iDeCoをしているとふるさと納税の限度額が下がる?
ところで、iDeCoに加入している人がふるさと納税をする場合、iDeCoに加入していない人よりも上限額が少なくなるというのを聞いたことがある人もいると思います。
上述総務省のサイトにも記載されていますが、上で紹介したふるさと納税での2,000円を除いた全額控除の上限額の目安額は、住宅ローン控除や医療費控除等、他の控除を受けていない給与所得者のケース。
先に見たようにiDeCoをすると小規模企業共済等掛金控除が適用されて課税所得が小さくなりますから、所得税や住民税が減り、結果としてふるさと納税の上限額も減るということです。
実はふるさと納税の上限額は、上の計算式のうち「住民税からの控除(特例分)」の金額が住民税所得割額の20%になるように決められます。自分で計算するのは難しいと思う人も多いと思いますが、最近ではiDeCoの小規模企業共済等掛金控除をはじめ、他の所得控除をしている場合の上限額をシミュレーションできるポータルサイトも多く出ています。
実際に上と同条件でシミュレーションしてみると、4万2,000円だった上限額の目安はiDeCoで毎月1万2,000円(年間14万4,000円)拠出すると3万8,000円に減りました。4,000円ほど上限額が下がることになります。
下にiDeCoをしている場合としていない場合で上限目安額の違いを表にまとめてみましたので参考にしてください(下図参照)。ただし、あくまで個人の所得の状況や家族構成によって異なりますので、気になる人はふるさと納税のポータルサイトなどでシミュレーションしてください。
iDeCoへの加入、ふるさと納税で損になる?
iDeCoをすることでふるさと納税の上限額が下がるのは先に見た通りですが、損得で考えるべきではないと筆者は考えます。
理由は大きく2つ。1つ目はそもそものふるさと納税の仕組みです。
実質2,000円の負担で特産品を手に入れられるのがふるさと納税が人気となっている理由の1つですが、2019年度6月からふるさと納税の制度が改正されて返礼品は寄付額の3割以下であることというルールになりました。
仮に年収400万円・独身の人が上限額ギリギリで寄附しようとすると、4万2,000円を寄附する場合は返礼品の価値は1万2,600円以内。iDeCoをしている人なら3万8,000円を寄附すれば返礼品価値は1万1,400円以内です。返礼品価値の差としては1,200円とわずかです。
しかし現実的には返礼品価値は個別に3割の価値が計算されるわけではなく、1万円の寄附なら返礼品は○○、15,000円の寄附なら△△というようにあらかじめ設定されている場合がほとんどです。
お得を狙ってふるさと納税をするのなら、上限額全てをふるさと納税するのは難しい場合もあります。
2つ目は、iDeCoのお得さと必要性です。老後資金2,000万円問題が大きな話題となったこともありましたが、人生100年時代と言われるようになった昨今では老後資金の準備は年齢に関係なくきちんとしておくべきです。どうせ準備しないといけないものなら、じっくり時間をかけて複利運用し、優遇税制を受けて効率的に取り組んでいきたいものです。
iDeCoの税制上の優遇措置は掛金拠出時だけでなく、運用、受取の3つの時点で受けられます。今回ふるさと納税と控除の仕組みを比べるために拠出時の所得控除を詳しく見ましたが、たとえば運用益に本来かかる20.315%の税金が非課税になるメリットも大きなお得です。
iDeCoとふるさと納税を併用することで、ふるさと納税の上限額が少し下がるとしても、トータルで考えるとiDeCoをすることによるメリットは税金的にも老後生活の面からも大きな価値があると考えます。ふるさと納税でお得を得たいという人も、安心してiDeCoに加入してくださいね。
著者プロフィール: 續恵美子
女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター
ファイナンシャルプランナー(CFP)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢見て退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに--。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動している。エフピーウーマンでは、女性のための無料マネーセミナー「お金のmanaVIVA(学び場)」を無料開講中!