iPhoneでオフライン再生機能を利用してみた
iPhoneやiPod touchなどのモバイル端末で視聴する場合は、ストリーミング時の画質を設定アプリ内の「TV」のメニューに入り、「iTunesビデオ」から選択できます。セルラーデータ通信によるストリーミング再生を許可するかどうかも、ここで決められます。
Apple TV+で公開されている各作品は、iPhoneにiPad、Macなどの端末にダウンロードすればオフラインで再生できます。便利で実用的ですが、ダウンロードの画質を選ぶ機能が実装されていないのは気になりました。「ザ・モーニングショー」の第1話(約1時間4分)のエピソードをiPhone 11 Proにダウンロードしてみたところ、ファイルサイズが約4.4GBにもなりました。飛行機で長時間旅をする際など、ファイルサイズを小さめにしてなるべく多くのエピソードをiPhoneに入れて持ち出したい場合もあります。今後、ダウンロード時の画質選択はぜひ対応してほしいところです。
また、ある作品の1つのエピソードを見終わったあとに、ダウンロード済みコンテンツライブラリから続きのエピソードへとスムーズに移動してダウンロードするための動線も必要だと思いました。
字幕や音声吹き替えのサービスも充実しています。耳の不自由な人のために、セリフ以外の関連情報も文字化して表示する「SDH」や、目に障がいを持つ人のためのナレーション付きバリアフリー音声ガイド「AD」も用意されています。ただ、iPhoneで「ザ・モーニングショー」を視聴した場合にだけ、日本語字幕にSDH版しか用意されていなかったことに気がつきました。「自動(推奨)」を選択してもSDH版のサブタイトルが表示されます。この点は、macOSやiPadOS、tvOSのプラットフォームで楽しむ場合と同様に通常版の日本語字幕が選べるようにしても良いのではないでしょうか。
カタログ作品のさらなる充実に期待
Apple TV+の動画配信サービスはまだ始まったばかりですが、音質・画質については他の動画配信サービスと比べてもトップクラスのクオリティだと思います。
あとは、ビッグタイトルを着実にカタログに加えて充実させることが次のステップアップに向けた課題だと思います。Apple TVのプラットフォームに名を連ねる有料レンタル・購入ベースの作品に比べて、Apple TV+のオリジナル作品がやや見劣りする感じはあります。これから骨太な大作が徐々に“見放題”のカタログにも加わっていくのでしょうか。楽しみです。
日本でサービスが普及するためには、日本人になじみ深い国内の大物監督や俳優が関わる作品をそろえ、ていねいにローカライゼーションを進めていくことも肝要かと思います。テレビ番組の見逃しアーカイブの提供などが有効ではないでしょうか。Apple TV+が日本発のアニメ作品を世界に発信する場所にもなってほしいとも思いました。
世界に広く普及するiPhoneやiPad、Macとの親和性がとても高い動画配信サービスが、アップルらしい成長を遂げていくことを期待しましょう。
著者プロフィール
山本敦
ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。ハイレゾやAI・IoTに関わるスマートオーディオ、4KやVODまで幅広いカテゴリーに精通する。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。