――前作は「ニューヨークフェスティバル」で賞を獲りましたね。
今作も作品を発表した時点でアジア各国で売れました。フォーマット販売ではなく、そのまま放送するというので驚きましたね。ニューヨークフェスティバルでは前作の第8話が評価されたんですが、理由を聞いたら、結婚式の神がいる前でウエディングドレスを着た花嫁(白石麻衣)がで拳銃を構えて新郎を殺そうとするのが画期的だったらしいんです。キリスト教徒の多いアメリカでは、それはとんでもなく「アンビリーバボー」な話らしいんですよ。
僕はただ、訳アリの美人花嫁がチャペルで拳銃をぶっ放そうとする話にして、それを白石麻衣さんに演じてもらえたら面白いなって考えただけだったんですが、「すごいアイデアだな」って言われて。なので、思慮深いプロデューサーのように「ありがとうございます」って返しておきました(笑)
――そのシーンのように、“月9”なのに衝撃的な描写があってびっくりしました。
こんなことを言うと怒られるんですけど、ずっと映画を制作していたので、映画は死ぬほど見ていたんですが、ドラマはあんまり見てなかったんですよ。前作第5話の少年の銃乱射とか、周りから「なんで“月9”でそんなことするの?」って言われても「“月9”ってそういうことしちゃダメな枠なんですか?」って(笑)。無知だったからこそ、大胆なことができたのかもしれませんね。
――前作では、主要メンバーの平田満さん演じる田村が“影の仕置き人”だったと中盤で明かされる構成も衝撃的でした。
あれは初めから決めていました。平田満さんには素晴らしい演技をしていただきましたね。田村の口癖が「すいません」なんですけど、あれは僕の後輩にすごく良いやつなんですが、なぜだか毎年のように異動させられている男がいて「すいません、すいません」っていつも言っているところからインスパイアされました。田村の「すいません」は過去の事件の贖罪からくるもので、平田さんには最初からそういう役だということをお伝えしていたんです。そうすると1話からちゃんと計算して演じてくださるんですね。
だから1話の編集の段階から、僕はもう分かって見ていたので「平田さんは考えて演じてらっしゃるんだなー」とすごく感じました。そういうことって作品全体の深みにもなるんですよね。視聴者の方もどこか影があるキャラクターだったので、何かを感じたと思います。そしてその通り、実は悲しいものを背負っていたということが分かると、一気にキャラクターの深みが増す。それは役者さんの力によるところがとても大きいと思っています。
■沢村一樹「こういう役を演じたかった」
――主演の沢村一樹さんは、これまでと違った役どころで魅力的でした。
前作で、沢村さんに「こういう役を演じたかった。いい役をありがとうございます」と言っていただけたんです。すごくクリエイティブな方で、どうやったらキャラクターが魅力的になるかをいつも考えてくれて、ダークサイドに落ちたとき、深い悲しみをたたえながら“死んだ魚の眼”になる沢村さんにはすごくゾクゾクしました。
沢村さんが演じる井沢のトラウマは前作で解決したはずだったんですが、これを生かさない手はないと思って、井沢の過去に起きた事件の真犯人は別にいるという物語を今回作りました。
――他のレギュラーメンバーも個性豊かですね。
横山(裕)君が演じる山内は、前作までは上戸(彩)さん演じる桜木との関係性があったんですが、今作で上戸さんは登場しないので、「今回は井沢への“BL”だと思ってください」と横山君にはお話ししました(笑)。もちろん恋愛ではないんですが、井沢のことを人間として愛しているし、心配で仕方ないし、僕が守ってあげなきゃいけないと思っている。そういう部分を強く出そうと思いました。その中で切なさが出るといいなと思っています。
本田(翼)さんが演じる小田切は、過去の事件で男性恐怖症になって、それゆえ男性に厳しいという特殊な設定なんですけど、今作は高杉真宙君が演じる捜査の中で知り合った男性に初めて心を開いていくというお話になっていきます。