2019年12月14日/15日に東京・秋葉原で開催された、イヤホン&ヘッドホンやオーディオ機器の体験イベント「ポタフェス2019 冬」。IT/AVコラムニストの海上忍氏が、新たなBluetoothオーディオコーデック「aptX Adaptive」のデモを行っていたクアルコムブースや、コストパフォーマンスに優れたユニバーサルイヤホン、高音質ストリーミング配信向きの小型USB DACなど、会場で見かけた“気になるポータブルオーディオ製品”をピックアップして紹介します。

  • ポタフェス2019 冬

    「ポタフェス2019 冬」開場前の様子

クアルコムブースで低遅延な「aptX Adaptive」を体感

クアルコムが2018年に発表したビットレート変動型のBluetoothオーディオコーデック「aptX Adaptive」。2019年の秋冬からいよいよ対応製品が登場し始め、クアルコムブースではaptX Adaptive対応のヘッドホン・イヤホンが展示されていました。

  • クアルコム aptX Adaptive

    B&W製ヘッドホンなどaptX Adaptive対応製品が展示されていました

aptX Adaptiveの売りのひとつ「低遅延」を体験できるデモコーナーでは、日系企業のシーイヤーが開発した小型ワイヤレススピーカー「pavé2」のプロトタイプ機が使われていました。

pavé2と、aptX Adaptiveに対応したスマートフォン「SHARP AQUOS R3」を1台ずつ組み合わせたものが2セット用意され、片方はSBC、もう片方はaptX Adaptiveで接続。AQUOS R3ではキーボードアプリが動いており、SBCで接続した組み合わせではアプリ画面の鍵盤を叩くと明らかにモタつきや引っかかりがあるのに対し、aptX Adaptiveで接続した方では音が出るまでの間隔(遅延)はほとんど気になりませんでした。聞けば、キーを叩いてからの遅延は、SBC接続時が300ミリ秒前後、aptX Adaptiveは60ミリ前後とのこと。aptX Adaptiveの遅延の少なさが分かりやすいデモでした。

  • クアルコム aptX Adaptive

    aptX Adaptiveの低遅延を実証するデモには、シーイヤーが開発した小型ワイヤレススピーカー「pavé2」が使われていました

pavé2は、前段にBluetooth SoCの「QCC5125」、後段にフルデジタルアンプDDFAの最新チップ「CSRA6640」を採用し、対向配置した50mm径フルレンジユニット2基を15W×2chで駆動するという、小粒ながらハイパワーなワイヤレススピーカー。96k/24bit対応のUSB DAC機能も備えるという充実ぶりです。気になる発売時期と価格は「2020年の夏より前で2万円台」(シーイヤー社長・村山好孝氏)だそうです。

クアルコムのブースでは他にも、同社が提供するソフトウェア開発プラットフォーム「GAIA」の事例として、NAIN(ネイン)のワイヤレスイヤホンが展示されていました。

開発中の完全ワイヤレスイヤホン「Yv」は、各種センサーを内蔵することで頭部の動きに反応、「首を縦や横に振るなどのジェスチャーもアプリで識別できる」(NAIN社長・山本健太郎氏)のだそう。NAINはパイオニアとの資本業務提携を発表していますから、今後は車載インフォテイメントシステムのヒアラブルデバイスとして活用されるのかもしれません。

  • クアルコム aptX Adaptive

    NAINの完全ワイヤレスイヤホン「Yv」には、頭部の動きを検知するセンサーが組み込まれています

あのカスタムIEMメーカーからコスパ抜群イヤホン登場

カスタムIEM(イヤホン)メーカーが、耳型採取が不要なユニバーサルモデルを出す例は少なくありませんが、個人的には課題が多いような気がします。量産できていても安くはないし、デザインもカスタムモデルそのままの無骨さで「もう少しこなれた製品にできないの?」と感じています。

ポタフェス会場で目に留まった、新進カスタムイヤホンメーカー・NF Audioの新製品「NA1」は、シェルの形状はカスタムイヤホン風ですが、フェイスプレートがカッコいい。ブースの説明員に聞くと、航空機用アルミニウムを5軸CNCで加工したものだそうで、ブラスト処理にも目の細かい材料を使用したのか、細やかな光沢が洗練された佇まいを感じさせます。

  • NF Audio NA1

    新進カスタムIEMメーカーNF Audioの新製品「NA1」

音もかなり高水準。2つのネオジウムマグネットで1テスラ以上の磁束を生み出す、デュアル磁気回路採用のダイナミックドライバーを搭載し、音はモニター風で歪みを感じさせず、キレよく素直に伸びます。音像がピタリと定まるところもGOOD。医療用UV樹脂を採用したというシェルは、耳によく馴染むだけでなく、ノイズ低減効果があるのだそう。これで実売価格が税込19,800円前後なので、かなりのハイコスパ製品といえそうです。今回試聴できなかった人は、次の機会にぜひ聴いてみてください。

  • NF Audio NA1

    音も質感も上々、かなりのハイコスパ製品です