軽さへの追求がブレイクスルーに
―― ここ1年でPCのラインナップが充実してきた印象があります。特にdynabook Gシリーズなど。
中村氏:そうですね。シュリンクしていたものが、シャープのグループになってから拡大に転じました。『一時期から半減していたものを立て直すぞ』と、設計陣も躍起になって開発しています。充実していますね。みんながキラキラしているように感じます。
中村氏:dynabook Gシリーズのように、軽さを目指したことがエンジニアにもブレイクスルーになりました。これまでは『小さく小さく』を目指して開発していたんですが、軽くしつつ堅牢性も保つという、二律背反のアイデアを形にできた自信もあって。テクノロジーのブレイクスルーは、dynabook S73にも活かしました。S73は、3面がプラスチックです。技術の開花によって、ラインナップ展開も加速しています。
―― dynabook Gシリーズは軽いですよね。
影山氏:やれ700gだ、いや600gだと、まるでステーキ屋さんのような話になってきました(笑)。
中村氏:MIL規格にもこだわっています。パネルを曲げる、ねじる、叩くといったことへの耐久性。我々が取り組んだらどうなるか、見せようじゃないかという気概ですね。妥協を許さないモノづくりは、自負できるところです。
影山氏:dynabook GシリーズのLANコネクタには、LANケーブルがスコッと入ります。『PCが多少厚くてもこっちのほうがよい』と思われるお客さまも多くいらっしゃいます。折りたたみ式だと故障が怖いと心配されるんでしょう。そこも評価されています。まだ無線LAN環境が整っていない会社さんも多いので、有線LANはなくせない。ノートPCにLANポートがなければ、そのぶん本体を薄くできるんですが、お客さまのニーズを大切にした結果です。
中村氏:国内向けのハイエンドモデルでは、LANポートをなくしています。これまではアナログRGB(D-Sub)とLANポートが薄型化の強敵だったんですが、アナログRGBはなくしました。有線LANケーブルをお使いのお客さまは多いので、dynabook Gシリーズで復活させつつ、その上で『薄く軽く』を目指しました。ご要望に応えられた部分ですね。
LANポートにはケーブルを固定するためのノッチがついてます。このノッチ部分を下向きにすることによって、本体をさらに薄く設計できます。しかし、カタログスペックを重視した(編注:薄さ)の実装ですと、LANポートのノッチがお客さまの服に引っかかってしまうようなケースも考えられます。そこであえてノッチを上向きにしながら、薄くすることにこだわりました。
PC本体の横幅は316mm以下に。これは一般的なオフィス机の引き出しの幅を意識していまして、引き出しに対してPCを縦にスッポリ入るサイズであることを大切にしています。こうした長年にわたって培った『マジックワード』にこだわりながら開発してます。
―― 小さなボディにパーツを埋め込んでいけるのも、これまでの歴史とノウハウがあるからですね。dynabook S73の反響はいかがですか。
中村氏:見た目に対して、持った感じの軽さにインパクトがあるというご意見はうれしいですね。そして薄いと。弾力性のあるプライス構造にもなれたかなと思っています。こちらはBtoC向けにもラインナップします。
―― 話が少し飛びますが、販売の中で量販店の比率は変わりましたか?
影山氏:dynabookシリーズ全体としては、量販店での販売は減り、法人取り引きが増えました。現状、BtoC向けはラインナップをしぼった段階なので、どうしても台数は過去に比べて減ります。今後はラインナップを充実させて伸ばしていきたいと考えています。また、Webでの販売も伸び率が高いですね。今後もWebには力を入れていきます。
若年層へのアプローチは……
―― 日本の若年層は、PCの使用率が低いと言われています。その状況や、アプローチはどのように考えていますか。
影山氏:これはPCの全メーカーで考えていることですね。マイクロソフトさんも含めて。
教育市場では、ひとつ明るい兆しが見えてきました。2020年からプログラミング学習をやるということで、ご家庭における学校教育に向けた準備のニーズが出ています。これまではキーボード入力の必要性が低く、若い人はいろいろなことをスマホで済ませていました。だから新入社員はキーボードの訓練からしないといけない(笑)。
そんな状況だったのが、学校教育で『キーボード入力から始めましょう』となった。業界全体でもっと啓蒙していく必要があるでしょう。それが1つの答えになるのかなと思います。
競争は激しいです。文教市場は大きいので、各社さんが力を入れています。PCだけでなく、システムとしてトータルの競争です。これはシャープグループになってよかったと思うところですが、扱える機材やソフトウェアが増えました。たとえば、電子黒板の『BIG PAD』、教育用ソフトの『STUDYNOTE』です。Dynabookとしてもいろいろなソリューションを持っており、お客さまのニーズに合わせて提案できる商材が集まってきているわけです。ここが今後の強みになっていくと考えています。
どんなPCが出てくる?
―― 今後、どんなデバイスを創っていきたいですか。
中村氏:飽くなき追求、ではないですが、テクノロジーを追いかけつつ、あとは曲がる液晶、フォルダブルというところで、我々がつくるとどうなるか。内部でも議論をしているところです。
曲がって広げたら、それはタブレット端末と何が違うのか。曲がることで、どう生産性を高めていけるのか、議論しているところです。クラムシェルではない形状も合わせて、もっと使いやすく魅力的な形を探っています。これは我々の使命ですね。学生も働く人もターゲットです。
『軽・薄・短・小』という部分は、これで満足、ということがないんです。これからも薄く軽く長く安全というところを追求していきたいと。新しいブレイクスルーを狙っていきます。
―― ワーカーの実用性も確保しつつ、ワクワクできる製品を期待しています。最後にメッセージを。
影山氏:dynabookは、元気な会社になりました。皆さんのお役に立つ会社として、信頼いただける会社を目指し、元気な会社としてやっていきます。ぜひ、ご期待いただけたらと思います。
―― ありがとうございました。