通り、「それなり」の部分や気になるところもあるけれど、それらをアバタもエクボにしてしまう強さをZ 50は持っているのだ。

  • レンズを繰り出すことさえ忘れなければ、電源ONからの立ち上がりはまぁまぁ早い。ちなみに、レンズを縮めている状態でオートパワーオフになったときは、レンズを繰り出す操作がスリープ解除のトリガーになるので、撮ろうと思ったときに慌てないためにはこの動作を活かすのも手(NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR使用、165mm相当、ISO180、1/1000秒、F5.0、+1露出補正)

  • ああ、センサーにゴミが……。見えないうちは全然、気にならないのだけど、一度見えるととことん気になるのがセンサーのゴミ。Z 50にもゴミ取り機構が欲しかった……(NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR使用、24mm相当、ISO100、1/2500秒、F8.0、-0.7露出補正)

  • 沈胴時のパンケーキサイズがウレシイ16-50mm。反面、繰り出したときのカッコはイマイチなのだけど、写りはご覧の通り一級品だ(NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR使用、24mm相当、ISO100、1/40秒、F6.3、-1.3露出補正)

  • Z 50の確かな画作りが垣間見られる1枚。帽子や衣類の質感が、触れれば指先に感触が蘇ってくるのではないかと思われるほどのレベルで再現されている。ボディ側の画作りだけではなく、レンズの描写力がモノをいっての結果であることはいうまでもない。明暗差のいなし方にも余裕がある(NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR使用、375mm相当、ISO560、1/400秒、F7.1、-0.7露出補正)

  • 手前のピントが合っている部分に見られる隅々まで安定している緻密な描写もさることながら、中途半端にボカされている背景の再現に一切の崩れを見せないところでも、16-50mmの優秀さを推し量ることは十分に可能だ。カメラもレンズもちっちゃいくせに、よく写りすぎるぜ!(NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR使用、49mm相当、ISO100、1/80秒、F5.0、+0.3露出補正)

思い起こせば、私にはD40とD40Xを同時に嬉々として使っていたという過去があり、D5000シリーズを贔屓にしていた過去も……いや、こちらは過去の話ではなく、一眼レフを整理しつつある今もD5500を所有しているという下地があっての話ではある。つまり、もともと「Z 50みたいなポジションにあるカメラ」が好きな体質ではあったということだ。でも、それを抜きにしてもZのAPS-Cモデルは「あたり」だと思う。これをきっかけに、ニコン「Z」がもっともっとイイ方向に転がって行ってくれるといいんだけどなぁ。

  • センサーのゴミやボディ内手ブレ補正機構がない点などの留意点こそあるものの、バランスのよい仕上がりを高く評価している落合カメラマン。ニコンのみならず、他社からもZ 50を軽々と追い抜くようなデキのカメラが出てほしいと願っている様子