W主演に抜てきした佐野は、山崎賢人をきっかけに3年ほど前に出会った。「『砂の塔』(16年、TBS)を見たときに『華があるな』と思って、いつか一緒にやりたいと考えていたんですけど、今回ようやく縁が重なることができました。僕たちが佐野勇斗の魅力をどこまで引き出すことができるかが、今回の作品の肝だと思っています」と期待をかける。
対する飯豊は、14歳の頃から『好きな人がいること』など何本も仕事をしてきた“戦友”だ。「『刑事ゆがみ』(17年)に出演してもらったのですが、そのときに『藤野さんはラブストーリーをやるべきです』と言われたんですよね(笑)。1年前にたまたま会ったときに、『ラブストーリーをやりたい』と言われまして、今回ご一緒するのはとても自然な流れでした。ラブストーリーは、出演する2人の空気感が全てなのですが、佐野くんと飯豊さんの2人は脳内で何度並べても愛すべき2人だった。最初にポスター撮影で2人が実際並んだ時に、“よし!勝った!”と思いました(笑)」と手応えを振り返る。
また、スタッフと同様に「大友花恋さん、石田ひかりさん、浜野謙太さんなど、かつてご一緒したことがある方たちに参加していただきました。AbemaTVというプラットフォームで10代に現象をつくるドラマをやるのは大きな挑戦です。ゼロからの関係性ではなくて、信頼が最初からある方たちとチームを組んだ方が、より大きな力が発揮できると思ったのが理由です」といい、「今回は、一緒にやりたいと思っていた方が全員出演を快諾してくださった。マネジメントの皆さま含めて、本当に感謝しています。現場の雰囲気もとてもいいです」と笑顔を見せた。
■企画書の相関図にSNSのフォロワー数
キャスティングでは、SNSのフォロワー数も意識したそうで、「やはり配信なので、地上波と違って何倍も見てもらう努力をしなければと思ってました。そのためにはSNSでどう作品を伝えるかがとても重要になります」と狙いを語る。企画書の相関図には、キャストそれぞれにフォロワー数が明記されており、「最初は事務所に『これは嫌味ですか(笑)』って言われちゃったりしたんですけど、この企画書を渡すことによって『このドラマはSNSを使うから、協力してください』って皆さんに伝える効果もありました」という。
『恋仲』では一部生放送の時間帯で撮影した写真をリアルにツイートし、『好きな人がいること』では生配信で制作発表を行うなど、ドラマの宣伝でSNSを積極的に活用していた藤野氏だが、今作については「餅は餅屋だと思って、宣伝戦略はAbemaTVの宣伝チームに任せています。逆に今、AbemaTVさんに勉強させていただいています(笑)」と、ネットのプロに任せているそうだ。
そうした中で、「地上波のときは、自分の余力の8割を“つくること”に割いていたんですが、AbemaTVでは“つくること”と“届けること”が同列に大切だと思いました。ドラマの現場って普通は撮影を優先するんですけど、今回は宣伝にもみんな協力的で、本当に助かってます」といい、「公式のInstagramは本当によくできていると思うので、ぜひフォローしてほしいです」とアピールした。
■「ルールがない」中で試行錯誤も
また、「地上波だと、とにかく第1話の視聴率を獲ることを考えなければいけないのですが、配信は全話でどう盛り上げるかをトータルで設計できる」という違いも。「まずはAbemaTVで恋愛リアリティを熱を持って見ている10代の子たちに見てもらいたい。そこから配信を重ねるごとに口コミで広がって、多くの人に届くコンテンツになってほしい。全8話が終わってから見に来てくれるというのも可能ですから」と展望を語る。
ほかにも、地上波とAbemaTVでの違いを聞くと、「何もルールがないことですね」と回答。「例えば音楽の使い方とかも、地上波ではやってないようなことを試してみたりとか、自由にやらせてもらっています。ただ、自由には責任が伴うので、それも大変といえば大変ですね。でも、挑戦することによって、僕自身も成長できると思うので」と、新たなフィールドで試行錯誤しながら制作に臨んでいるようだ。
●藤野良太
慶應義塾大学文学部卒業後、2006年フジテレビジョンに入社。主なドラマプロデュース作品に『水球ヤンキース』(14年)、『恋仲』(15年)、『好きな人がいること』(16年)、『刑事ゆがみ』(17年)、『グッド・ドクター』(18年)など。19年6月末に同局を退社し、株式会社storyboardを設立。フリーのプロデューサーとして活動し、AbemaTV『僕だけが17歳の世界で』で退社後初のドラマプロデュース。