性能バツグン、排熱効率も高まった
ここまで、外観を中心に紹介してきましたが、新しい「VAIO SX14」では、実は「中身」も大きく変わりました。CPUにインテルで最新の第10世代Coreプロセッサー(開発コード名Comet Lake)を搭載したことが最大の関心事でありますが、それ以上に、ここで評価しているRED EDITIONなどのカスタマイズモデル最上位構成で、「6コア12スレッド」対応のCore i7-10710U(動作クロック1.1GHz/4.7GHz)を搭載したことは特記すべきことでしょう。
大画面ディスプレイを搭載してボディ内部の容量に余裕があり、大型のクーラーユニットと十分なエアフローが確保できる「据え置き利用重視」のドデカノートPCならいざ知らず、厚さ15~17ミリ、重さ1キロ前後という軽量薄型のモバイルノートPCで6コア12スレッド対応のハイエンドCPUを搭載するというのは、依然ならあまりにも無謀な話に聞こえます。
しかし、技術の進化というのは素晴らしいもので、まずCPUそのものがハイエンドモデルなのにTDPが15ワットにとどまっています。さらに、VAIO側も高効率のクーラーユニットを開発して薄いボディ内部に組み込んだ他、CPU以外で発熱する電源レギュレータ回路や底面など、特定の場所に熱が集中しないように、ケーブルの素材や配線などを工夫するなど、ボディ内部のエアフローと排熱効率を高めています。
加えて、新しいVAIO SX14では、従来からVAIOで採用してきた処理能力向上技術「VAIO TurePerformance」にも改良を施しています。VAIO TurePerformanceでは、インテルのTurbo Boost状態において発熱を抑えるために動作クロックを下げる「持続可能パフォーマンス状態」を用意しています。
ベンチマークで性能チェック
今回登場したVAIOでは、この持続可能パフォーマンス状態で設定する動作クロックを従来より高くすることで処理能力の向上を図っています。処理能力の客観的指標を測定するため、各種benchmarkテストを実施してみましょう。
今回評価に用いた機材の構成は次の通りです。
- 製品名:VAIO SX14 RED EDITION
- CPU:Intel Core i7-10710U(動作クロック1.1GHz/4.7GHz、キャッシュ容量12MB)
- メモリ:16GB
- ストレージ:256GB M.2(PCIe NVMe) SSD
- 光学ドライブ:なし
- グラフィックス:Intel HD Graphics 620(CPU内蔵)
- ディスプレイ:14型(1920×1080ドット)非光沢
- ネットワーク:10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T対応有線LAN(アダプターで対応)、IEEE802.11a/b/g/n/ac対応無線LAN、Bluetooth 4.1
- サイズ/重量:W320.4×D222.7×H15.0~17.9mm / 約1,018g(実測)
- OS:Windows 10 Home 64bit
この構成でバッテリー設定をパフォーマンス優先のバランスに設定し、ディスプレイ輝度を10段階あるうちの下から6レベルにして測定したベンチマークテストの結果は次の通りでした
PCMark 10 | 3909 |
---|---|
PCMark 10 Essentials | 8159 |
PCMark 10 Productivity | 6015 |
PCMark 10 Digital Content Creation | 3305 |
3DMark Time Spy | 463 |
ファイナルファンタジーXIV漆黒の反逆者 | 1828(設定変更を推奨) |
CINEBENCH R15 CPU | 906 cb |
CINEBENCH R15 CPU(Single Core) | 184 cb |
CrystalDiskMark 7.0.0 x64 | |
Seq Q8T1 Read | 3559.22MB/s |
---|---|
Seq Q8T1 Write | 1516.0MB/s |
RND4K Q32T16 Read | 600.87MB/s |
RND4K Q32T16 Write | 2091.72MB/s |
RND4K Q1T1 Read | 47.42MB/s |
RND4K Q1T1 Write | 149.65MB/s |
負荷の高いベンチマークテスト「ファイナルファンタジーXIV漆黒の反逆者」を走らせている状況における発生音の大きさとキートップ、パームレスト、底面における表面温度を測定したところ、次のようになりました。
発生音 | 48.4dBA(暗騒音37.8dBA) |
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「F」キートップ表面温度 | 40.9度 |
「J」キートップ表面温度 | 37.2度 |
パームレスト左側表面温度 | 31.4度 |
パームレスト右側表面温度 | 30.6度 |
底面表面温度 | 42.4度 |
いずれも負荷の高い状態における測定ゆえに、高い値となっています。ベンチマークテストを実行していない状態では発生音は小さい(41.4dBA)ですが、電源プランをパフォーマンス重視に設定すると常にファンは回転し続け、その風切り音は小さいものの、比較的高い周波数の音が「キーン」と聞こえ続けます。この音は電源プランを「バランス」以下にするときにならない大きさまで抑えることができますので、図書館のような静かな場所で使うときには留意するといいでしょう。
加えて、VAIOでは、搭載するキーボードを「静音キーボード」としており、確かにキートップそのものはタイプすると静かに「すっ」と押し込まれていきます。ただ、キーボードをタイプした力を受け止める本体がチルドアップで浮き上がっているため、タイプすると本体がまるで太鼓のように「ボムボムッ」と響いてしまいます。これも、静かな場所で使うとなかなか気を使ってしまいそうです。
VAIO SX14では省電力液晶パネルを搭載したことで、フルHDモデルにおいて、バッテリー駆動時間も大幅にアップしたといいます。今回評価したVAIO SX14 RED EDITION(フルHDモデル)の最大駆動時間は約20.5時間(JEITA 2.0測定)。液晶パネルはリフレッシュレートを動的に変更するほか、効率の高いバックライトを組み込むことで従来の液晶パネルより消費電力を抑え、長時間バッテリー駆動を実現したと説明しています。
そこでBBench 1.0.1を用い、ディスプレイ輝度を10段階の下から6レベル、電源プランとパフォーマンス寄りのバランスに設定してバッテリー駆動時間を測定してみました。その結果は9時間21分6秒とVAIOが測定した20時間には及びませんでした(念のため2度測定しましたが結果はほぼ同じ)。ただ今回は試用機のため、本来の駆動時間が出なかった可能性があり、製品版で改めてチェックしたいと思います。
最高の処理能力と最高のモビリティが必要な人に
VAIO SX14は、搭載した第10世代Coreプロセッサーの処理能力はさすが6コア12スレッド、そして、改善したVAIO TurePerformanceによって大変優れたものとなっています。RED EDITIONのカラーリングは見た目に鮮やかで、目にした身内は「持っているだけで元気になれる」という感想でした。
一方で、隠し刻印は感度の衰えた人には使いにくい場面もあり、高い処理能力を引き出す強力なクーラーユニットは設定によってファンの音が気になります。また、静穏性の高いキーボードを搭載しながら、チルドアップする本体の影響でタイプ音が響いてしまう一面もあります。
とはいえいま、最高の処理能力と最高のモビリティが必要というユーザーにとってVAIO SX14は有力な候補となるでしょう。図書館のような静かな環境で使うことが多いユーザーは、まず実物を店頭で試してみて、自分の環境で問題にならないか確かめてから判断するのが賢明と思われます。