• 藤野良太プロデューサー

今作は、2人が17歳のときに航太が亡くなり、残されたヒロインが7年後の24歳になったときに再会するというストーリーだが、実は『恋仲』も17歳で別れた男女が24歳で再会するという構成だった。

藤野氏は「意識してなかった」というが、「17歳って色々な作品で描かれることが多い年齢ですよね。16歳でも18歳でもなくて17歳。それってなぜだろうと考えたときに、17歳って切ない年齢であることに気づいたんです(笑)。17歳って “変化”しなければいけないタイミングが迫っている年頃ですよね。親との関係とか、進路とか、友人関係とか、“これまでの自分との別れ”が予感される年齢なんです。そして24歳は、社会に出たときに思い描いていた理想と現実のギャップを感じて壁に当たる年頃。“変化”も“壁に当たる”のも切ないじゃないですか。だからこそ、どちらの年齢も物語が描きやすい。あくまで、僕の経験から言えることなので一般論じゃないですけど(笑)」と、自身の潜在意識を分析する。

それを踏まえ、「今回は10代と20代で、“変わること”と“変わらないもの”は何かという点を意識して、17歳と24歳という2つの年代を表現していこうとスタッフキャストと共通認識を持ちながら、作品を制作しています」と説明した。

さらに、「『恋は互いを見つめ合い、愛は同じ方向を見ること』というサン=テグジュペリの名言があるのですが、それを航太と芽衣の物語に込めているんです」とも。「つまり、“恋”と“愛”の違いというのを描けたらいいなと。17歳の同級生同士の恋と、24歳の大人の恋愛は違うじゃないですか? その違いを17歳のままの航太だからこそ、描けると思っています。もちろん、入り口はキュンキュンしたり切ない感情になったりするラブストーリーですが、描いているのは普遍的な人間ドラマのつもりです。人生において大切なことをドラマから学べることもあるということを、若い子が見ているAbemaTVであるからこそ、意識して制作しなければいけないと思っています」と意気込む。

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■芸能事務所も配信ドラマに注目

今作はAbemaTV初のいわゆる“局制作”となるが、「AbemaTVの若い社員たちが、本打ち(脚本打合せ)や編集でも積極的に意見を言ってくれて、僕も新しい視点をたくさんもらうことができました」とのこと。

また、配信ドラマに対する芸能界の意識変化も感じているという。「芸能事務所やスタッフから見たら、『全裸監督』(Netflix)でようやく『配信ドラマってすごいな』と可能性に気づいたのだと思います。今まではスポンサーとの契約形態で配信ドラマに出演することに制限があったりもしたのですが、それも変わっていくのではと思ってます。今回のドラマが発表されてから、まだ配信が始まっていない段階で、出演者以外の事務所の方たちからも『配信はどうなの?』と連絡をいただくことが増えました」と明かし、「だからこそ、今回の作品は成功させないといけないと思っています。この作品に参加してくれた方々に、配信ドラマに出演することの可能性を実感してもらいたい」と気を引き締めた。

今後の展望については、「まずはこの『僕だけが17歳の世界で』を日本中の10代に届けることに集中したいと思っています。若者が熱狂してくれたら、上の世代も覗きたくなると思うので。そうやって広がりを作れたらいいですね。ひとつひとつのコンテンツに、今やる意味をきちんと込めて届けていきたいなと。その先に、アジアや世界に向けてコンテンツを届けるチャンスがくれば挑戦してみたいですね」と意欲を示している。

●藤野良太
慶應義塾大学文学部卒業後、2006年フジテレビジョンに入社。主なドラマプロデュース作品に『水球ヤンキース』(14年)、『恋仲』(15年)、『好きな人がいること』(16年)、『刑事ゆがみ』(17年)、『グッド・ドクター』(18年)など。19年6月末に同局を退社し、株式会社storyboardを設立。フリーのプロデューサーとして活動し、AbemaTV『僕だけが17歳の世界で』で退社後初のドラマプロデュース。