日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’20』(毎週日曜24:55~)が、今年1月で放送開始50周年を迎えた。昭和、平成、そして令和へと時代をまたぎ、日テレでは『キユーピー3分クッキング』『笑点』に次ぐ長寿番組となった背景や今後の展望などについて、有田泰紀チーフプロデューサーに話を聞いた――。

  • 『NNNドキュメント』1970年1月の第1回放送 ※当初はタイトルに「NNN」が付いていなかった (C)NTV

    『NNNドキュメント』1970年1月の第1回放送より ※当初はタイトルに「NNN」が付いていなかった (C)NTV

■企画は年間数百本も

『NNNドキュメント』の特徴は、日テレ系列各局が制作し、ローカルなテーマも全国に一斉放送され、共有できるということだ。年間50本放送する中で、企画は数百本上がってくる競争率の高さで、有田氏は「とにかく『Nドキュ』に出して全国放送で見てもらいたいという意識が高いんです。ここに出せると会社で一人前と認められるところもあるほど制作者の誇りになっていて、各局から“甲子園”と呼ばれるくらいです」と話す。

その意識が、50年にわたって先輩から後輩へと受け継がれてきたのが、番組が続いてきた大きな強みでもある。1月17日、阪神・淡路大震災から25年を迎えたが、関西ローカルで特集は組まれていたものの、民放の全国放送で取り上げられることはほとんどなかった。だが、『Nドキュ』では、大震災で母を失った男性と母子寮職員や生き別れた実の兄との再会を追った『おうち~神戸母子寮が紡いだ家族の絆~』(読売テレビ制作)を1月19日に放送。その担当ディレクターは20代の若いスタッフで、もともと追っていた先輩から引き継いで取材したものだという。

それに加え、「その継承に、視聴者のみなさんが応えていただいたことも、50年続いた理由だと思います」とも。「日曜の深夜という、翌日から仕事が始まる時間帯にもかかわらず、最近ではSNSを見ていると『寝ようと思ったのにNNNドキュメントが始まって、眠れなくなってしまった』という書き込みがあるんです。それほど、視聴者の方が真剣に見てくださったということが、大きいですね」と分析した。

  • 有田泰紀チーフプロデューサー

■「ネットカフェ難民」の言葉を生み出す

そんな『Nドキュ』50年の中で、有田氏が印象に残っているという作品は『クラウディアからの手紙』(日本海テレビ制作、98年)。戦後、シベリアに抑留された日本人と結婚したロシア人の妻・クラウディアさんが、ずっと帰りを待っていた日本の妻の元へ夫を帰国させ、近況をつづった手紙が送るという内容だが、「いち視聴者として見ていたのですが、かなり衝撃的でした。『ひまわり』(70年)という映画があるんですが、あれを地で行くようなドラマチックな作品でしたね」と振り返る。

また、『ネットカフェ難民 漂流する貧困者たち』(日テレ制作、07年)では、「ネットカフェ難民」という言葉を生み出すなど、社会問題に警鐘を鳴らしてきた。「日曜の深夜でありながら、そこが震源地になって“知のきっかけ”になるということで、多少なりとも貢献できた番組なのではないかと思っています」と謙虚に語るが、特に近年はレコメンドの発達したネット社会の中で、毎週のレギュラー放送によって“気づきの機会”を提供するというテレビメディアの大きな役割を果たしていると言えるだろう。