フルサイズミラーレスや一眼レフで撮影した写真を見慣れた筆者ですが、GFX 50Rで撮影した写真は階調の再現性が豊かで、フルサイズ機よりも繊細で立体感のある描写が得られることが分かります。
フィルム時代をご存知の方ならお分かりいただけると思いますが、それは35mmフィルムと中判フィルムの写りの違いと似ています。ハイライト部はギリギリまで粘るため白トビはよく抑えられえていますし、なめらかな階調再現性でトーンジャンプのようなものも見られません。黒ツブレにしても同様で、センサーサイズの小さなカメラならば階調がなくなっているような部分もしっかり保持していると感じます。
ノイズレベルも良好で、高感度域でもノイズは最小限に抑えられています。解像感の低下や色のねじれといったものもほとんど気になりません。偽色の発生もなく、優れた高感度特性だと感じます。GFX 50Rは5000万画素と高画素なカメラですが、それでも余裕ある画素ピッチを誇るビッグフォーマットならではの階調再現性や高感度特性といってよいでしょう。
作例の撮影では、ISO感度をオートに設定していたのですが、暗い場所で高感度になっても写りのことを気にせず撮影に集中できました。手持ち撮影の場合、少しでもシャッター速度がやばそうだな…と思ったら、ためらわずにISO感度を上げることをおすすめします。
GFX 50Rが生成する写真の魅力は、富士フイルムのAPS-Cミラーレス「Xシリーズ」と同様にフィルムライクなこと。仕上がり設定「フィルムシミュレーション」には、標準的な「プロビア」のほか、ビビッドなトーンの「ベルビア」、柔らかいトーンの「アスティア」、モノクロの「アクロス」など、同社のフィルム銘を冠した仕上がりが用意され、同名フィルムに準じた絵づくりの写真が得られます。フィルムを選ぶ感覚でGFX 50Rの仕上がり設定を選ぶ、そんな楽しみも味わえます。
フィルムの粒状感を表現できる「グレインエフェクト」も搭載しています。しかも、効果の強さが選べるのもうれしい部分。このあたりも、フィルムメーカーのカメラらしいところといえるでしょう。もちろん、粒状感のない仕上がりを得ることもできます。
AFの精度が高いのもこのカメラの特徴。イメージセンサーとは異なる位置にAFセンサーがある一眼レフと異なり、ミラーレスはイメージセンサーを使ってAFを行うため、より精度の高いピントが得られます。「ピントの精度を考えればミラーレス以外の選択肢はなかった」とGFXの開発担当者が話したことが、今でも強く耳に残っています。
GFX 50Rの登場で、ぐっと身近になった中判デジタルカメラ。その写りのスゴさを味わえば、たとえカメラやレンズが大きくても、またレンズのバリエーションがちょっと少なくても十分に納得できます。
富士フイルムのレンズ交換式カメラは、ほかにAPS-CサイズのXシリーズがありますが、写真愛好家に一番人気のあるフルサイズセンサー搭載モデルは存在しません。しかしながら、GFX 50Rの写りを見れば、フルサイズを飛び越して一気に中判を採用したことが理解できると思います。激しい動きのスポーツなどの撮影は厳しいですが、スナップや風景、ポートレートなどであれば、フルサイズ以上に楽しめるカメラに仕上がっていると感じました。