2,510回目の放送となるきょう2月2日は、放送時間を3時間に拡大して、50周年企画『あなたは、いま幸せですか?』(24:55~27:55)を放送。NNN加盟全29局が、それぞれ取材対象者に「あなたは、いま幸せですか?」とインタビューする3~5分のショートドキュメンタリーを制作し、それをつないで1本のドキュメンタリー番組を作り上げるという構成だ。
「もともと、1回の放送で全局が関わるということができないかというのは、50周年に向けて温めていたんです。その中で、僕の同期から『幸せをテーマに横串を刺してやってみたらどうか』というアイデアがあって、今回の企画になりました」と、成立の経緯を明かす。
このテーマの狙いについては、「“幸せ”っていうのは、ある意味究極の人間の生きる理由だと思うんです。その中で、テレビ信州は松本サリン事件(94年)で冤罪被害を受けた河野義行さんに聞いているんですが、河野さんが『不幸と感じたことはない』と答えるんですよ。その意味がどんなものなのかというのを、見てる人に感じ取ってもらえたら」と紹介。
ほかにも、「終の島 ハンセン病と生きる」(西日本放送)、「土砂に家族を奪われて」(札幌テレビ)など、厳しい境遇にいた人も取材対象となっており、「記者の『あなたは、いま幸せですか?』という聞き方が、ちょっと恐る恐るになっている場面もあります。ドキュメンタリーが好きな方には、そういう温度が伝わると思いますね」と予告した。
今回はナビゲーターとして、昨年「ポカリスエット」のCMに抜てきされたモデルの茅島みずき(14)が登場。「これからこの番組が続いていくには、やはり若い人に見てもらいたいですし、若い人たちがこれからの世の中を作っていくということで、お願いしました」と、起用の狙いを語っている。
■老舗番組の新たな挑戦
50年という歴史を積み重ね、揺るぎない地位を確立しているかと思いきや、「あぐらをかいているつもりはありません」と強調。「番組が始まった当初は、23時台から放送されていましたが、日本人の生活リズムの変化に伴って徐々に繰り下がり、現在は25時台の編成になっていますし、“テレビを超えろ”という局の号令がある中で、『Nドキュ』だけが変化しなくていいということはありません。その点は、ゴールデンやプライムの番組と同じですね」と気を引き締める。
最近では、映画『パラサイト 半地下の家族』『岬の兄妹』や、新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』などを見て刺激を受け、「インプットを増やして、引き出しを広げたい」という有田氏。格差や偏見、貧困、戦争と平和、また価値観の違う相手とどうすれば理解し合えるのか、さまざまな題材を表現する方法について、学ぶことは多いと話す。
その上で、今後の番組の展望を聞くと、「先ほども言いました“テレビを超える”というところで、新しいものに挑戦することを、『NNNドキュメント』でどう表現していくかというのが、大きなテーマになると思っています」と意欲を示した。
この50周年のタイミングで、昨年12月から2カ月限定で、過去の名作を2~3分のショート動画にしてネットでも見られるように毎日配信するという取り組みを行っており、「中京テレビの恩田千佐子アナウンサーの乳がんの闘病記は、ものすごい再生回数を記録しています」と、新たな試みで手応えも。ただ、「今回は打ち上げ花火としてやっているのでできるのですが、これをどうやって持続していくかが課題です」と、老舗番組の挑戦は止まらない。
●有田泰紀
1968年生まれ、広島県出身。早稲田大学卒業後、91年に日本テレビ放送網入社。報道局社会部で記者を務め、『きょうの出来事』『NEWS ZERO』などの番組を担当し、15年から『NNNドキュメント』プロデューサー、18年からチーフプロデューサー。ほかにも、『Oha!4 NEWS LIVE』のチーフプロデューサーを務める。