以下は昨年10月から今年のクリスマスまでのAppleの株価の推移です。2018年12月31日から今年の12月25日の間に、なんと時価総額を6,000億ドル以上も上昇させています。1年間の上昇としては過去最高です。

  • 2018年10月からのApple株価の推移、1月3日に142ドルに下落、その後しばらく安定しなかったものの6月に上昇に転じ、クリスマスイブには280ドルを突破しました

でも、そんな劇的な上昇を呼び込むような製品や出来事が「あったかなぁ〜」というのが正直な反応ではないでしょうか。これは1つの大きな要因によるものではなく、以下のような様々な理由によるものです。

  • iPhoneの急速な下落に歯止め
  • 成長続ける「サービス」事業がAppleの2つめの柱に
  • AirPodsとApple Watchの好調な伸び
  • Apple製品プラットフォーム、エコシステムが強みを発揮
  • 貿易摩擦問題への巧みな対処

iPhoneは減少が続くものの、減速が緩やかになって安定してきています。変化が激しいIT市場では、過去にはPalmやBlackberryが瞬く間に市場を失いましたが、数年でiPhone市場がなくなる心配は薄れています。一方で、サービスは2019年も四半期決算の発表のたびに売上高の過去最高を更新する勢いで伸びています。7〜9月期の売上高は125億1,100万ドル (前年同期比18%増)。iPhoneに次ぐ規模の事業に成長しており、数年後には肩を並べる可能性もあります。ちなみに同四半期のMacの売上高は69億9,100万ドルでした。さらにApple WatchとAirPodsが好調な「ウェアラブル/Home/アクセサリ」の成長も目覚ましく、売上高は65億2,000万ドル (54%増)でした。iPad (売上高46億5,600万ドル)を抜き、Macに迫っています。

これらが意味するのは「iPhone依存からの脱却」です。一時は70%を超えていた売上高全体に占めるiPhone売上高の割合が4〜6月期には48%にまで縮小しました。

  • 「iPhone 11」、2017年頃のiPhone新モデルの販売台数と比較して今のiPhoneの成否を語る報道もありますが、iPhoneが成熟期にあることを考えると「緩やかな減速」が判断のラインとして適切と言えます

iPhoneの普及は飽和に近づき、2016年をピークに「iPhoneを初めて買うユーザー」が減少しています。また、ユーザーの買い換えサイクルも2.5〜3年へと長期化しています。しかし、iPhoneの利用者が減少しているわけではありません。iPhoneのアクティブ台数(実際に使用されている台数)は今年1月時点で9億台を超えており、それからも増加し続けています。また、Appleのデバイスのアクティブ台数は1月時点で14億台を突破、その後も順調に伸び続けています。

つまり、iPhoneの最新モデルを購入する人が減少しても、iPhoneユーザーは今でも増加し続け、加えてパソコンをMacにしたり、またはApple WatchやAirPodsなど他のApple製品を購入している人が多いことをAppleデバイス全体のアクティブ台数の伸びが示しています。複数のApple製品を使う人の増加は、Appleのプラットフォームに定着する人の増加を意味します。また、それはAppleの新しい柱になっているサービスが、より多くの人達に利用される可能性を示すものです。iPhoneが減速していても、Appleの"成長循環"が機能しているのが今のAppleの評価につながっているのです。