「東芝のPC」として歩んできたdynabookシリーズ、2019年の30周年は新会社Dynabookとして迎えました。シャープ傘下となってから業績回復の明るい兆しも見え、dynabookは今後どのような方向に進んでいくのでしょう。国内でPC事業を統括する影山岳志氏と、商品・設計・NCC・ビジネスパートナー戦略所管を務める中村憲政氏に聞きました。
これまでの経緯とdynabookの現状
―― シャープグループになり、どのような部分が変わりましたか。
影山氏:雰囲気もずいぶん変わったなという印象です。ポジティブにとらえている人が多いようです。たとえば、スピード感や、事業拡大の意欲などを特に強く感じますし、意志決定も速いと感じます。過去と比べれば、間違いなくよい方向に向かっています。
―― そうした点が好調な数字にも現れたといえますね。
影山氏:(Windows 7のサポート終了に伴う)Windows 10へ移行が進んだことで、市場全体が好調です。その影響もありますが、それを差し引いても、手応えを感じますね。
海外の状況は?
―― 一方で、海外でのブランド認知はこれからですか。
中村氏:はい。これまでdynabookという名称は、おもに国内で使ってきました。実は海外でのブランド認知度は、ほとんどないという状況です。今後はブランド投資もしていくことで承諾を得ていますので、最初は『以前の東芝は今のdynabookですよ』という段階からです。
ゆくゆくはdynabookのみという形で、海外にもPRを積極的に打っていき、dynabookブランドを広めていければと思います。SNS、Webサイト、カタログも含め、イベントなどでもPRしていこうとして、取り組みを進めている状況です。
―― 部材調達という意味では、鴻海の力は大きいのでしょうね。
中村氏:やはり大量調達のパワーはあります。集中購買という側面でも助かっています。
―― 年間の商戦期で売り上げを伸ばしつつ、そのほかの展開はどう予想していますか。
中村氏:ざっくりとしたところでは、Windows 7とWindows Server 2008のサポートが終了した2020年1月14日以降、特にBtoB領域での取り引きは落ち着くでしょう。今度は教育分野に、各社が熱い視線を送っていますよね。
また、5G×8Kであったり、曲がるフォルダブル液晶であったりと、これまでのPC(編注:デスクトップPCやノートPC)を超えた『コンピューティング』という部分が伸びると確信しています。そこでdynabookも、ノートPCという部類ではなくて、コンピューティングという部分を広げていきたいと。Windows環境の移行サービスなどは大きな柱です。
さらにはモバイルエッジコンピューティングがあります。PCの利用シーンでオフィスは大きな割合を占めますが、コンピューティングを外に持ち出して、働く人のプロアクティビティを高めましょう――といったところにも取り組んでいきます。オフィスから外に出たコンピューティング需要というのは、今後も確実に広がっていくでしょう。
そのほか、プラットフォーム事業にも取り組みます。サービスの内容が、ガラっと変わるわけではないんですが、長いスパンで見ていただければ。
気になる、あのこと、このこと
―― PCの生産という意味では、インテルのCPU問題はいかがでしょうか。
中村氏:まだ完璧ではないですが、復調してきているのは確かです。
―― AMDの存在感も大きくなりました。
中村氏:そういった流れもありますが、企業のお客さまについては、これまでの検証結果、セキュリティ、互換性を重視されます。オフィス向けのPCは、今後もしばらくはインテルのプラットフォームが中心でしょう。
影山氏:まだまだBtoB領域では、AMDプラットフォームを採用するお客さまは少ないと思いますが、個人向けPCとしては、各社さんから多くのモデルが出ていることは認識しています。
―― dynabookのラインナップとして、AMD Ryzenを使ったPCを出す可能性は?(ぐっと身を乗り出す我々)
中村氏:ゼロではないと思いますが、常に色んなことを考えていますので(笑)。
―― (残念……まぁそうですよね)ところで、dynabookのファンは、どこを支持していると感じていますか。
影山氏:手前味噌になりますが、信頼関係だと思っています。お客さまと製品、お客さまと弊社との信頼関係があるから、使い続けていただいていると。私はお客さまとお話しする機会が多いのですが、そこ(信頼性)を褒めていただけると本当にうれしいですね。
中村氏:アメリカ市場でも、同じ手応えはあります。長年のお付き合いがありますが、お客さまのPCやシステムに何かあったときは、すぐに対応できるようにしています。過去からの蓄積でもありますが、そういった部分では、変わらず高い評価をいただいています。
―― アメリカは価格が安ければよい、という市場かと思ってました(笑)。
中村氏:そういったお客さまもいらっしゃるんですが、多少は値段が高くても、中長期のトータルではむしろコストが安くなるという考え方も多いですね。サービスサポートも一貫してやっているので、それも強みです。
お客さまから『何かあったときは逃げないで対応してくれるよね』と言われたときはうれしかったですね。担当者に連絡してもらえれば、こちらからすぐに飛んでいきます。