何よりキットレンズのデキにゾッコン

Z 50がキットを組むレンズは「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」。ダブルズームキットだと、そこに「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」が加わることになるのだけど、これらプラスチックマウントでスカッと軽い、見た目はどちらかといえばチープなキットレンズたちが思いのほかよく写ることには誰もが驚くはずだ。しかも沈胴構造なので、携帯時には、これまた思いのほか小さくなってくれるというオマケ付きである。

私は、2台のZ 50にそれぞれのレンズを装着した状態でカメラバッグに入れ持ち歩いているのだけど、たすき掛けでカラダの前に提げていても邪魔にならないサイズ&厚みの小ぶりなバッグに、下は35mm判換算24mm相当から上は超望遠領域の同375m相当までがフワッと入っているなんて、フィルム時代から一眼レフであくせく写真を撮り続けてきた身には感動物語以外のナニモノでもありませんぜ。10年前、いや、ヘタをすると5年前ぐらいまでは、私の機材環境にて同じ焦点距離域をカバーしようとすると、カメラバッグは肩にズシリとくる10kgコースだったからねぇ……。

もっとも、あの頃はフルサイズ一眼レフ2台にレンズはいわゆる「大三元」中心の展開。重くデカくなる要素テンコ盛りではあった。でも、じゃあそのときと今とでどちらが高画質な写真が撮れているかといわれれば、小声で「Z 50で撮っている今の方がキレイな写真が撮れているかも……」ということになる。

写真は、機材じゃなくて人間が撮るものだから、「デジイチ+大三元の頃と較べて“良い写真”が撮れているかどうか」については、撮る人間自身が何かしらアップデートしていない限りは変わらないともいえる。いや、ヘタすりゃ加齢とともにマイナス方向へシフトしているかもしれない。ただ、機材の重さに息切れしながら写真を撮っていたあのころより、フットワークも気分も軽く写真が撮れている今の方がずーっと楽しいのは事実……。おっと、この辺については深く追及しない方がいいかな? 墓穴掘削御免!!

  • ズームリングの操作感が思いのほか上質なのもNIKKOR Z DX 50-250mm F4.5-6.3 VRの特徴のひとつ。おかげで、ファインダーをのぞきながらの画角調整が非常にやりやすい。このレンズ、撮影中の感触と描写力には、確実に価格以上の価値が備わっている(NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR使用、247mm相当、ISO1600、1/250秒、F5.6)

  • 錆びた金属や硬化したゴムの手触りまでもが感じられそうなリアルな質感再現=画作りに対する満足感はすこぶる高い。そして、視野率100%のEVFはこのような緻密な構図も難なくこなす。ファインダーに関しては、中級機以下の一眼レフにはマネのできない優位性をあたりまえのように有しているということだ(NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR使用、240mm相当、ISO800、1/250秒、F5.6、-0.3露出補正)

  • NIKKOR Z DX 16-50mm F3.5-6.3 VRの写りの良さも仰天モノ。外装の見た目や手にした感じはジツに安っぽい(ついでにいうなら繰り出した姿はカッコ悪い)のに、開放F値からバリバリに安定した画を結んでくれるのだ。この作例はF7.1まで絞って撮影しているけれど、実際には絞り込む必要をさほど感じない実力の持ち主(NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR使用、24mm相当、ISO100、1/200秒、F7.1)

  • ISO11400で撮影。高感度ノイズが目立ちやすい中間調主体の絵柄でこの印象の仕上がりを導くとはなかなかのものである。でも、Z 6やD780の同じ感度と比較すると……。フルサイズの強みは、それはそれとして健在なんだよね(NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR使用、375mm相当、ISO11400、1/1000秒、F6.3、-1露出補正)

  • EVFには、撮影する前にどんな仕上がりになるのか、そのイメージがほぼ正確につかめるという利点がある。どんな写真にしたいのか明確な思いがある場合は、光学ファインダーよりもEVFの方が話は手っ取り早いということもできるわけだ。昔からビデオカメラもいじっていた私は、デジカメ以前からEVFを容認。今のクオリティなら全然OKっす。太陽を入れ込んでも眩しくないしね(NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR使用、375mm相当、ISO100、1/3200秒、F7.1、-1.3露出補正)

ちなみに、私は「Z 50の2台買い騒動」に乗じてスピードライトSB-500も新調してしまっているのだけど、それを含めレンズ付きZ 50ボディ2台と充電器1台、予備バッテリーひとつ&フィルター3枚を入れた状態におけるバッグの総重量は、なんとたったの2.5kg!! 目の衰えが進むよりも早くカメラのAFが機能アップを果たしてくれて、体力の衰えをカバーするかのように機材の軽量化ができるようになっているなんて、つくづく幸せな写真生活を送ってこられていると思うんだなぁ。写真を本格的に始めた高校時代、この歳になるまで写真を撮り続けている(撮り続けられている)なんてこと、想像もしていなかったから……なぁんて、義理人情浪花節まで唸りたくさせるZ 50。ちっちゃいくせにシブすぎるぜ! (後編に続く)

  • 小さいZ 50のあなどれない実力を高く評価する落合カメラマン。だが、至れり尽くせりの最新カメラに慣れたカラダにはシビれる欠点も潜んでいたようです……